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この世界は、小さく静かでちょうどいい~小さな体ではじまる異世界転移〜  作者: ウラン
第3章《風読みの街で》

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第73話 外の一族の理由

新しく注がれたコーヒーを一口飲んで、流花はようやく落ち着いた。


苦味の奥に、ほんのり甘さがある。


向かいに座る蒲田も、同じようにカップを口に運ぶ。


「改めまして」 そう言って、彼は軽く頭を下げた。 「蒲田悠也です」

それから、少しだけ照れたように続ける。


「この街のすぐそばで、ミニチュア家具を作っています。

……もうお気づきかもしれませんが」

流花を見る。

「あの店に並んでいる家具、僕が作ったものと、ここで作られたものが混ざっています」


思い出す。

あの店に並んでいた、妙に精密な家具たち。

ミニチュアなのに、ただ飾るだけのものじゃない、使う前提の作り。

――そうか。

「使えるはず、って思ったんです」

流花がぽつりと言うと、蒲田は小さく笑った。

「そう。実際に使うためにここで作られているものですから」


頭領が、静かに話を引き取る。

「我々は必要なものを外から調達し、その代わりにこちらで作ったものを彼に買ってもらっている」

「そうやって、この暮らしは成り立っているんだよ」

蒲田は頷いた。


「うちは、父の代から子どものおもちゃを作っていました。最初は普通のおもちゃ屋だったそうです」

「そして、ある頃から、ミニチュアを作り始めた。理由は……正直、父も多くを語りませんでした」

少し間を置いてから続ける。


「でも、その頃から、こことの行き来が始まったと聞いています」


今では、海外からも注文が来るほど、店は人気になっている。

ネットを通じて、名前も顔も知らない人に作品が届く

それで気になって、わさわさ流花もここまで店を見に来たのだった。


「だから、こことの交流は、僕にとっても大切なんですよ。一方的に助けてる、なんて感覚じゃありません」


流花は、思い切って聞いた。


「……どうして、関わることになったんですか?」

蒲田は少しだけ視線を落とした。


「昔、この場所が遊園地だった頃」

「父の店は、そのすぐそばにありました。遊園地のそばのおもちゃやさんとして子供の声が絶えない店だったと聞いています」

「遊園地のスタッフさんたちとは、顔なじみだったそうです」


閉園が決まった日。

最後のお別れ会。

「父も呼ばれていた。でも――その日、なぜか中に入れなかったらしい」

理由は、わからない。

「次の日になっても、誰一人出てこない」

不安になって、遊園地を訪れた。


「……中で、小さくなった皆さんが、途方に暮れていたそうです」

なぜ小さくなったのか。

なぜ外に出られないのか。

誰にもわからなかった。

「最初は、食料や必要なものを届けるだけでした」 「でも、何度か通ううちに気づいたんです」

蒲田は、流花を見た。


「時間の流れが、違うって」

「ここでは季節ごとに会議があるでしょう?」 「でも僕は……毎週、ここに来てるんですよ、あなたが来たのもほんの3日前なんですから」

冗談めかして言うが、その裏に重みがある。


流花は、はっとする。

――だから、外ではほんの短い時間しか経っていない。

「ちょうどその頃、外ではドールハウスのブームが来て」

「流花さんも持ってたって言ってましたよね。

赤い屋根の……」

思い出す。

確かに、そんな話をした。


「それで、ミニチュアが好きになったって」

流花は、静かに頷いた。

蒲田さんはさらに続ける

「こちらに物を持ってきて、代わりに、ここで作られたものを外に出す」

「購入、と言っていますけど……

実際は、物々交換みたいなものです」


流花は、ゆっくりと息を吐いた。


ただ、長い時間をかけて、自然に積み重なった結果なのだ。

偶然ではなく。

奇跡でもなく。

選び続けてきた人たちの、理由だった。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

今回は、

「外と内はどう繋がっているのか」

その理由が、少しだけ見えてきた回でした。

特別な奇跡というより、

長い時間の中で選ばれてきた“関わり方”のお話でした

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