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この世界は、小さく静かでちょうどいい~小さな体ではじまる異世界転移〜  作者: ウラン
第3章《風読みの街で》

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第50話 出発

朝の空気は、少しひんやりしていた。


店の裏口を出ると、まだ人通りは少なくて、

街全体が目を覚ましきっていない感じがする。


流花は、借りた藤色のトランクを足元に置いた。

昨夜、何度も開けては閉めて、結局ほとんど変わらなかった中身。


服と、少しのお金と、もらった靴。

それだけなのに、不思議と重く感じる。


「忘れ物、ない?」

キヨが声をかける。

「うん、大丈夫」


そう答えた流花に、キヨは一歩近づいて、

はい、と小さな封筒を差し出した。

「これ」

「……え?」

「早いけど、今月分のお給料」

思わず封筒を見つめる。


「何があるかわからないでしょ」

「欲しいものもあるかもしれないし」

「だから、ちゃんと持っていきなさい」

少し強めの口調なのに、目はやさしい。


「ありがとうございます……」

封筒を受け取りながら、胸の奥がじんわりあたたかくなる。


ヒロは少し離れたところで腕を組んでいた。

「なんかうまいもんでも食え」

「……はい」

「親父が来てたら顔出すように言っといてくれ」

ぶっきらぼうな声に、キヨが小さく笑う。


そこへ、足音がしてナギが現れた。

「おはよう」

「おはようございます」

「ナギ、流花をくれぐれもよろしくね」

キヨが言う

「はい!安全に連れて帰ります」


「ナギ、わかってるな」

とヒロさんがニヤッと笑いながら言う

「もぉ、ヒロさん」とナギも笑っている


「じゃあ、行こうか」

「行ってきま~す」

「楽しんでおいで」


トランクを引いて歩き出す。

商店街の裏手を抜けて、

少し静かな通りに入る。


「この先が住宅街の入り口でね」

ナギが言う。

「駅は、そのすぐ先」

建物の間から、低い屋根が見えてきた。

「……あれ?」

「まだ来てないね」

駅前は静かで、何人か人が待っているようだ。

線路の向こうも、動く気配はない。


「時間は、わりとゆっくりなんだ」

なるほど、と流花は頷く。


小さな駅。

小さな電車。

でも、ここから街を越えていく。

トランクの取っ手を握り直しながら、流花は思った。


電車が来るまで、もう少しだけ、この街に立っていよう。

胸の奥が、そわそわと落ち着かない。

知らない街へ向かう高鳴りと、

ナギと二人で出かけることへの、少し照れくさい気持ち。

楽しみと不安が、うまく混ざり合って、

今はどちらも手放したくなかった。


流花は、藤色のトランクにそっと手を置きながら、

やってくる電車を、静かに待った。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

3章スタート、いよいよ旅が始まります。

少し景色が変わって、少し世界が広がっていきます。

引き続き、お付き合いいただけたら嬉しいです

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