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この世界は、小さく静かでちょうどいい~小さな体ではじまる異世界転移〜  作者: ウラン
第3章《風読みの街で》

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第78話 選択

流花は、集まっているみんなを見渡してから言った。

「このスマホは……調べることもできるんです」

少しだけ間を置く。

「例えば、なんですけど」

風巡りの街の方を見る。

「綺羅さん。お祭りの準備で、何か困っていることはありませんか?」


綺羅は少し考えてから言った。

「そうね……風受けの人たちが、ファッションショーをしたいって言ってるの」

「でも、どんな舞台で、どんな風にやればいいのかが分からなくて」


「わかりました。最先端すぎると参考にならないと思うから……服飾専門学校とか、学生さんのファッションショーの動画ってありますよね?」

蒲田さんがうなずき、画面を操作した。


映し出されたのは、体育館のような場所。

低めのランウェイ。

簡単なスポットライト。

学生たちが、自分たちで作った服を着て歩いている。

「……これなら作れそう!」

綺羅と希妃は、食い入るように画面を見つめた。


すると、風巡りのジュンさんが言った。

「それなら……今、流行ってる菓子なんかも見せられるのかい?」

蒲田さんが画面を切り替える。


クリームがこんもり乗ったフルーツいっぱいのパンケーキ。

色とりどりのショートケーキ。

「すごいな……」

「何でも映せるんだなぁ!」


そのとき。

「ところで、これはどうやって動いてるんだ?」

風守りの陽介さんが、スマホの後ろに回り込んで言った。

「コードがないが……電池か?」

「バッテリーです」

流花が答える。

「電池ではなくて、コンセントから充電するんです」

「こんなに薄いのに……!」

感嘆の声が漏れる。


頭領が、静かに口を開いた。

「……流花さんは今、これを持っているのかい?」

流花は首を振った。

「いえ。私はこちらに来たとき、何も持っていなかったので」


その瞬間、ふと違和感がよぎる。

――そもそも、私、いつこっちに来たんだっけ。

蒲田さんの店を出て、

車に乗って、

山道を走っていて……。

その先の記憶が、どうしても続かない

考え込んでいると、ナギが心配そうに覗き込んだ。


「どうした? 大丈夫?」

「……あ、いえ」

流花は顔を上げて蒲田さんを見る。


「私、車に乗って山道を走ってたところまでは覚えてるんです」

「なので……どこかに、私の車、見ませんでしたか?」

蒲田さんは少し考えてから言った。

「そういえば……ここに来る途中、緑色の車が停まってたな」


流花の目が、少しだけ開く。

「多分、それ、私の車です」

「鍵も付いていると思うので……今度来るときに、そこからバッグを持ってきてもらえませんか?」

「もし……残っていれば」

一拍置いて、続ける。

「私のスマホがあります」

「それで、ここで分からないことを調べる、というのはどうでしょうか?」


頭領は、少し難しい顔をした。

「……みんなにも聞いてもらいたい」

「この器械は、あまりにも衝撃が強すぎる」

「もちろん、私たちだけの秘密にはする」

「だが、一気に情報を出すのは……危険な気もするんだ」

ゆっくりと、問いかける。


「どう思う?」


すると、頭領の娘――ミズキが口を開いた。

「お父さん」

「流花さんがここに来たということは、きっと……文明を進めてもいいと、風が判断したんじゃないかしら」

場が静まる。

「私たちの設備や技術だけでは、ここまでの発展は、すぐには無理だわ」

「でも、ヒントがあって、それを調べることができて……」

「私たちが、少しずつ選択していけばいいと思うの」

「どうかしら?」


創太さんが、うなずきながら言った。

「これは…会議室でしか使えないんだろう?」

「少しずつなら、ワシも賛成じゃ」


他のみんなも、静かにうなずいた。

頭領は、深く息を吸う。

「……では」

「絶対に口外しないこと」

「そして、もし流花さんのスマホが、次の会で手に入るのなら」

「次回から、少しずつ取り入れてみよう」


その言葉が落ちた瞬間。

窓を閉めているはずの会議室に、

ふわりと風が吹いた気がした。


少しずつ、できることが見えてきました。

スマホだけでなく、

流花が来た道――車やバッグのことも、

この世界と外をつなぐ手がかりになりそうです。

全部を一気に変えるのではなく、

少しずつという選択でした

ここまで読んでいただきありがとうございます

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