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この世界は、小さく静かでちょうどいい~小さな体ではじまる異世界転移〜  作者: ウラン
第3章《風読みの街で》

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第90話 風綴り会議

今回からは各街の会議回です。

ちょっと長くなりますが、街の問題を一つづつ解決していきます。どうぞお付き合いください

会議室の机には、紙が何枚も重ねられていた。

祭の配置図、費用の概算表、図書館の蔵書リスト、学校関係の書類。

実務の匂いが濃いことに気付き、流花は気持ちを引き締める


「じゃあ、始めましょう」

綺羅がそう言って、軽く手を叩いた。

「今日は大きく三つ。祭り、図書館、学校。

決めきるところと、最終日に回すところを分けて話します」


まず出たのは、祭の話だった。

綺羅が

「詳細を責任者のニコさんよろしく」

ニコは、長い脚を組み替えながら資料をめくる。その声は落ち着いていて、場をまとめ慣れている人の響きだった。

「今年の祭りは、各街で出店ブースを出してもらいたいんだけど、いいかしら」

「去年みたいに中央に集める形は、やめたいと思ってます。人も物も、集中しすぎて大変だったから」

別の人が資料をめくる。

「各街一ブースなら、準備の負担も分散できるんじゃないかな?」

「その代わり、装飾や備品は最低限にしないと、コストがかかりすぎるのも問題よ」

「布と照明は共用にするっていうのはどう?」

「風守りに、屋台の基本フレームをお願いできるかしら」

「各街の特徴を出したブースをつくってもらいたいと思ってるんだけど」

「じゃあ、食べ物関係のブースは風巡りに全部お願いするかたちになっちゃうわね。ただし、種類が増えすぎるときは、他の街も協力して」


細かい数字や意見が飛び交う。


「去年より一割抑える位を目標に、無理に増やさないように気をつけてください」

「余った分は、次の行事に回せる仕組みも考えててもらいたい」


綺羅がまとめる。

「“各街が関わる”を優先。派手さより、続けられる形で」

異論はなかった。



次に、ファッションショーの話題になる。

「これは、風受けから正式に上がってきた案件ね」

そう言って、綺羅はナギを見る。

「ナギ、共有お願い」

ナギは一枚の紙を手に取った。

「風受けとしては、技術の発表と、若い職人の育成を目的にしたいそうです」

「衣装は新作中心、ただし、完成度より“過程”を見せたい」

「発表の場は、祭のメインステージを想定」 「メインステージのスケジュールを一時間ほど押さえたい」

一同がうなずく。


希妃が言った。

「その中に、物語性を持たせたいわね」

そこで、流花が少しだけ手を挙げる。

「……学校の発表会みたいにするのはどうでしょう」

視線が集まる。

「うまく見せる、よりどう考えて作ったか」 「どこで悩んだかを話す時間を入れるとか」

「服だけじゃなくて、作っている人も見える形にしたいなって」


ナギが、補足する。

「風受けも、同じ意見でした」

「それなら」 綺羅が言う。

「企画案としてまとめて、最終日に提出ね」



話題は、図書館に移る。

「図書館館長になりました。啓悟(ケイゴ)と申します。以後よろしくお願いします。作家をしておりましたが、初めての会議なのでお手柔らかにお願いします」

物腰の柔らかい年配の男性だった。

図書館の設備、仕組み、蔵書の種類など結構細かいところまで長めの説明がつづいた。


「図書館が初めてできると言うことで、蔵書は増えました。でも、管理と貸し出しが追いついてない」


「今は閲覧のみで、借りられないのが不便、という声も出てる」


流花が、慎重に言う。

「児童書だけ、貸し出しを始めるのはどうでしょう」

理由を続ける。

「子どもたちは、学校で毎日風巡りに来てますから、返却管理もしやすいですし」

「大人向けの本は」 少し間を置いてから、

「電車で返却できる仕組みにしてはどうでしょうか?各街の駅に返却箱を置いて、回収は、定期便で」


「それなら、返却忘れも減るわね」

「回収の手間はどうする?」

「紛失が増えない?」

「電車側にも確認をとらなければならないですが、その方法はすごく良いですね」


「でも、とにかく蔵書自体が、まだ足りないと思うのよ。各街に、寄付を呼びかけたいんだけど、倉庫番さん達、お願いできるかしら?」


別の女性も手を上げる

「司書のアカツキと申します。率直に言いますけど、司書が足りないわ。今は三人だけど、貸し出しを始めたら回らない」

「読み聞かせや整理を手伝う人を募る?」

「ボランティアを募集したり、学校と連携してもいいと思う」

図書館運営の話は昼過ぎまで続いた。



休憩をはさんで最後に、学校の話。

「学校長のリコです。よろしくお願いします」

ちょっと、厳しそうな中年の女性が立ち上がる


「現在、在籍は約三百人」

「一学年、三十人前後となっています。

ちなみに今年4月の入学生は32人でした」

綺羅が質問する

「現在、教員は足りていますか?」

「教員は今、20人はいますが、9学年ありますし、行事も多いのでギリギリかと思っています。ましてや高学年の専門的な授業となると」

「明らかに足りないわね」


流花が思い付いたように口を開く

「客員教授みたいな先生を頼んではいかがでしょうか?」

「客員教授?」

「はい、各街にはスペシャリストの方々もたくさんいますし、直接仕事に関わる人達が教えることで、生徒達も進路を決めやすくなるんではないかと」

リコは流花をじっと見る。

「外から来た人の視点、悪くないですね」


「じゃあその件は、来年度から入れれるように今年中に詳細を決めたいですね。流花さん、後で、詳しくお話聞かせてください」


「秋の運動会、の件なんですが、風街全体の運動会として、学校行事と街ぐるみの運動会をかねて、行っていますが今年も同じように学校に一任でよろしいですか?」


「生徒主導のお祭りとして、学校に任せてますが、 各街にも協力をお願いしたい」

「風守りに器具」 「風巡りに食事」 「風受けに衣装」 「風読みには記録と案内」


「学校は、街で育てる場所ですから。学校からの要請がありましたら、なるべく希望を叶えて上げて欲しいです」


設備の話も出る。

「教室の修繕」 「机と椅子の追加」 「雨の日の運動場」

希妃が立上がり意見を出す、

「これは優先順位をつけて順番にお願いします。全部いっぺんには無理!」


綺羅が、時計を見ながら深く息を吸った。


「今日決めるのは、ここまでとします」

「細かい数字と案は、各担当で詰めて」

「最終日に、まとめて提出しましょう」

紙を揃えながら、少しだけ笑う。


「忙しいわね」

「ええ」 誰かが答えた。

「でも、ちゃんと運営するためだもの」


会議室の窓から、風が入る。



会議室を出ると、空気が少し軽くなった。

紙を抱えた人たちが、それぞれの街へ散っていく。声が、廊下にゆっくり溶けていった。


流花は、思わず息を吐く。

「……ふぅ、会議って、やっぱり疲れますね」

「そうだね」

ナギも書類を抱え直しながら答える

「でも、今日は結構進んだと思う。流花ちゃんもたくさん意見だしてくれてありがとう」

「うん」 流花は、歩きながらうなずいた。

「ナギ」

「でも、色々な事情も知らないのに勝手なこと言っちゃったかなって、ちょっと思って」


ナギは、すぐに首を振った。

「全然大丈夫。風受けの人たちも、新しい意見をもらえて、喜んでると思うよ」

「ほんと?」

「うん」 少しだけ笑って、

「流花ちゃんの言い方、分かりやすかったし」


その言葉に、流花はほっとした顔をする。

「よかった……」


歩幅が、自然と揃う。


「ナギって」

流花が、ふと続けた。

「会議のときと、普段、全然違いますよね」

「……そうかな」

流花はくすっと笑う。  

「会議中は、すごく“大人”って感じだもの」

「それ、褒めてる?」

「たぶん」

「これが、仕事ですからね」

ナギは、小さく息を吐いた。


「でも」

流花は、少しだけ声を落として言う。

「私は、昨日の帰り道のナギの方が好きかも」

ナギの足が、ほんの一瞬、止まりかける。


「……それは」

言葉を探して、見つからない。

流花は、何も気づかないまま続ける。

「ちゃんと人って感じがするでしょう?」

無自覚。

完全に無自覚。

ナギは、視線を前に戻して言った。

「それは……ありがとう、なのかな」

声が、少しだけ低い。


廊下の向こうに見える太陽は、もう傾きかけてて、ほんのり赤く夕日になっていく。


「じゃあ」 ナギが言う。

「明日は風守りだね」

「はい」 流花は元気よく答えた。

「がんばりましょう、ナギ」


――また、ため口。

ナギは、胸の奥で小さく思う。

仕事モードに切り替えないと、

きっと、もたない。

でも――

止められない気も、していた。


でも同時に、

この距離が、少しずつ縮んでいることも、

ちゃんと分かっていた。


会議、始まりました。

お祭りも、学校も、図書館も、全部ちゃんと「暮らし」の話。

こういう地味で具体的な話が、この街を支えてるんだなぁと書きながら思ってました。

そしてその横で、

仕事モード全開のナギと、無自覚に距離を詰める流花。

本人たちは真面目にやってるだけなのに、

空気だけがちょっと甘くなるの、ずるいですね。

次からは街ごとの会議が続きます。

たぶん感情より情報量多め。

さて、切り替えて。次は 風守り会議。


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