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第24話 休日の朝

今日は、早起きしなくていい日なのに、

いつもの時間に目が覚めた。


天井を見上げて、少しだけ瞬きをする。

体が、もうこの生活のリズムを覚え始めている。


窓辺に干しておいた服は、すっかり乾いていた。

風が通るこの場所では、一晩あれば十分らしい。

青い服に袖を通して、階段を下りる。


店の奥から、コーヒーの香りが漂ってきた。

「おはよう」

キヨが、湯気の立つカップを差し出してくれる。

ヒロは、いつもの席で新聞を広げていた。


新聞。


思わず、視線がそちらに向く。

「週に一回、中央から届くのよ」

キヨが言う。


読んだら、この世界のこと、少しわかるかも


「……帰ったら、読ませてもらってもいいですか?」

「もちろん」


そんなやり取りをしていると、

戸を叩く音がした。


「おはよー」

入ってきたのは、モクレンとタケトだった。

「迎えに来たよ」

「倉庫、行こ」


外に出ると、空気が澄んでいる。

休みの日の朝は、町全体が少し静かに思えた。


歩きながら、話が弾む。

「ナギさ、倉庫番継いだばっかなんだよ」

「え、そうなんですか?」

「うん。つい最近」

「おじいちゃんが引退してさ」


タケトが、少し先を歩きながら振り返る。

「倉庫番は世襲だからね 準備はしてたみたいだけど」

流花は、ナギの顔を思い浮かべた。


穏やかで、

どこか余裕のある話し方。


「そんな大事な仕事を……」

「大事だよ」 モクレンが、さらっと言う。


「倉庫はね、町の要だから」

その言葉に、流花は黙って頷いた。


モクレンが言う。

「大変そうだけど、楽しそうでもある」


少し歩くと、

道の両脇に、背の高い草が増えてくる。


「実はさ」 タケトが続ける。

「今、風車小屋を設計してて」

「風車?」

「うん。水をくみ上げる用の」

「材料、いいのがあれば倉庫にあるかもって」

「でね」 モクレンが、ちらっと流花を見る。


「流花ちゃんの部屋にも使えそうなの、あるかもしれないでしょ」

「あ……」

「だから、倉庫行こうって言ったの」

「ついで、ついで」

ついで、という言い方が、

やさしかった。

誘われた理由を聞いて、胸の奥が少しあたたかくなる。


道を進むにつれて、

前方に、大きな影が見えてきた。


建物だ。

近づくほどに、その大きさがはっきりしてくる。

屋根は高く、

壁は長い。


「……ほんとに、大きい」

思わず零れた声に、

モクレンがくすっと笑う。


でも、流花はそのまま立ち止まった。


町の家々とは、つくりが違う。

扉の位置は、

今の自分の目線より、ずっと上にある。

取っ手まで、手を伸ばしても届かない。

柱の間隔は広く、

歩幅をいくつも重ねないと、反対側に着かない。


最初から、

小さな人が使う前提で作られていない。


流花は、何も言わずに息を吐いた。

「……ほんとに、大きいんだ」


入口の前に、人影がひとつ。

「おーい」

手を振る声。

「おはよう」

ナギが、そこに立っていた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

少しずつ、この世界の輪郭が見え始めました。

次回はいよいよ「倉庫」の中へ。

流花にとっても、この世界にとっても、大事な場所です。

また続きを読んでもらえたら嬉しいです。

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