表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

第10話 魔族の隠れ里

遺跡から歩いて数時間は経っただろうか。サーヤの案内でユウ達は魔族の里に辿り着いていた。


「着きましたわ。ここが魔族の里ですの!」


サーヤの言葉にユウとレファナは驚き、顔を見合わせる。見ると目の前には石の門があるだけなのだ。


「本当にあるのか?」

「何もないように見えますが?」

「まぁまぁ、中に入ればわかりますわ!」

「とりあえず門から入ってみよう。」


ユウたちがそう言って門の中に入って行くと急に目の前に村が現れた。


「ユウ。これは一体?」

「驚いたな。不可視の結界か!」

「不可視の結界って?」


レファナがユウに問いかける。今目の前で何が起こってるのやらさっぱりわからない。


「魔族が使っていた結界だ。結界の外からは何も無い空間に見せる魔法で自分達に敵意があるならば中に入れない。昔の争いの時に人間側はこの結界に苦しめられたらしい。」

「ユウの言う通りです。この一帯から魔力を感じます。」


フローズンドールもユウに同調するようにしてそう言った。結界とやらはよくわからないが、魔力を感じるのは確かだった。

なるほど、この結界があるならこの大森林に魔族が逃げ込んだその後の目撃情報が無かったのも頷ける話しだ。ユウはそう思った。


「では私達がすんなり入れたのは?」

「ああ。別に俺達はここの魔族に敵意は無いからな。それに里の住人のサーヤがいるしな。」

「結界がこの里に張られていたんですの?全く気付きませんでしたわ!ユウ様は博識ですわね!さすが(わたくし)のユウ様ですわ〜♡」


そんな事を話していると魔族の数人が近づいて来た。彼等はユウ達を見て驚いていた。

それはそうだろう。何せ結界内部に人間がいるのだから。


「驚かせてすまない。俺はユウ・クレストだ。」

「レファナ・レンスです。」

「私はフローズンドール。マスターはサーヤさ、」

「ええ!?サーヤって誰でしょうか~!?(わたくし)には誰の事だかわかりませんわ~!!」


サーヤの名前を言いかけた途端焦ったサーヤがフローズンドールの口を塞ぐ。そういえばユウには魔王の娘だということを秘密にするよう言っていたが、この事をフローズンドールにはちゃんと教えてなかった。


「フローズンドール!(わたくし)の名前はここでは喋ってはいけませんわ!」

「すみません、マスター。」


そんな事を喋っていると数人の魔族がひそひそと話し始める。


「おい。あのフード少女、普通に喋ってるぜ」

「普段は無口で声すら耳にしたことなかったのに!」


サーヤはその声により深くフードを被る。うっかり言葉を発してしまった。

何やら周りが騒がしくなってきたので、本来の目的を果たす為に近くの魔族にユウが話しかける。


「すまないが、この里の長に話をしたいんだが合わせてくれないか?」

「ん?それは良いが何の話なんだ?場合によっては会わせられないが。」


流石に急に里長に会いたいと言われ警戒するのは当たり前か。説得するように言葉を続ける。


「魔族にとって重要な話だと思う。せっかくだからこの里にいる魔族全員に聞いて欲しい。」

「そんなに重要な話なんだな?」

「ああ。」


結界内部に入れたとはいえ魔族ではない外部の人間だ。怪しむ気持ちはある。

ユウの言葉に少し考えて、魔族が答える。


「今呼んでくる。あと、我々里の全員も聞いていいんだな?」

「ああ。隠しても意味ないからな。」

「わかった。少し待っててくれ。」


そう言うと里長を呼びに走って行った。他の魔族はユウの話を聞く為に集まってくる。

しばらくして里長らしき魔族が近づいて来た。


「ユウと言ったかな。私がこの里の長だが、なんでも魔族にとって重要な話だとか。」


流石に里長だけある。凛とした顔立ちだし、何かあったら排除すると思っている目だ。貫禄がある。


「ああ。まず急にこの里に来た事はすまない。だけど事態は一刻を要する事なんだ。」

「どういう事かな?」

「説明させてもらう。」


そう言うとユウは里長と集まっていた魔族にこれまであった事を話始める。

旧魔族一派が人間に対して暗躍している事。

魔王の子供を探している事。

そしてそのご子息を中心にして人間を滅ぼす為に争いを仕掛ける事。

ユウが語り終えると里の面々はショックを受けたように下を向いていた。そしてそれはサーヤも一緒だった。沈黙の時間が流れる。

そんな中、里長が口を開く。


「そんな事が起こっていたのですか。我々はあの争いの後からここで暮らしていました。我々の同胞がそんな事を画策してるとは。」

「ではあなた方はこの計画には関わってないと?」

「もちろんです。我々はもう争い事は御免なんです。争いでは何も解決しませんから。」


里長は先の争いを見た事があるのだろう。そしてその凄惨さを体験し仲間と共にこの大森林に来て平和に暮らしていた。

おそらくだが旧魔族派の一派とは連絡や交流もしなかったはずだ。


「里長。もう一つ魔王の子供についてだが。」

「確かに魔王様の子供がいる事は聞いておりますが、魔王様が倒された時に封印されたと。もし旧魔族派が探しているなら此方も早急に探して保護しなければ。例え魔王様のご子息でも子供を争いに巻き込む訳にはいきませんからな。」


そう言うと里長の目に光が灯った様に見えた。周りを見るとさっきまで下を向いていた魔族も覚悟をした様に頷いていた。

そして里長に詰め寄り早く探しに行こうとか我々の手で解決しようとか騒ぎ始めた。

それを見ていたレファナがユウに声を掛ける。


「何か凄い事になりましたね。でも皆さん仲間思いで素敵ですね。」

「凄いな。まさかこんな事になるなんてな。」


ユウとレファナの会話なんて聞こえないくらい周りが騒がしく殺気立ってきた。

そんな中サーヤが里長の前に出て、深く被っていたフードをバサッと勢いよく脱ぎ捨てる。


「長様。ずっと隠していてごめんなさい、実は(わたくし)は魔王の娘、サーヤ・ステラリアです。魔王の娘として人間と魔族が再び争おうとしている現状は許せません。(わたくし)が旧魔族派をこれ以上争わぬよう説得、やむを得なければ撲滅いたします事を誓いますわ。」


魔王の封印が解かれることは今もないが、無害であるその娘には封印の力が弱かったのか誰の手にかかることもなくここ数ヶ月で自然と封印が解けてしまった。それから魔王の娘という立場は人に打ち明けるとトラブルになるかもしれないと考え、魔族の隠れ里でさえも顔も身分も隠して生きていた。

だから、里長がサーヤのフードを被っていない姿を見るのも、サーヤ・ステラリアという名前を聞くのも今日が初めてだった。


ーーこれは旧魔族派に対する、決意表明だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
続きも楽しみにしています!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ