第75話 外との交易
蒲田さんが窓を閉めながら言う。
「私の話はこの辺にして、今回の品物についての話をしましょうか」
木枠が鳴り、外の風の音が一段遠のいた。
まだ聞きたいことが山ほどある気もしたけれど、蒲田さんは軽く手を上げて制した。
「流花さんも、まだ気になることはあるでしょう。でも私も長い時間こちらにいると早く老けてしまう気がして、こちらにいるのは一回2時間位にしているんです」
――そうか、時間のずれがあるんだった。
30代位に見える蒲田さんだが、毎週来ていると言っていたし、気にはなるよね
蒲田さんは机の上に1枚の紙を置いた。
多分A4サイズなのだろうけれど、
広げるとテーブルいっぱいになる。
細かい文字で、びっしりかいてあるので
ここの人達にはわかりやすいサイズ感になっている
こういうところまで考えてくれているのか、と流花は思った。
「まずはこちらが持ってきたもののリストです」
いつもの、塩、砂糖、胡椒。
チョコレート、ココア。
クミン、シナモン、クローブ、ナツメグ。
カレーパウダー。
ココナッツミルク、ツナ缶、鰹節。
その他にも保存できる食材が並んでいる
流花は思わず目を瞬かせる。
「……スパイス、多くないですか?」
「ええ。スパイスはこちらでは採れませんし、カレーは特に人気でして。最近は料理の幅も広がっているみたいで、スパイスはよく求められるんですよ」
蒲田さんはリストを指でなぞりながら続ける。
「でも、流花さんは分かると思いますが、業務用の袋を一袋ずつあれば、ここでは三ヶ月分、皆さんの食事が賄えますから」
流花は、かつて見慣れていた業務用パッケージを思い出す。
確かに、あの量なら三ヶ月どころか余裕がありそうだ。
食料品だけじゃない。
ゴム、ペットボトルのチップ、石灰、灯油、羊毛、植物の種、ビニール、、、、
暮らしを支えるもの。
工夫の余地を広げるもの。
時間を、少しだけ短くするためのもの。
流花は、改めてリストを見つめた。
確かに、こちらにはないものばかりだ。
けれど、文明を一気に進めてしまうようなものも、見当たらない気がする。
「流花さん、他に気になったものはありますか?」
風守りさんが言った。
「逆に言うと……このリスト以外のものは、こちらで作っているってことですよね。すごいなぁと思って」
風守りさんは、少しだけ笑った。
「ざっと450年の歴史がありますから、大概のものは作れるようになったんですよ。まだ、流花さんはこちらの生産力を、あまり分かっていないと思います。流花さんからの提案は次回から、ということにしましょう」
そして、頭領が続ける。
「明日からの部門会議で、各街と話してみてもらえませんか?」
部門会議。
各街。
「何せ、外から人が来るのは、こちらも四十五年ぶりなんです。創太さんが最後で」
「はじめの頃は、五年に一度くらいは来ていたらしいのですが」
――ということは。
いま、私がここに呼ばれたことにも、何か意味がある?
流花の脳裏を、
あるものの存在が、ふっとよぎった。
外との交易は始まりましたが、
この回では「変わりすぎないこと」を大切にしました。
流花が呼ばれた理由も、
交易の行方も、
まだ少し先の話です。
次は、流花が気になったものとは?
ここまで読んでいただきありがとうございます。




