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第1話「風受けの地の外れで」

※この物語は、転生した主人公が、

 小さな世界で暮らしながら、

 日々の生活を少しずつ整えていくお話です。

 戦いや無双は控えめで、日常が中心になります。

 初投稿なのでゆっくり書いていこうと思います

目が覚めた瞬間、流花は状況を理解できなかった。


視界が近い。

近すぎる。


顔のすぐ横に苔がある。しかもやたら大きい。

寝転んだまま手を伸ばすと、指先がすぐ地面に触れた。


「……え?」

声が出たのは、そのあとだった。


体を起こそうとして、派手によろける。

立ち上がろうとして、またバランスを崩した。

「ちょ、待って……」

足が短い。

手も小さい。

というか、全部が小さい。


「……うそでしょ」

深呼吸を一回。

二回。

夢だと思おうとして、苔をつまんだ。


感触はしっかりしていて、現実味しかない。

「……小さくなってる」

心臓がどきどきして、思わずしゃがみ込んだ。

さすがに、平然としてはいられなかった。

周囲を見渡す。


森だ。

ただし、自然だけの森じゃない。

地面に半分埋もれた板。

錆びた金属。

意味の分からない曲線の壁。

作られたものが、長い時間をかけて森に飲み込まれているかんじ。


「……ここ、誰かの生活圏だよね」

そう思った瞬間、声がした。

「そっち、踏むと滑るよー」

びくっとして振り向く。

そこにいたのは、小さな人だった。

流花と同じくらいの背丈。

背中には籠、手には布包み。

服はちゃんと仕立ててあって、使い込まれている。

「あ、ご、ごめんなさい!」

反射で謝っていた。

「初めて見る顔だね」

「え、あ……たぶん、今日来ました」

「そりゃ驚くよね」

小さな人は、あっさり笑った。

「ここ、風受けの地の外れだからさ。

通り道は踏み固めてあるけど、端は滑りやすいんだ」

「……風受けの地」

「この辺一帯の呼び名。

俺はナギ」

そう言って、布包みを広げる。

中には、焼き色のついた平たい餅のようなものが並んでいた。

「それ、食べ物?」

「主食だよ。風練り餅」

さらっと出てきた名前に、流花は少し驚いた。

「ちゃんと火、使うんですね」

「そりゃ使うよ。各家に火床あるし」


文明、あるな。

思わず、そんなことを考える。

ナギは餅を一つ割って、かじった。

「……うーん。今日はちょっと重い」

その言葉を聞いた瞬間、流花の中で何かが引っかかった。

見た目は悪くない。

焼きも足りている。

でも――。

「……それ、今日には合ってない気がします」

言ってから、自分でも驚いた。

「え?」

「今日は風が弱いから、湿りが残りやすいというか……」

ナギは一瞬きょとんとして、それから餅を見た。

「……言われてみれば、確かに」

少し考えてから、にやっと笑う。


「じゃあ、焼き直す?」

「火、借りられますか」

「いいよ。外れだけど、空き家の火床ある」


案内された場所には、低い石組みのコンロがあった。

炭も、火打ちも、きちんと揃っている。

流花はしゃがみ込み、餅を薄く切った。

少し広げて、火から距離を取る。

焦がさず、水分だけ飛ばす。

自分でも不思議なくらい、手が迷わなかった。


「……慣れてるね」

「……たぶん」

焼き上がった餅は、さっきより軽い。

ナギが食べる。

「……あ」

「どうですか」

「楽。

腹に残らないのに、足りてる」


周りにいた小さな人たちも、少しずつ集まってきた。

誰も大騒ぎはしない。

ただ、自然に分け合う。


「名前、なんていうの?」

ナギが聞いた。

流花は一瞬だけ迷ってから答えた。


「……流花です」

「流花か。いい名前」


そう言って、ナギは餅をもう一口かじった。


「この辺、住む場所探してるならさ、

外れだけど、空いてるとこあるよ」


風が通る。

さっきより、少し心地いい。



ここが何だった場所かは、まだ分からない。

でも――

火があって、

ごはんがあって、

ちゃんと暮らしがある。

流花は、少しだけ息を吐いた。

これなら


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

このお話は、小さな世界での暮らしや、

食べること・整えることを大切にした物語です。

まだ始まったばかりですが、

これから少しずつ、世界のことや人(小さな人)たちの生活が見えてくる予定です。

のんびりしたペースになりますが、

よろしければ引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

次回も、どうぞよろしくお願いします。

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