第25話 倉庫の奥
倉庫は、遠くから見ても大きかった。
近づくほどに、その大きさが現実味を帯びてくる。
正面の扉は、町の家々とは比べものにならないほど高く、幅もある。
そしてすごく高い位置にドアノブが見える
その扉の脇に、もうひとつ——
人が出入りするための、少し大きめの扉があった。
ナギが鍵を取り出して、手慣れた様子で回す。
かちり、と小さな音がして、扉が開いた。
中に入ると、ひんやりとした空気が流れ込んできた。
壁に沿って、いくつもの梯子と階段が並んでいる。
「ものがある場所までは高過ぎてね」
ナギが言う。
「全部、梯子をかけてあるんだ」
見上げると、どれも高すぎて、そのままではとても登れそうにない。
「モクレンたちは、木材がほしいんだっけ?」
ナギが振り返って聞いた。
「うーん、決めてない」
モクレンが肩をすくめる。
「何か使えるものがあれば、って感じかな」
「じゃあ、一通り見て回ろう」
モクレンとタケトは、並んで奥の方へ歩いていく。
何やら楽しそうに、指を差しながら話していた。
流花は、ナギの後について進む。
倉庫の中は、とにかく広い。
どこもかしこも、流花の身体には大きすぎた。
少し歩いたところで、ナギがふと足を止める。
流花を見る。
「流花ちゃんは、大きい人だったんでしょ」
「ここ、何だったかわかる?」
流花は、首を振った。
「大きすぎて……」
「正直、よくわからない」
ナギは小さく笑った。
「じゃあ、こっち」
奥へ、奥へと進んでいく。
倉庫の一番端に、ひときわ目立つ場所があった。
色あせてはいるけれど、赤や青や黄色が残る、カラフルな壁。
その壁に沿って、階段が続いている。
一段ずつ、上っていく。
最上段に辿り着いた先にあったのは——
古いレジだった。
少し角ばった形。
今ではあまり見かけない、どこか懐かしい機械。
流花は、はっとして振り返る。
倉庫全体が、視界に入る。
整然としていない。
でも、無秩序でもない。
ところどころに、
おもちゃ。
置物。
キーホルダー。
洋服。
食器。
色あせたお菓子の包み紙。
「……お店」
流花が、ぽつりと言う。
「正解」
ナギが頷いた。
「ここは、お土産屋だったところだよ」
確かに。
スーパーみたいな大きな売り場じゃない。
でも、色が多い。
「何世代も前からね、使えるものを少しずつ持ち出して」
「それで、町が作られてきた」
「もちろん、ここだけのものでは町は作れないから他からもたくさん持ってきてるけどね」
視線を向けると、
モクレンとタケトが、おもちゃが積まれた一角で話し込んでいた。
何かを測るように、比べるように。
「なにか欲しいものあった?」
ナギに言われてもう一度眺めてみる
流花の目には、どれも大きすぎる。
持ち上げることも、
使い道を想像することも、
まだできない。
ただ、ここが——
“誰の場所だったか”
それだけははっきりとわかった。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
倉庫の正体、少しだけ輪郭が見えてきました。
次は、
「じゃあ、何をどう使うのか」
そんな話になっていく予定です。
また続きを読んでもらえたら嬉しいです。




