表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/16

第14話「夜の仕込み」

「じゃあ、米ついてから炊いてもらえるか」

ご主人が、そう言って振り返った。


「……つく?」

流花は思わず聞き返す。


「うん。夜は量も出るからな」

言われて、米袋の中を覗く。


一粒一粒が、自分の指先と同じくらいある。

白くて、つやつやしていて、やけに存在感がある。

(……あ、そうか)

ここでは、そのまま炊かない。


臼のそばには、砕かれた米が用意されていた。

粒を小さくしてから、水に浸して、炊く。


「なるほど……」

思わず声が漏れる。


「夜は居酒屋になるからね」

女将さんが、棚を指さした。


「お酒も出すよ」

棚の奥には、大きな樽が並んでいる。


流花の胴より、少し高いくらい。

「普段のは、あれ」

「高いお酒はね」

「瓶入りなんだよ」

そう言って、女将さんは小さなガラス瓶を見せた。

中身より、瓶のほうが高そうに見える。


「流花ちゃん」

ご主人が声をかける。

「マヨネーズ、作れるか?」


一瞬、頭に「ブレンダー」「ミキサー」という言葉が浮かぶ。

(……ないよね)


答えに迷っていると、

「混ぜるの、大変だからさ」

「一緒に作ろう」

横から声がした。

昼間はほとんど話せなかった、見習いの男の子だった。

「昼は忙しくてさ」

「自己紹介、してなかったよね」

そう言って、にこっと笑う。

「僕は蓮」

「ここで働いて、二年になる」

「よろしく」


「……流花です。よろしく」

握った泡立て器は、思ったより重い。


でも、隣で一緒に回してくれる手がある。

卵を割って、油を少しずつ足して、

腕がだるくなる頃、ようやく白くなってくる。


「よし!出来た」

蓮が言う。

流花は頷いた。


昼とは違う、夜の仕込み。

音も、匂いも、手順も、少しずつ変わっていく。

ここは、夜もちゃんと動いている。

流花は、泡立て器を回しながら思った。

――この町は、

ちゃんと、この大きさで、生きている。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

夜の仕込みは、昼とは少し違う空気で進んでいきます。

道具も、作り方も、この町の大きさに合わせたもの。

次回は、夜の店が本格的に動きはじめます。

また少しずつ、流花の居場所が増えていく予定です。

よければ、続きをお付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ