表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界は、小さく静かでちょうどいい~小さな体ではじまる異世界転移〜  作者: ウラン
第3章《風読みの街で》

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/104

第97話 最終日

朝の空気は、少しだけ軽かった。


5日間続いた合同会議の最終日。


風読みの中央会議室には、全てのの街の代表が揃っている。

紙の束。

布の見本。

乾燥野菜の試作品。

数字が書き込まれた表。


それぞれの街の匂いが、机の上に並んでいた。

頭領が立ち上がる。


「夏の会議も最終日です」

「今日は決定事項の確認と、祭に向けた各街の提出物の締切確認。それから、連携体制の整理までやります」


少し笑いが起きる。

「まだやるのか」

司会のミズキが、

「今日で終わりなんですから、サクサク行きますよ」


「最初は風受けからお願いします」

ナギが立ち上がる

「今季は、生産ラインとしては機織り水車小屋の試験導入を含めて調整済みです」

「来年度までには、、各街に小物ショップ、それと布や裁縫の材料を販売する店も、随時出店を予定しています」

「それから、来年度に向けての制服注文は早めにお願いします」


実紗が資料を出す。

「ファッションショーは初日夕刻に決まりました。即日販売体制も整えますので楽しみにしていてください」

舞台、機材などの細かな報告を数字を交えて流れるように発表していく。


「実紗さんかっこいいなぁ」


流花が呟くと

ナギも

「あいつってホントに昔からこういうの得意なんだよな、俺はまだ緊張してるのに」

呟くように言った


実紗の発表が終わるとナギが立ち上がる

「風受けは、新工場や高性能の機材の導入など

新たな挑戦が沢山あります。また、流花さんという新しい戦力も参加してくれたので、風街に新しい風を吹かせてくれると期待もしています」

「これからも衣食住の衣の部分を支えていきますので、皆さんの御協力よろしくお願いします」

そう言って、ナギが締めた。


「ナギも凄いね、かっこいいよ」

そう言うとナギは

思いっきり照れた笑いを見せた。


「次は風巡りお願いします」


ゲンが低い声で言う。

「祭用食材の確保は問題ない。今年はちょっと面白いことも計画してるから楽しみにしといてくれ」

「それから、要望のあった牛肉だが、次回は100キロ発注済みだ。現在在庫約50キロ程、各街に10キロずつは卸そうと思ってるので、まだまだ価格は高いが、楽しんでくれ」


「冷凍トロッコは保冷剤の取り替えと、積み荷が重くなってきてるので車輪などの調整も風守りにお願いしたい」

「滑車は風守りに修理依頼を出している」


「研究所からですが、今まで出している乾燥野菜は味噌汁用ミックスを新商品として出す予定です。他にもミックススパイスなども研究中です」

総務のなるみが補足する。

「屋台は昨年よりいくつか増設を予定しています。原価率は前年同等で抑えられる見込みです。屋台の骨組みなど細かい調整は祭前にまた、お願いします」

数字が並ぶ。


だが今回は、それだけではない。

ゲンがちらりと流花を見る。 


「商品開発、レシピ監修は流花さんに協力を仰ぐ事にした」

一瞬、視線が集まる。


流花は少しだけ背筋を伸ばす。

「できることは、やります」

それだけ言う。


派手ではない。

でも、静かに位置が決まった。


次は風守りだ。

陽介さんが腕を組んだまま立ち上がる。

「屋台の骨組みは二日で組む。水車小屋の補強は祭後着手でいいな」

「風巡りの冷凍室滑車は優先修理。命に関わるからな」

淡々としている。


陽子が立ち上がる

「若手の職人で家具ショップもオープンしています。外に出す家具も含めて、展示品も増やしていきますし、オーダーも可能ですので、是非お立ち寄りください」


「若手も順調に育ってる。只、まだまだ職人が足らん。育成もかねて、学校に専門教師として若手を送るつもりだ。移住も、通いでも、歓迎なので職人見習い募集だ」

そう言って陽介さんがみんなを見回してニカッと笑う。 


最後、風綴りお願いします。

まずは学校代表が立つ。

「運動会は秋。衣装協力、飲食協力、各街に正式依頼を出します。あとは、専門教師も、依頼を出したいと思ってますので協力お願いしますね」

図書館長のケイゴさんが立ち上がる

「新しい図書館は順調に運営できています。まだまだ、本棚のスペースは空いてますので、新しい本を書くもよし、古い本があれば寄付も受け付けてますよ」

「貸し出しは児童書のみ今季から始めます。大人向けの貸し出しは返却システムが確立してから始めます。次回までにはお返事できるようがんばります」

最後に綺羅が立ち上がった。

「お祭りの準備は各街と連携して進めていきます。祭まであと2ヶ月、夏の終わりにみんなで大きな花火を一緒に見ましょう」

未来を育てる街らしい発表だった。


最後になりますが風読み中央管理から何かありますか?


ツカサが立ち上がった。

「今回の会議の決定事項と次回の注文票は

会議終わりに私のところにお願いします。

最終報告は夕刻までです」


ひと通りの報告が終わる。


静かだ。

5日前とは違う空気。

意見はぶつかった。

世代も価値観も衝突した。

けれど今は、同じ方向を向いている。


創太が言う。

「これで終わりか?」

ナギが笑う。

「終わりじゃない。始まりです」

実紗が小さく頷く。

ゲンが言う。

「祭が成功すれば、街はひとつ強くなる」

綺羅が低く言う。

「失敗しても、次がある」

流花は、机の上を見つめる。


この街は、全部つながっている。


服が売れれば食が回る。

食が安定すれば学校が回る。

守る技術があるから、作れる。

――風街は、生きている。


頭領が最後に言う。

「皆さん5日間、お疲れさまでした。今回は色々実りのある話し合いができました」


ちらりと流花を見て微笑んでくれる

「流花さんの事ですが、各街からの要請があれば、アドバイザーとして受けてくれるということですので、事前に連絡をいれてあげてください。風待ちに新しい風をいれてくださいね」


流花は立ち上がって

「皆さん、私がわかること、できることなら協力させて下さい。どうぞよろしくお願いします」

拍手が起こった


流花は

受け入れてもらえたと、実感できた。


ざわりと椅子が引かれる音。

次々とみんなが立ち上がっていく。

でも、すぐには誰も出ていかない。

少しだけ、名残惜しい。


5日間、本気でぶつかり合ったからだ。


会議室を出ると、外は晴れていた。

風が抜ける。


流花は深く息を吸う。

「終わったね」

ナギが横に立つ。


「疲れた?」

「ううん」

少し笑う。

「楽しかった」


ナギは一瞬だけ、柔らかい顔をする。

「そうか」

その視線は、仕事のそれだけではない。


流花は気づかない。

風が少し強くなる。

街のどこかで、水車が回っている音がする。

まだ、なにも始まっていない。


けれど――

何かが、確実に動き出していた。


流花は、ここにいる理由を、ちゃんと選びたい。そう決意して会議室を後にした。

そう決意をするいい流れで最終日まで来ましたね。

今回の会議は、それぞれの街が「自分の役割」を改めて確認する時間でもありました。

風受けは作ることを。

風巡りは支えることを。

風守りは守ることを。

風綴りは育てることを。

そして風読みは、つなぐことを。

流花もまた、自分がどこに立つのかを少しだけ選びました。

次は祭へ向けて、街が動き出します。

その前に、少しだけ静かな時間を。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ