第11話 旅立ちの時
「え?」
いきなりの魔王の娘宣言に里長始め周りの魔族が混乱していた。
無理もない。今までフードで顔を隠し声すらもまともに聴いた事のない住人がいきなり魔王の娘だと言われても俄に信じられないのだろう。
そんな中、里長が震えた声でサーヤに尋ねる。
「本当に貴方が魔王様のご皇女なんですか?」
「そうだ!本当に魔王様のご皇女なら魔力が絶大なはずなのに魔力を全く感じないぞ!」
里長の問いかけに呼応して周りの魔族がそれぞれ騒ぎ出す。
その騒ぎの中でサーヤが語り始める。
「ええ、本当です。その証拠があります。フローズンドール、包み隠さず自己紹介してくださいませ。」
「はい。私はサーヤ様に仕える機械人形、フローズンドールです。魔王様の手によって作られた後遺跡で長年放置されていた私は、魔王様の娘であるサーヤ様の魔力に反応し、起動しました。」
「この通りですわ。」
フローズンドールはサーヤの隣に立って自己紹介と、起動した経緯を説明をする。
「しかし魔王様のご皇女であれば絶大な魔力があるはずですが?どうして微小な魔力しか感じられないのですか?」
「それは… 私にもわかりません。きっと長年封印されていた影響だと思うのですけれど…」
「とにかく、機械人形がこうして動いているということは本当に魔王様のご皇女なのでしょう。」
サーヤの説明や魔王の作った機械人形を目の前にして、里の皆が納得した顔になる。
そして急にサーヤの前に出て膝をつき頭を下げ里長が代表としてサーヤに話す。
「復活おめでとうございますサーヤ様。我々魔族一同サーヤ様に従います。」
「まぁ!そんな頭を下げなくってもよろしいでしすわ!でもそう言っていただけて良かったですわ。私を信頼してくれる皆様が旧魔族派の手にかかる事が無いよう最善を尽くしますわ。」
今まで魔王の娘として扱われたことは無かったので、人に敬われるのは慣れていない。こんな事は初めてだが、信頼してもらえたようで安心した。
「さて、これから旧魔族派について調べる必要がありますわね。説得をするにしても居場所すらわかりませんもの。」
旧魔族派が普段どこで生活しているのか、どんな方法で人を貶めようとしているのか知る必要がある。それには旅をする必要がある。ユウたちがもしも協力してくれるのなら、一番良いと思うのだが、巻き込みたくない気持ちもある。
「ええっと…ユウとレファナはこれからどうしますの?例えば、そうですわね…旅の目的とか。」
サーヤの問い掛けにユウは少し考え始める。今までこの世界を旅をして来てこんな大事にあった事がないからだ。
しかし自分は人々の為に旅をし力を使っている。考えるまでも無かった。
レファナもサーヤの問い掛けに考えを巡らせていた。マデゼア街で起こった事件の事を思い出していたのだ。
あんな酷い事が又起こるのなら何とかして止めたいと思う。
「俺は苦しんでる人々を助ける為に旅をしている。この世界が又争いになるなら力を貸そうと思う。」
「私はユウと共に人々を救いたいと思っています。私の力が必要なら喜んでお力を貸そうと思います。」
ユウとレファナはそれぞれの思いを言葉にする。旧魔族派がこの世界に争いの火種をばら撒くのなら何とか阻止したいと思う気持ちは一緒だった。
「ふふ、お二人ならそう言ってくれる気がしていましたわ。では今日から私たちは旅の仲間ですわね!ユウ様、レファナ、よろしくお願いいたしますわ。」
「ユウ、レファナ、よろしくお願いします。」
「ああ。サーヤにフローズンドール。これからよろしく頼む。」
「こちらこそよろしくお願いしますね。」
ユウたちは改めて互いに挨拶をする。これからの長い旅に向けて。
「さて里長。俺達はそろそろ旅を再開するよ。ここの場所は絶対に秘密にすると約束する。」
「そうですか。秘密にしてくれるのは有難い。こちらも何か情報が有りましたら連絡したいと思いますが何か方法がありますか?」
「それだったら人の街には斡旋所といわれる場所がありますからそこで俺宛に言伝をお願いする事が出来ます。」
「なるほど、そんな場所があるんですね。分かりました。何かあればそれで連絡しましょう。あとはサーヤ様の事、よろしくお願いします。」
「分かりました。サーヤの事はお任せ下さい。」
そしてユウ達は魔族の里を後にする。里の皆はユウ達の姿が見えなくなるまで手を振り見送っていた。
魔族の里を出たユウ達は大森林を出る為に歩いていた。そこでユウはふとフローズンドールに話しかける。
「そういえばフローズンドールは何か護身用に何かあるのか?確かに戦闘人形だが戦闘経験はないんだろう?」
「はい。戦闘経験はありません。護身用の武具は所持しておりません。」
「確かにフローズンドールも武器の一つや二つ持っておいた方がいいですわよね!遺跡と違って外では危険がいっぱいですもの!」
「そうか。ならフローズンドールにはこれを渡しておく。」
そう言うとユウはBOXから複数の投擲用のダガーを取り出しフローズンドールに手渡す。
「これは何かあったらの為買った物だが余り使わないから遠慮なく使ってくれ。」
「ありがとうございます。頂いた武器はサーヤ様を御守りするために使います。」
「ユウ様にプレゼントを貰えるなんて羨ましいですわ〜!♡」
フローズンドールはユウに深々とお辞儀をし、貰ったナイフをしまった。
そんな事がありながら大森林の入り口が見えてきた。
「ユウ。入り口が見えて来ましたよ。流石にここでは色々ありましたね。」
「そうだなぁ。人数も増えたし賑やかな旅になりそうだ。」
ユウとレファナの会話の横でサーヤとフローズンドールも会話していた。
「もう!フローズンドールったら!そのナイフ絶ッ対に無くしたり壊したりしたらいけませんからね!ユウ様から頂いた大事な大事な家宝なのですから!」
「はい。サーヤ様。はい。」
ぷんぷんと騒ぎ立てるサーヤにひたすらフローズンドールが相槌を打っている。
そんなサーヤはもうフードを被っていなかった。魔王の娘として胸を張って生きることを選んだのだ。
そしてユウ達は大森林を後にする。
またこの世界に争いが起こる事を危惧しながら。
その頃、魔族の隠れ里の一室ではーー。
「やっと見つけた。 待ってろよサーヤ様!」




