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この世界は、小さく静かでちょうどいい~小さな体ではじまる異世界転移〜  作者: ウラン
第3章《風読みの街で》

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第77話 初めて見る世界

時間軸、整えました

蒲田さんは、ゆっくりとスマホを取り出した。

一瞬だけ指が止まり、

それから、意を決したように電源を入れる。


光が灯る。

トップ画面に映し出されたのは、

森の中に佇むミニチュアショップの外観だった。


あまりにも鮮明で、

まるで本物を覗き込んでいるかのようだ。

「……これ、写真?」

綺羅が、思わず声を上げた。


「はい」

蒲田さんがうなずく。

「私がやっている、ミニチュアショップです」

その一言で、

画面は「作り物」ではなく「現実」になる。

視線が、さらに集まった。


「蒲田さん」

流花が、静かに言った。

「東京の様子が分かる動画、出せますか?」

蒲田さんは短くうなずき、画面を操作する。


流花は創太さんの方を見て言った。

「創太さんは分かると思いますが……

ここ、日本の中心都市、東京の今の様子です」


そして、動画が再生された。

人、人、人。

途切れることのない人の流れ。

空に向かって伸びる高層ビル。

車、電車、新幹線、飛行機。

商店街の賑わい。

デパートの光。


ここにはないものばかりが、

同じ大きさの画面に映し出されていく。


誰も言葉を発さない。

五分ほど経ったころ、

ようやく蒲田さんが口を開いた。


「……これが、今の日本です」

創太さんが、息を呑んだまま言った。


「あぁ、東京だ」」


少し間を置いて、治さんが言った。

「これは……このスマホという器械は

みんなが持っているものなのかい?」

流花は、はっきりとうなずいた。

「はい。私も持っていましたし、今は世界中の、ほとんどの人が持っています」

「世界中の、どこの人とも話せます」

ナギが、信じられないという顔で画面を見つめる。

「話せる?これ……電話なのかい?」

「そうですね」

流花は少し考えてから答えた。


「電話でもあり、テレビでもあり……コンピューターでもあります」

「それが、この大きさで」


創太さんは、こちらに来た頃を思い出しているのか、しばらく言葉を失っていた。


他のみんなは動く映像を、

これほど鮮明な形で初めて見る。

驚きすぎて、声も出ない。


風守りの陽介さんが、低く言った。

「……こんなもん、どうやって作るのかも分からねぇ」

「ここに映ってる街も……」

言葉は、そこで途切れた。


ナギが、画面から目を離さずに言う。

「こんなにすごいところから、流花ちゃんは来たのか」

「私のいた場所はこんなに都会ではなかったのですが、やっぱり人も車も多かったですよ」


「着てる服も、デザインも……カラフルで、かわいくて」

綺羅も希妃も、

音と光に目を輝かせている。


その様子を見渡してから、

頭領が、静かに口を開いた。

「……これは」

一拍置いて、続ける。


「確かに、すごすぎる」

「どうやっても、追いつけそうにない」

そして、流花を見る。

「これを見せられたら……流花さんの言うことも、納得だ」

少し、声を落とした。


「これは……みんなには見せられない」

「我々は、外には出られないのだから」

その言葉に、

場の空気が、はっきりと変わった。


ついに、スマホが登場しました。

この世界にとっては

道具でも、魔法でもなく、

「外の今」をそのまま映すものです。

ここから先、

何を見せて、

何を見せないのか。

その選択が、

物語を少しずつ動かしていきます。

ここまで読んでいただきありがとうございます

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