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この世界は、小さく静かでちょうどいい~小さな体ではじまる異世界転移〜  作者: ウラン
第3章《風読みの街で》

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第54話 中央の風

風読みの駅に近づくにつれ、建物の数が一気に増えてきた。

低く連なっていた街並みが、少しずつ背を伸ばしていく。


電車が減速し、ホームに滑り込む。


降りた瞬間、流花は小さく息をのんだ。

人が、多い。

これまでの街とは明らかに違う賑わいだった。


行き交う人の数も、話し声の重なり方も、どこか都会のそれに近い。


「ここはエントランス広場だよ」

ナギの言葉に、はっとする。


視線を上げると、広場の中央に大きな駅舎が建っていた。


かつては噴水があったのだろうか。

その名残を思わせる円形の空間と、広く取られた通路。


駅の中も、整然としていて美しい。

柱や床は古さを感じさせるのに、手入れが行き届いていて、どこか誇らしげだった。


「ちょっと、人と待ち合わせしてるから」

そう言って、ナギが歩き出す。


流花は慌ててその後を追った。


広場の中心には、大きな時計台が立っていた。

針は、出発してからおよそ一時間を指している。

その周囲には、まるでアミューズメントパークのような建物が並び、

可愛らしい商店が所狭しと軒を連ねていた。


きょろきょろと見回していると、

「おーい!」

と、遠くから声が飛んできた。


走ってくる一人の青年。

「おー! ツカサ!」 「一ヶ月ぶりだな」

ナギが手を上げる。


近づいてきたその人は、端正な顔立ちで、少し長めの髪を揺らしていた。

——ヒロさんの息子?


思わずそう考えてしまうほど、整った容姿だった。


「あ、はじめまして」 「流花ちゃんだよね」

にこっと笑って、自然に言う。

「母さんの手紙で聞いてたけど、ずいぶん可愛らしい人だ!」


「おい!」 「会って二秒で口説いてんじゃねぇ」


ナギが即座に突っ込む。

「違う違う、挨拶だって(笑)」

三人で笑いながら、歩き出す。


「会議は明日からだから、今日はまず宿に行って、それから街を見て回ろう」

ナギが、流花を気遣うように言った。


「今回の会議は、食料が議題らしいぞ」

「研究所所長も、風巡りから来るってさ」

「今年の米はどうなんだ?」

そんな話を、二人は自然に交わしている。


流花は、少し後ろを歩きながら、周囲を見渡した。

——遊園地。

そう思えば、すべてが腑に落ちる。

けれど、それにしても。

こんなに発展しているなんて。

閉館から、せいぜい四十年ほどのはずなのに。

それなのに「何世代も前」という言葉が、ずっと引っかかっている。


——この世界では、時間が違う?

——それとも、人の生き方が違う?

考え込んでいると、


「流花ちゃん、どう?」

ツカサが振り向いた。

「結構、都会でしょ」

「あ……はい」

「こんなにだとは、思ってませんでした」

返事をしながら、流花は周囲の空気を吸い込む。


威勢のいい呼び声。

どこからか漂ってくる、香ばしい匂い。

「この辺は商店街」

「宿は、あそこだよ」

指差された先には、大きくて立派な

日本旅館が建っていた。


「すごい……」

「はじまりの人たちが、かなりこだわって作ったらしいよ」 「それをずっと、改良し続けてる」

ツカサが続ける。

「まあ、会議のときくらいしか満室にならないけどね」


そうか、と流花は思う。

風受けから一時間。

思っていたより、ずっと近い。

「みんな、日帰りでも来られる距離だよね」

「だね(笑)」

ナギが笑う。


「でも会議は一週間あるから」

「夜に会食もあるし、ここが一番便利なんだ」

「会議も、ここでやるんですか?」

流花が聞くと、ナギは首を振った。


「いや、会議は——あそこ」

通りの反対側を指差す。

そこにあったのは。


——入場門だった。


ついに、物語の中心

風読みの街に到着しました。

賑やかで、少し懐かしくて、

でも確実に“何かが始まる場所”。

次はいよいよ、

この世界の核心に近づく時間です。

中央の風が、何を運んでくるのか。

一緒に見ていけたら嬉しいです。

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