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この世界は、小さく静かでちょうどいい~小さな体ではじまる異世界転移〜  作者: ウラン
第3章《風読みの街で》

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第92話 風受け会議(前編)

今日は風受けの会議だ


ナギも流花も、自分達の街なので

熱の入れかたもちがう

「今日はナギが司会でしょ」

「ちょっと緊張してる」

「頑張って。私も何か気付いたら話すようにするね」


机の上には布地の切れ端、糸束、染料の色見本。

図面の上にまで、うっすらと繊維が乗っている。

生活の匂いではない。

ものづくりの匂いだ。


ナギは、一度深く息を吸った。

司会としての自分と、倉庫番としての自分を、きちんと分ける。


「始めます」

ナギが立ち上がる。

「今回は議題が多いです。午前中は

水車小屋建設、機織機の動力転換、染色工程の工場化、そして新型ミシンの機能追加について、風守りの方達と連携しての会議です」

空気がぴんと張った。


まずは水車小屋建設について

風受け担当の保さん、説明お願いします。

大きな図面が広げられる。

「直径60センチ。落差と水門で水量を調節する形で、最適回転数は毎分15回転を安定させるようにします」

「水量の調節は、こちらで簡単にできるのか?」

「それは大丈夫なように、きちんと仕組みを作る予定です」

「その回転数できちんと機織り機は回るのか?」

ベテラン職人が眉を寄せる。

「現行の足踏み機織機よりも安定します。

ただし問題は――」

保は一枚の紙をめくる。

「耐久性ですね」

水車は木材で出来ている。水量が多すぎるときに水圧で壊れる想定もしなければならない

「でも回転が安定すれば、生産量は今の四倍にできると思っています」

「今まで通りの足踏み式も、予備で置いとけばいい。年配の機織り職人はそのまま作っといてもらえばええ」

年配の職人が低く言う。


部屋が少し静かになる。

「だから水車は“補助動力”として試験導入します。四台のうち一台のみ、水車接続。比較検証」

「それならいい」

「まずは試せ」

結論は出た。

量産ではない。

検証だ。


「水車小屋は試験運用しながら本格導入していく事で決定します。実際、布が足りてないですし」

「今のように、外からの、供給に頼っていては 風受けの技術も向上しません。なるべく早く量産出来るよう、技術面でのきょうりょくをお願いします」

ナギは,、上手くまとめている。


「では、次の議題に移ります。現在、染色は各工房で行われています。だが色ムラが出ると言う意見も出ています」

若手の職人が手を上げる

「染色工房の咲哉(サクヤ)です。

今現在は、染めの工房が風受けに四つあり、各工房で染めと模様書きをしている状況です。」「それだと、時間のロスがどうしても出てしまうと思うんです。なので染め、乾燥、模様書きとみんなで協力したらどうかと思うのですがいかがでしょう?」


「だから工場化したいのか?」

また、ベテラン職人が難色を示しているようだ。

「工場化とは、ちょっと違って」

「各工房、こだわりは色々あると思うのですが、分業することで専門的な技術も上がると思うんです」

「そうすれば布は安定する」

「だが」 年配の職人が声を落とす。

「個性がなくなるんじゃないか?」

空気が変わった。


咲哉が反論する。

「今、各染色工房の若手達は、この方法で作ることに同意しています。将来的にはそうするつもりです。ですが、今の親方世代にも同意していただきたい」

「そう思って、この会議に参加しています。若手の総意だと思ってください」


「俺たちは、親方の色を消したいわけじゃない。その色を、ちゃんと残すための仕組みを作りたいんです」


「おまえ達の言いたいことはわかった」


「街に戻って他の親方達と相談する」

「この話は、持ち帰っていいか?」


「わかりました。また、報告お願いします。

話し合いの場が必要でしたら私たちも参加しますので言ってください」


なんとかこの場は治まったみたいだ、


「つぎの課題ですが風受けでは既に足踏み式改良型のミシンを使っています。」

「今回、針上下の微調整機構を追加します。そして、電動式ミシンも開発に成功したようですので、説明お願いします」


「ミシン工房の瑛士(えいと)です。今回、風守りの技術者と協力して電動ミシンの再現に成功しました。」

おー!とあちこちから声が上がる


「始まりの遺品の中にはあったのですが、いかんせん古いものなので部品を作るのも大変でしたが、今回、電動式で布端の処理も可能なロックミシンも同時に出来上がっています」


「新しい機能として、縫い目幅を一定に保つ補助機構がつきます」


「それはいいな、スピードも上がるんじゃないか」

「初心者でも精度が出るな」


年配がすぐに言う。

「技術を機械に頼るのか」

ぴりっと空気が張る。


女性の職人が手を上げる。

「裁縫技術者のリカコと申します。よろしいでしょうか」

「私の工房では、新しいミシンに期待をしています。若い技術者は育てます。でも失敗で布を無駄にする回数は減らせるとおもいます」


流花は思わず口を挟んだ。

「感覚は大事。でも基準があると安定します」

「調理道具だって進化してきています。

でも料理人がいらなくなったわけじゃない」


ナギが補足する。

「歩留まりが良くなれば、外貨にも繋がります」


年配は腕を組み、しばらく黙る。

「……若手が使うならいい」

完全な賛成ではない。

だが、否定もされなかった。


ナギがまとめる

「今回、風守りとの協力で、格段に機械化が進みます。ですが、風受けの技術者が廃れていくことはないと思っています。今後、新しいデザインや流行には不可欠なものだと思いますので、使い方に慣れて行ってもらえればとおもっています」


風受けの技術は機械化でも廃れない。

これは、風受け全体の技術者の覚悟みたいな気がした。


一旦休憩を挟むので外に出る人が多かった。


流花は息を吐く。

「熱いですね、風受け」

「うん」 ナギは小さく笑う。

「布は柔らかいけど、職人は固い」

「でも、みんな前に進もうとしてる」

ナギは少しだけ横目で流花を見る。


「一緒に考えてくれてありがとうね」

「え、私、余計なこと言いました?」

「いや」

少し間を置く。

「風受けのこと考えてくれてる感じがして、嬉しかった」


流花は気づかない。

それが、風受けの中に入ってきた証だということに。


「お弁当食べて、午後からも頑張ろう」

風受けは、やっぱり熱いです。

布はやわらかいのに、

職人たちはびっくりするくらい頑固で真面目で、

でもちゃんと前を向いている。

技術を守るのか、機械を入れるのか。

量を増やすのか、個性を残すのか。

どれも正解で、どれも怖い。

流花はまだ外の視点を持っているけれど、

少しずつ「風受けの一員」になってきました。

本人は全然気づいてないけど。

午後は、もう少しキラキラ寄りで

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