第1話 旅する剣士様
その昔、この世界『アース』その昔神と魔王が存在し、争っていた。
長い年月の末に神は魔王を倒せないながらも永遠に封印することに成功するが、神もまた力を使いすぎ消滅してしまう。
それから1000年近い時間が流れ、神が作り出した人間が自分の欲にまみれて魔王の子孫である魔族を滅ぼすために戦いを挑んでしまう。
この争いで魔族は減少し、増長した人間は人間族こそ優秀だと勘違いしてしまう。
それを見た世界の調停者である龍族は、人間に対して警告をし争いに参加した人間族を皆殺にしてしまう。
これを見た人間族は争いをやめ、世界の発展に力を注ぐ事になる。その数年後からイル大陸での物語は始まることになる。
「いらっしゃいませー」
店に入るといつも通り賑わっていた。
ここは依頼斡旋所兼酒場である。どこの街にもあり様々な依頼を斡旋する場で世界を旅する人々に重宝している。
「依頼終了したんだが換金お願いしたい」
「わかりました。今マスターを呼んできますね」
そう言うと酒場の店主は奥に引っ込んでいった。
「ふぅ。相変わらずここは賑わってるなぁ。」
店の酒場エリアでは昼から酒を飲み自分の愚痴やら些細な噂話やら話題が尽きない。その中で自分と同じように旅をする冒険者はたくさんいる。
「よぅ。今回は早かったじゃないかユウ!」
「偶然にも近くだったからな。」
店の奥から出て来たのはこの店のマスターでこのエリオス街ではちょっと有名な人らしい。昔のことは話したがらないが今でも街の人からは頼りにされている。
「まぁそれもそうか。報酬は3000エルだ。」
「ありがとう。」
「なぁユウよ。流れの旅人なんか辞めてこの街に住まないか?最近は国中が怪しい雰囲気になってきてるしお前さんがいればこの街も安心なんだがなぁ」
言いたいことはわかる。旅には危険もつきものだし、ここにいれば平和にのんびりと生きられる、それに自分がいれば確かに街の平和は保証されることだろう。
だが俺には俺の信念がある。俺の力は世界中の人々を救う為にあるのだ。
「すまないが俺は世界中を旅する事にしているんだよ。」
「そうかぁ。まぁ人の事情はそれぞれだしなぁ。でも用心しろよユウ。最近魔族が何か企んでる噂もあるし。」
「ああ。それじゃまたな!」
雑談もそこそこにして、互いに手を振りあって別れを告げては店を出た。
「さてこれからどっちに行こうかなぁ」
東西南北、どこへ行くべきか。エリオス街には南からやってきたので、東か西、あるいは北か。
「ん?」
そんなことを考えていればタッタッと走る足音が背後から聞こえてくる。振り返ってみればローブを深く被った少女がぶつかって来た。
「きゃっ!」
「おっと!」
咄嗟に少女を抱きとめる。速度があったので少し痛いが怪我されるよりマシだ。
「大丈夫か?」
少し見たが怪我もして無さそうで安心した。
ローブのせいで顔は見えないが、走っていたことだしどこか焦っているように見えた。
「だ、大丈夫ですわ…ああっ、いけない!私これで失礼いたしますわ!!」
彼女は慌てて俺から離れると、まるで急いでいるかのように颯爽と街を駆けていった。一体なんだったのだろうか。
「(すごくカッコいい人でしたわ…目の保養になりますわね…是非またお会いしたいですわ…!)」
さっきのたった一瞬の出来事で、そんな事を思われているとも露知らず。
「行っちゃったなぁ。まぁあれだけ元気なら大丈夫か」
俺は少女が去った方を見て呟く。そして先程のマスターとの雑談を思い出した。
魔族が何かを企んでいる。
「まさか……魔族が攻めて来るのか?」
胸騒ぎがする。不安が頭を過ぎるが、まさかと思いながらエリオス街を後にすることにした。
次の街ではどんな事が起こるかわくわくしながら。




