第84話 女子会
五時ちょうど。
流花は噴水前で待つ。
夕方からの食事会なので、お気に入りの青いワンピースを着てきた。
「流花ちゃーん、お待たせ!」
綺羅と希妃が、元気いっぱいに駆けてくる。
「ミズキさんと、もう一人はね、お店で待ってるの」
「流花ちゃん、焼き鳥好き?」
「はい、もちろん!」
「よかったー。今日はね、美味しい焼き鳥屋さんなのよ」
暖簾をくぐると、
炭のいい匂いが、ふわっと鼻に届いた。
奥の個室に通されると、
ミズキと、ショートカットの女性が座っている。
「流花ちゃん、来てくれてありがとう。ずっと話したかったのよ」
「こっちはね、友だちの陽子。風守りのこよ」
「はじめまして、流花です」
「こちらこそ。よろしくね。
風守りで家具職人してます、ヨウコです」
「さ、座って!」
「とりあえずビールでいいかしら?」
「親父さーん、ビール四本! あと、お通し
も!」
――ミズキさん、
思ってたよりずっと気さくだ。
冷えた瓶ビールと、
野菜のおつまみが運ばれてくる。
「じゃあ、流花ちゃん、はじめましてと、今回の会議と、夏に――」
「かんぱーい!」
「ちょっと、それなによ」
「いや、夏だし(笑)」
女四人の笑い声が、
店の中にやわらかく響いた。
「こんなふうに集まるの、久しぶりで……
女子会すごく嬉しいです」
流花がそう言うと、
「……じょしかい?」
三人が、ぴたりと声をそろえる。
「あ、えっと……向こうでは、
女の人だけで集まって飲んだりごはんしたりするのを“女子会”って言うんです」
「それ、いいわね」
「流行らせましょ」
「じゃあ、風街で最初の“女子会”に――」
「かんぱーい!」
焼き鳥が運ばれてくる。
こちらでは鶏肉と、ウズラ肉があるらしい。
脂が滴り、タレもつやつやしててすごく美味しそうだ。
そして、一本一本が大きくて、串からはずして
みんなで分けて食べる。
「ここね、一人だと種類食べれないのよ」
「だから、みんなで来たかったの」
「あんた、この前一人で来たって言ってたじゃない」
「一人居酒屋できるなんて、かっこいいです!」
そう言うと、陽子は少し照れた。
「男に混じって職人やってるからね」
「どんな家具作ってるんですか?」
「椅子が多いかな。
座り心地のいい椅子を作れるよう、修行中」
「流花ちゃんは料理人さんなんでしょ?」
「はい。今は、風受けの店で働かせてもらってます」
「綺羅さん達は風巡りでお仕事何をされてるんですか?」
「私は倉庫番が主だけどね」
「希妃は本を書いてるのよ」
「えっ、作家さん?」
「向こうの本を、こっち向けに書き直したり。
自分でも絵本をいくつか」
「ねぇねぇ」
希妃が身を乗り出す。
「流花ちゃん、向こうの人だったんでしょう?
飛行機って、乗ったことある?」
「ありますよ」
「空を飛ぶって、どんな感じ?」
「本には書いてるけど、いまいち分からなくて創太さんに聞いたんだけど、乗ったことないって言ってたし」
「じゃあ、風街で飛行機乗ったことあるの、流花ちゃんだけじゃない!」
「教えてほしいこと、いっぱいあるの!」
飛行機のこと、ビルの高さ、学校のこと、、、
怒涛の質問が飛んでくる。
「ちょっと、聞きすぎ」
ミズキが笑いながら止める。
「流花ちゃん、逃げないんだから。
そのうち、ゆっくり聞けばいいでしょ」
一拍置いて、にやりとする。
「それより――希妃。
あんた、結婚はどうなってるの?」
「ちょっ……!」
一気に空気が変わる。
――あ、ここからだ。
女子の話は、
だいたい、ここからが本番だ。
女子会いいですよねー。
焼き鳥とビールと、ちょっとした自慢と、
止まらない質問と、最後はだいたい恋バナ。
世界が違っても、集まるとやってることはあんまり変わらないなぁと思いながら書きました。
次は誰の秘密が暴かれるのか。
そして流花は、どこまで話してしまうのか。
お酒の席は、ほどほどに。
ここまで読んでいただきありがとうございます




