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この世界は、小さく静かでちょうどいい~小さな体ではじまる異世界転移〜  作者: ウラン
第3章《風読みの街で》

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第95話 風巡り会議(前編)

今日は風巡りの会議。


流花は、この街の事が一番気になっていたので、ちょっとわくわくする気持ちが押さえきれない。

「すごく、楽しみな顔してる」

ナギに言われて、流花は両手で頬を押さえる

「わかっちゃった?」

ナギは複雑な笑いを返した。



乾燥した野菜、発酵食品、調味料。

机の上には瓶と袋と試作品。

「始めます」

倉庫番のゲンが低く言う。


「午前中の議題はいくつかあるが、資料を見ながら進めていこう」


ナギは資料を配りながら、流花を横目で見る。

今日は――

流花の街ではない。


「まず、今回、風巡りに入ってくる原材料の量だ。研究所、説明頼む」


若手の研究員が立ち上がる。

「研究所、二課の誠治(セイジ)です」

「今回入荷した製品一覧は資料にあると思います、塩、砂糖、香辛料、乾燥豆、干し魚はいつもの通りですが今回、冷凍の肉類がかなり多く入りました。小麦も生産量が追い付いてないので、今回多めに入荷しています」


「塩はいつもの通り150キロ」

「砂糖は今回、20キロ袋を10個全部で200キロ入荷してます。祭の需要がありますので」

「在庫は、どのくらいあるのか?」

「1期分の在庫は常に倉庫にあります」


流花は大きな数字にびっくりする。

3000人の食料を賄うということは結構大半なこと何だなと感心する。


「そんなに大きな倉庫が、風巡りにはあるんですね」

ナギが答えてくれる

「風巡りは、うちで言う倉庫がいくつもあるんだ。元々、遊園地の飲食店があったところだからね」


来るときの電車では、風巡りは通ってないので想像がつかない。

「風巡りの施設は、ほとんど壊さずに使っているんだ。街も屋台村みたいなところにあるから、気になるなら帰りに寄ってみる?」

「いいの?」

「電車は1日2回出るから、行けると思うよ。

後で、創太さんにでも相談してみようね」


会議は、なぜか水揚げの話になっていた

「夏場は主に、ニジマスがとれるから祭のメインはそれでいいんじゃないか?」

「祭では、いつものように切り身ではなく大きいまま持っていって焼くのはどうだろう」


各々がいろんな意見を言っている

「今は、外の食材の加工の話じゃなかったか?

ほんとに、この街の人たちはまとまらない」

創太さんがぼやいている


ゲンさんは少し大きな声で言う

「外から来たものはまずは再加工、粉砕機の件はどうなってる?」


工場責任者の実さんが立ち上がる

「先月から稼働している大型粉砕機は順調に成果をあげています。粒度調整、混合、袋詰めまで、今までのものと比べるとかなり早く作業できるようになっています」


「人員は足りてるのか?」

「かなりの人数が働いてくれてますが、農業の閑散期にまとめてできないかという声も上がっています」

「そこは、外との話し合いだな」

「冬に沢山仕入れられるか、次の会議にかけてみるよ」


「具体的な数字を出しといてくれると助かる」



「次は冷凍トロッコの件なんだがいいだろうか?」

「タケさん、どうぞお願いします」


タケさんは、風巡りの冷凍、冷蔵庫の責任者で、代々 風巡りの冷蔵庫を守り続けている、

ナギが教えてくれる


「トロッコに使われている保冷剤が、そろそろ寿命だ、新しいのを購入して貰いたい」

「あとは、これは風守りに頼まないと無理なんだが、冷凍室の滑車、これも何ヵ所か交換を頼みたい。命に関わるからな」


「冷蔵庫で命に関わるの?」

ナギに小声で聞くと

「僕も初めて行った時は驚いたよ。流花ちゃんも見に行けばわかる。冷蔵庫は命の危険があるところだからね」

流花は、冷蔵庫と命の危険という言葉が、どうしても繋がらない

「それも行けばわかるよ」


どうやら風巡りは、他とは色々違うらしい


会議は冷凍庫やトロッコの、技術的な話合いが続いている。


結構技術が進歩していることに

流花は目を細める。


「肉と魚の流通量は去年比1.2倍になっています。」

ナギが資料を叩く。

「特に、牛肉の需要が高まっています。ここでは作れないので高級ですが、各街に月に10キロはおろしてほしいですね」


「冷凍倉庫なら可能だろう」

数字が並ぶ。


流花は少し迷ってから手を挙げた。

「牛肉って、どんな形で運ばれてくるんですか?」

創太が答える。

「昔は大きい塊だったらしいが、今はカット肉だ。扱いやすいからな」

「……挽き肉や合挽きで仕入れることはできませんか?」

一瞬、何人かが顔を上げる。

「挽き肉?」


創太が顎に手を当てる。

「確かに。手間も減るな。忘れとったよ、流花さんありがとう」


ナギが流花を見る。

「新しいものなら、レシピは?」

「……考えます」

少しだけ胸が熱くなる。 役に立てた、というより―― ちゃんと、この街の食を考えてる自分がいる。



「発酵はどうなってる?」

年配の研究員が言う。

「味噌、酢、麹は順調。 ただし温度管理にばらつきありますね」

その後も、醤油、お酒、ヨーグルト、チーズなど発酵食品も沢山作られてるようだ

「全体で使えるような、温度室を一室増やしたいですね」


「風守りに打診してみよう。祭の後になるだろうがいいだろうか?」

「今年分は、大丈夫ですので、来年以降増やせる方向でお願いします」


この街は、風街の食を全部引き受けているんだ。結構、すごいことなのかもしれない。


「じゃあ、商品開発については何かあるか?」

ゲンさんが立ち上がる。


「まずは、オリーブ畑がなんとか軌道に乗ったので、今年はオリーブオイルの開発が完成しそうだ。まだ、少量なので高価だが市場に出せそうではある」

拍手が起こる。

「オリーブは、始めてから8年。やっとここまできた。ご苦労だったな」


「あとは、スパイスがいくつかはいるようになったので、ミックススパイスや各種のタレなんかも来年度には販売できるようになると思う」


「農業チームと、合同で進めている。乾燥野菜について、ちょっとみんなに意見を聞きたいんだが」

「今は、キノコと人参、大根の乾燥野菜を作っているが、これから出そうとしているのは、なす、トマト、カボチャ、ほうれん草なんだが」

「どれも、市場ではカットして売られているが乾燥があると便利だと判断したものだ」


「実を言うと、風街で作られる野菜はほとんど乾燥できる。でも、しすぎるとなんだか味気ない気がしてな」

「どう思う?」


「野菜は買い物しても重たいし、全部乾燥で売ればいいんじゃない?」

「そのまま出荷して、余剰分を乾燥、保存すればいいのでは?」

いくつか意見が出る。


流花も手を上げる

「確かに、少し味気なく感じるかもしれませんが、残るのなら乾燥したほうがいいと思うんです。 いくつか野菜をミックスして袋詰めにして味噌汁用として販売するのはどうでしょう?」


「それは便利だな。じゃあその方向で余剰分を作ってみよう」


あるものを全部使う。

余ったものも捨てない。

そうやって、この街は回っている。


そして、風街の胃袋を握っているのは、きっとここだ。

この街が止まれば、他の街も止まる。


だから止まれない。

止めない。

そんな覚悟が、静かに根を張っている気がした。




風巡りは、派手ではないけれど、静かに街を支えている場所です。

数字も、倉庫も、冷凍庫も、発酵室も。 全部が「誰かの一食」に繋がっている。

今回の会議では、流花がようやく“食の人”大きな改革ではなく、小さな提案。 でも、街にとっては確実に意味のある一歩です。

次は後半。

流花が本気で食の街に関わるか考えます。


ここまで読んでいただきありがとうございます

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