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この世界は、小さく静かでちょうどいい~小さな体ではじまる異世界転移〜  作者: ウラン
第3章《風読みの街で》

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第86話 男同士の内緒話~その②

そのころ――

焼き鳥屋の向かい側、静かなカフェ。


向こうはきっと、笑い声と煙と炭の匂い。

こっちは、コーヒーと少しのブランデー。


「……静かすぎないか、ここ」

ツカサが言った。


「静かだねぇ」

ナギは、カップを両手で包んだまま答える。


「落ち着くけどさ」

ツカサは苦笑する。

「考えすぎる場所だな」

「……」

ナギも小さく笑った。

「余計なこと、全部浮かんでくる」

しばらく、二人とも黙る。


「……なあ、ナギ」

ツカサが、カップを置いて言った。

「正直に言うぞ」

「……うん」


「流花ちゃんのことだけどな、

俺、まだ“好き”ってほどじゃないけど」

一拍置いて、

「このまま好きになりそうだな、とは思ってる」


ナギは一瞬だけ目を伏せて、うなずいた。 「……そんな、気はしてた」


「驚かない?」

ツカサが苦笑する。

「まぁ、そうだよな」


「……正直に言ってくれて嬉しいけど」

ナギは、ゆっくり答えた。

「僕も」

今度は、ツカサの方が一瞬黙った。

「好き、なんだ?」

「うん、好きだと思う」

ナギは、はっきり言った。


「そっか」

ツカサは、息を吐いた。

「俺はさ、たぶんそこまで踏み切れてない」


「でも……」 少し迷ってから続けた。

「ツカサは、引いてくれてるのかなって」


「引いてる、というか」

ツカサは頭をかく。

「様子見してた」


ナギは、ゆっくりうなずいた。

「様子見か……そうだよね」


「正直、どうしたらいいか分からん」

ツカサは、カップを見つめる。

「今はまだ、声かける理由も立場もないし」

「……」

「でもさ」

ツカサは、視線をカップに落とす。

「ナギの方が、ちゃんとしてる」

「ちゃんとしてないよ」

ナギは、すぐに首を振る。


「してるって」 ツカサは即答した。


「好きって自覚してて、それでも縛りたくないって考えてるんだろ?」


ナギは、少し黙ってから、正直に言った


「……怖いんだよ」


「何が?」

「外に帰れる人だから」


声は低く、静かだった。

「ここにいる理由が、僕になったら嫌で」


「……重いな」

ツカサが、ぽつりと言う。

「重いね 自覚はあるよ」

ナギは苦笑する。


「でも、考えちゃうんだよねー。言ったら終わりな気がして」

「終わり?」

「楽しく話せてる今が、壊れる気がして」


「それ、分かる」

ツカサは即座にうなずいた。

「だから俺も何も言えるきがしない」


「だよね」

「うん」

「俺ら、女子みたいだな」

二人は揃ってため息をつく。


「でもさ」

ツカサが、少しだけ冗談めかして言う。

「ナギがそのままグチグチしてたら」

「……」

「俺、先に“好きになりそうです”くらいは言うかもしれない」

「まだ予告だけど」


「……それ」 ナギは、困った顔で言う。

「嫌」

「即答だな」 ツカサが笑う。


「嫌だ」 ナギは、もう一度言った。

「どうしたらいいか分からないけど、取られるのは、嫌だ」


「だよなぁ」 ツカサは、どこか安心したように言う。

「そういう顔してる」

「顔に出るかな」

「出てる」

即答。

そしてまた二人でため息をついた。


向かいの焼き鳥屋から、

楽しそうな笑い声が風に乗って届く。


「……楽しそうだな」 ツカサが言う。

「あっちは賑やかだよね」

ナギもうなずく。

「女性ってさ、ちゃんと選んで、ちゃんと話して強いよな」


「それに比べて俺ら」

ツカサはため息をつく。

「どうしよう、どうしよう、って」

「ずっと、どうしようだね」

ナギも自嘲気味に笑う。


窓の向こうで、また女子たちの笑い声がする。

「なあ、ナギ」

「この街、風が動くときは一気に動くからな」


「……」


「覚悟しとけよー!強い女たちと、ナヨナヨ男の組み合わせは」

「案外、油断ならない」


ナギは、少しだけ笑って。

「ツカサも油断ならない」


「俺?」 ツカサは笑う。

「俺は、いつでも本気だぞ?」


静かなカフェで、

男二人の視線は、同時に焼き鳥屋の灯りへ向いた。


同じ人を想って、

それぞれ、ちゃんと胸に抱えながら。


ナヨナヨしてるくせに、

少しだけ前に進んだ夜だった。


(ナギ)

好きって、分かってるのに。

言えない理由ばっかり考えてしまう夜でした。

優しさなのか、臆病なのか、たぶん両方。

(ツカサ)

まだ「好き」じゃないって言い訳してるけど、

気づいたら目で追ってる時点で、もう時間の問題だと思う。

ぐずぐずしてたら、ほんとに取っちゃうかも。


強い女たちの向かいで、

ナヨナヨ男二人は今日もコーヒーが冷めるまで悩んでました。

ここまで読んでいただきありがとうございます

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