2・渡来人
目が覚めた。
身体が動くか確認する。
どこも問題はないようだ。
痛みもない。
ゆっくり立ち上がる。
持っていた刀やリュックは見当たら無い。
胸元を見る。
首から下げていた3カラットのスフィーンのネックレスは無事で安心した。
大事な妻の形見なので失う訳には行かない。
周辺を見渡すと白い鳥居が見える。
(・・・ここは?)
神社の中庭らしき場所に立っていた。
庭に大岩がある。
その脇から男が首を出しこちらを見た。
「守護様!お見えになりました!」
「よし!お迎えする!」
俺の前に40代ぐらいと思われる男と役人風の男達。
そしてその後ろには西洋風の甲冑に身を包んだ兵士が現れた。
「ええっと・・・こんにちは?」
とりあえず挨拶してみた。
「渡来人殿、お越し頂き嬉しく思います。この南の守護、心より感謝致します」」
「渡来人?」
よくわからないが、何かに巻き込まれた事は分かった・・・
洋風の馬車に乗り、体感で30分ぐらい馬車に揺られ町に入る。
そこからしばらくして屋敷に着いた。
プレートメイルを着ているから洋風の城かと思っていたら純和風の屋敷だった。
(さてさて、どういう事だろうか)
ここ数年面白い事が無かった八代は、この緊急事態を少し楽しんでいた。
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「・・・なるほど」
2時間にも及ぶ話に所々質問した結果、全体が掴めて来た。
中央の霊山である不二山を起点に、東西南北に4つの大国がある。
東の日昇本ノ国・西の夕陽ノ国・南の山南州国・北の北陸宝来国。
ただ守護様と呼ばれる国のトップが変わると国名が変わるので、人々は東の国・西の国・南の国・北の国っと呼んでいるそうだ。
(・・・そりゃそうだ)
その周りにもいくつかの小さい国がある。
昔は争っていたが今は折り合いが付いて、お互いそこそこ上手くやっているらしい。
こちらの国もそれぞれ国名はあるが、やはりコロコロ変わる為、北西・南西・北東・南東・東の先・・・などと呼ばれている。
12年前、東の国に接する場所で9人の渡来人が現れた。
昔から何十年か事に渡来人は流れ着き、その独自の知識で国に繁栄をもたらしていたが、さすがに今回の9人と言うのは多かった。
東の国は狂喜乱舞し国を挙げて熱烈歓迎をした。
3年後にその9人が東の国の守護様と呼ばれるトップを殺し国を簒奪した・・・
9人は軍備を整え軍事国家を作った。
そのあとは裏の世界のトップを問答無用て次々に処刑した。
そして歓楽街を作り裏社会も手に入れた。
最近は周りの国を侵略し始めたそうだ。
(・・・古典的な大陸国家の行動だな)
今支配している場所の安全地帯が欲しいから周りの町や国を侵略する。
そして侵略した場所の安全地帯が欲しいから、その隣の土地を新略する・・・
キリが無く永遠に侵略が続く行動のパターンだ。
「西の国は鍛治が盛んでしてとても良い武器が生産されています。北の国はとにかく色々な薬が作られています。この二つの国が狙われてますが先日、同盟を組んだので東の国もそうそう手出し出来ないと思います」
「南の国は?」
「お恥ずかしい事にあまりこれと言った物が無く、ただ領地が広いだけてして・・・」
「基幹産業は何でしょう?」
「ほぼ農業です。もういくらか獲れれば飢える者も減るのですが・・・」
(そもそも生産性が悪いのか。もう少し生産性を上げ無いといつまで経っても経済基盤が出来ないな)
「ちょっと農地を見学させてくれますか?」
「渡来人様は農業にお詳しいのですか?」
「はははっ、そうですねぇ、いささか覚えてがあります」
(向こうの世界では市の農業試験場勤務だったから、まぁこのレベルの素人よりましだろう)
『おぉぉーー!!』
「渡来人殿!それは我が国にとって非常に、ひじょーーに!ありがたいですぞ!」
「あ、私の事は尾上一斗と呼んでください」
「分かりました一斗殿!では宜しくお願い致す」
「はいはい任されました」
(老い先短い身だ、此処を終の住処にするのも良いかも知れんな)
「では参りましょう一斗殿!」
「はい、出かけましょう!」
てて五斗、はは五斗・五斗と五斗〜♩
五斗と五斗なら一刻だ♫
すりゃ、一刻橋で待てば良い〜♫
色々吹っ切れて気分も乗って来た!




