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この世界は、小さく静かでちょうどいい~小さな体ではじまる異世界転移〜  作者: ウラン
第3章《風読みの街で》

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第67話 倉庫番一族会議(1)

午前中の全体会議が終わると、

会議室の空気は少しだけ緩んだ。


各街の代表たちは、

明日から始まる部門会議のスケジュール表を受け取り、

それぞれ小さく挨拶を交わしながら部屋を出ていく。


やがて残ったのは、

倉庫番一族の人たちと――

風巡りから参加している創太さんだけだった。


(……あ)

流花は、そこでようやく気づく。

これはもう「街の会議」ではない。

外の世界のことを知っている人間だけが残された場なのだと。


「さて」

穏やかな声で口を開いたのは、

風読みの頭領と思われる、かなり年配の男性だった。


白髪交じりだが背筋は伸び、

その隣には、どこか面影の似た家族らしき人たちが並んでいる。

「まずは、お昼でも食べながら

 軽く話をしましょうか」

その言葉を合図に、

会議室の一角へとお弁当が運び込まれた。


それぞれが腰を落ち着けると、

風読み一族の男性が、ゆっくりと名乗りを上げる。

「改めまして。

 風読みの おさむ と申します」

そう言って、隣の二人を手で示した。

「こちらが息子の アキラ と サトシ。

 先ほど司会をしていたのは、娘の ミズキ です」

穏やかな笑顔で、それぞれが軽く頭を下げる。

続いて、向かい側に座っていた女性が口を開いた。


「風綴りの 綺羅キラ です。

 こちらは妹の 希妃キキ

女性だけの一族らしく、

どこか華やかな雰囲気が漂っている。


「風巡りの ジュン です」

短く名乗ったあと、隣に座る創太さんへと視線を向ける。

「今回は特別に、

 創太さんにも参加していただいています」


「風守りの 陽介ヨウスケ だ」

こちらは一人での参加らしい。


最後に、ナギが立ち上がった。

「風受けからは、今回は僕一人で参加しています。祖父は腰を痛めてしまって……

 本当は来たがっていたのですが、すみません」

その視線が、自然と流花へ向く。

「そして――

 こちらが、流花さんです」

言われて、流花は少し慌てて立ち上がる。


「はじめまして。流花と申します。

 こちらに来て、まだ一ヶ月ほどですが……

 どうぞ、よろしくお願いいたします」

深く頭を下げると、

すぐに治さんがやわらかく笑った。


「いやいや、そんなにかしこまらなくて大丈夫ですよ」

「事情は、皆わかっていますから」

その一言に、少しだけ肩の力が抜ける。

治さんは、改めて流花の方を見て、静かに言った。


「まずは――

 ようこそ、風街へ」

「あなたが望んでこちらに来たのではないことは、私たちは理解しています。ですが、流れてきた以上、ここにいる間は心から歓迎します」

その言葉を受けて、

創太さんが、ゆっくりと口を開いた。


「……同じ立場の人間としてな」

「ワシから、少し話をさせてもらってもいいかな」

室内の全員が、静かにうなずく。


「まずな、ワシがこちらに来たのは――

 四十五年ほど前になる」

流花は、はっとして創太さんを見る。


「そして、流花さんに

 一番最初に知ってもらいたいことがある」

創太さんは、一拍置いてから続けた。


「この場所――風街ができたのは、

 外の世界で言えば、一九八〇年だ」


(……え?)

流花の中で、何かが噛み合わない音を立てる。

一九八〇年。

それは、およそ 四十年前 のはずだ。

でも――

創太さんは「四十五年前に来た」と言った。

(合わない……)


その戸惑いを察したように、

創太さんは静かに頷いた。

「そう。

 ここではな――

 時間の流れが違う」

「この世界での 一年 は、

 外の世界では 一ヶ月 しか経たない」



会議室が、しんと静まり返る。

「だからな……

 風街ができてから、この世界では

 約四百八十年 が経っている」

四百八十年。

その数字が、流花の胸に重く落ちる。


「ワシが来た四十五年前、というのも

 この世界での話だ」

「外では……

 せいぜい 三年と九ヶ月ほど前 になる」

(じゃあ……)

流花は、ゆっくりと自分の状況を当てはめる。

自分は、この世界に来て一ヶ月。

ということは――

(向こうでは……)

「……二、三日しか経ってない、ってこと?」

思わず零れた言葉に、

創太さんは静かに頷いた。


「そういうことだ」


その事実は、

流花の足元から世界をひっくり返すほどの衝撃だった。

ここから先、

この世界の核心に入っていきます。

流花にとっても、

「ここにいる」という選択が、

もう曖昧ではいられなくなる段階です。

次回、倉庫番一族会議はさらに深くなります。

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