第27話 使えそうなもの大きすぎるもの
倉庫番会議の話は、いったん胸の奥にしまうことにした。
考え始めると、きっと止まらなくなる。
「……私も、何か探してみようかな」
そう言って、流花はレジ台を降りて棚の間へ歩き出した。
最初に目に入ったのは、硝子の食器が並ぶ一角だった。
高い棚に、透明な器がずらりと並んでいる。
階段を上って、近くまで行ってみる。
「……大きい」
思わず声が漏れた。
カップは、流花の背丈より大きい
器のはしに手をかければ、そのまま中に座れそうだ。
「これ、完全にバスタブだよね」
笑いながら見回す。
どれも古びて見えるけれど、
欠けてもいないし、曇りもない。
「全部新品だけど、昔のデザインだなぁ」
時間だけが、ここを通り過ぎていったみたいだった。
次に足を向けたのは、おもちゃが並ぶ棚。
箱に入ったままのものが、きちんと積まれている。
「……人形遊びのセットかな」
絵柄は少し色褪せているけれど、
パッケージそのままだった。
その中に、流花と同じくらいの大きさのソフビ人形のセットを見つけた。
ビニール越しに見える表情は、どこかぼんやりしている。
足元に、赤いプラスチックのバッグがあった。
ヨイショって言ってパッケージを開いてみる。
持ち上げてみる。
「……開かない」
おもちゃだから、飾りだけらしい。
「かわいいのに、使えないな」
そう呟きながら戻そうとして、
隣に並んでいたものに目が止まった。
小さな櫛。
人形用だろうけれど、形はしっかりしている。
色は、少しくすんだピンク。
でも、歯は一本も欠けていない。
手に取ってみる。
「……これは、使えそう」
「それ、持っていく?」
ナギの声がした。
「いいの?」
流花が振り返る。
「いいよ」
「ここにあるものは、とれでも持っていっていいルールなんだ」
「古く見えるけど、全部新品だしね」
「使うなら、その方がいいでしょ」
「ありがとう」
櫛を大事にしまい、棚を見直す。
今度は、透明な箱に入ったたくさんのビーズが目に入った。
赤、青、緑、白。
光を受けて、静かに輝いている。
「……これも」
「沙羅に持っていったら、喜ぶかな」
少し考えてから、
「何個か、持っていこう」
と決めた。
倉庫の奥では、モクレンとタケトが立ち止まっていた。
おもちゃの車が並ぶ棚の前。
「これ、使えるんじゃない?」
モクレンが言う。
「うーん……」
タケトが腕を組む。
「プラスチックだと、強度が足りないかも」
「じゃあ、こっちは?」
「これ持っていって、仕組みに組み込めない?」
二人は図面を広げ、
売り物だったはずの部品を、もう“素材”として見ている。
まだ、時間はかかりそうだった。
流花は、倉庫を見渡す。
新品のまま、誰にも使われなかったもの。
でも、今なら——。
「……もう少し、探してみたいな」
流花は、倉庫をもう一度見渡した。
まだ、見ていない棚がいくつもある。
まだ、触れていない箱も、階段も。
「……よーし!」
そう呟いて、ナギの方を見る。
「もう少し、探検してもいい?」
ナギは、笑って頷いた。
倉庫の中には、
まだまだ、知らないものが眠っている。
倉庫の中、まだまだ奥があります。
少しずつ、触れられるものが増えてきました。
探検は、もう少し続きます。
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