第68話 倉庫番一族会議(2)
時間軸、整えました。
流花は、言葉を失ったまま固まっていた。
創太は、ゆっくりと息を吐いてから、続きを口にする。
「さて……ワシは、その事実を知ってからな。
この街に、何年かいたら帰るつもりじゃった」
帰っても、向こうでは何か月しか経っていない。
そう思えば、きっと大丈夫だと。
「……じゃが、そのまま時を過ごしていたら、こんなになってしもうた。向こうでは、たった三年ちょっと。けれど、二十代だった自分は、もう立派な老人だ」
「流花さん、驚くかもしれないがワシはな、
平成七年生まれ、多分流花さんと同世代なんだよ。だから元に戻ったとしてもな……驚かれるだけだ」
「帰る場所は、もうないんだよ」
会議室が静まり返る
「私と、創太さんが同い年!?」
「そうか、同じくらいなんだろうなとは思っていたが、同い年だったか」
創太さんは大きくため息をつく。
だから――。
「帰るつもりなら、早い方がいい。
容姿が変わらんうちにな。
ワシが考えていたように、三年ほどなら……
まだ大丈夫じゃろう」
けれど、と創太は続ける。
「その間に、こちらで大事な人ができたら?
深い関わりを持つ人ができたら?
やりがいのある仕事を、見つけてしまったら?」
言葉は、静かだけれど重かった。
「帰りたくなくなって、ズルズルとこちらに居続ける。
そうすると……人は歳を重ねてしまう」
ここは、向こうとは時間が違う。
それだけの話だ。
そう言って、創太は視線を落とした。
「……ワシは、後悔はしておらん。
ただな、流花さん。
少し考える時間があるあんたには、ちゃんと考えてほしいと思っただけじゃ」
申し訳なさそうに、言葉を添える。
「すまんな。
軽い話から始めると言ったのに……どうしても、これを伝えたくてな」
しばらくの沈黙のあと、流花はゆっくりと口を開いた。
「……少し、考えてみます。
教えてくださって、ありがとうございました」
その様子を見て、頭領が柔らかく声を挟む。
「創太、流花さんを脅かしすぎだよ」
そして流花に向き直り、穏やかに続けた。
「流花さん。
ゆっくり考えればいい。
また……次か、その次の会議ででも、教えてくれたらそれでいいからね」
張りつめていた空気が、少しだけ緩む。
「さて」
頭領が場を切り替えるように言った。
「今度は、流花さんの話を聞かせてもらってもいいかな。
君は、向こうでは何をしていたんだい?」
「はい。料理人でした」
その一言に、会議室が小さくざわつく。
「そうか」
風巡りのジュンが、どこか嬉しそうに笑った。
「それなら、またうちの街だな」
すると、すぐにナギが口を開く。
「……いえ。
それは、流花さんの意向に任せたいと思っています」
流花の頭に、また小さな疑問符が浮かぶ。
――任せる、って?
一気に核心に近づく話になってきました。
時間の違い、選択の重さ、そして「帰る」ということ。
ここから先は、流花自身がどう生きたいかを少しずつ考えていく章になります。
次は、彼女自身の役割の話へ。




