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手を汚した聖女は、敵国へと捨てられる

作者: 椎名正

 敗北が決定した王国につきつけられた停戦条件は、聖女を差し出すことだった。

 王国の暴君王は、その条件を喜んで受け入れる。

 「貴様は、この戦争が終わったらこの手で始末してやるつもりだったが、代わりに帝国がやってくれるそうだ」

 あざ笑う暴君王に対して、拘束された聖女は表情をなくして返答しない。

 「帝国の王子を貴様が殺したことは、帝国に知れ渡っている。貴様が帝国に行けば、熱烈な歓迎をされるだろうな。腕を生きたままもがれるか、素っ裸で帝国中を引き回されるか。まあ、そんな歓迎は序の口だろう」


 聖女は帝国に引き渡された。

 そこで、聖女は「歓迎」を受ける。

 さまざまな「歓迎」がされる。

 帝国民が思いつく「歓迎」は全て実行された。


 そして半年後、聖女が死んだと王国に短い知らせが届いた。



 一年前。

 父親と兄ふたりを暗殺して実権を握った暴君王は、同盟国だった帝国に牙をむいた。

 まず王国にいる帝国の王子を人質にすることを、聖女に命令する。

 逃げられないように王子の足を斬れとつけくわえる。

 「王子、私に従ってください」

 帝国の八歳の王子は、姉のように慕っていた聖女の言葉に、信じたくないと首を横に振る。

 「どうして、こんなことを?」

 「暴君王に逆らえば私が殺されます。だから、私のためにおとなしく人質になって、足を斬りとられてください」

 三人いる護衛の帝国兵士が剣を抜くが、聖女が引き連れてきた王国兵士三十人がその周りを取り囲む。

 もし聖女が情に流され王子を逃がそうとしたら容赦なく殺せと、その王国兵士達は暴君王に命令されていた。

 「王子。よく聞いてください。私が使う魔法のことは良く知ってますね。私の魔法は完全消滅。もし王子が逃げようとしたら、この魔法を王子に使わなくてはいけなくなります」

 聖女は繰り返す。

 「絶対に逃げようとしないでください。もし、王子が逃げたら、私はこの魔法を王子に使わなくてはいけなくなります」

 王子は走り出す。

 「逃げるな!」

 聖女の魔法が発動し、あっけなく王子の身体が消える。

 「くそがきが!あれだけ動くなって警告したのに!私はこれで人殺しだ!」

 王子が聖女の手にかかったことを知り、護衛達は激怒する。

 「貴様、王子を」

 「うるさい!うるさい!うるさい!」

 護衛達を次々と消していく聖女。

 「私は悪くない。悪くない。そうだよ。悪いのは帝国のがきなんだ。これは人殺しじゃない。帝国人は人じゃない。だから、これは人殺しじゃない」


 帝国の幼い王子を人質にとることに失敗した暴君王は、聖女に対して激怒する。

 そして、聖女を処刑人にする。

 王国内にいた帝国人は捕えられ、聖女の元へ連行されていく。

 流れ作業で、聖女は帝国人を王国から消し去っていく。

 「消滅」

 聖女の発動する魔法で、簡単に帝国の人間が消えていく。

 「抵抗するな。抵抗したら、私以外の兵士がお前らをむごたらしく殺す。私の手にかかれば苦痛なく死ねる。抵抗したら、お前ではなくお前の仲間が拷問される」

 「悪魔め」

 「消滅」

 「せめて子供達だけでも助けてください」

 「消滅」

 「お母さん!」

 「消滅」




 そして、一年後。

 聖女は、帝国に差し出される。

 帝国の王妃は、やってきた聖女を見て言葉に詰まる。

 「あなたが、私の息子を・・・」

 聖女が到着する前から王座から降りていた王妃は、聖女の手をとり深々と頭を下げ、感謝の言葉を口に出す。

 「本当にありがとうございます」

 聖女の拘束は、すでに解かれていた。

 ここにくるまでに出会った帝国の人間すべてに感謝の言葉を伝えられていた。

 「さっそく歓迎会をさせていただきます」

 最高級の部屋に案内され、用意できる限りの贅沢な料理が聖女のために並べられていた。

 「他に何か食べたいものがあれば、すぐにご用意させていただきます」

 「あのう。私の亡命の件なのですが」

 「はい。聖女様に助けられた者からの伝言は聞いております。王国には半年ぐらいで死んだことにするですね。もちろん対応させていただきます。それで、聖女様、帝国は王族をまるごと入れ替える予定ですが、暴君王と名乗る愚か者の処罰はいかように望みますか?」

 「それは私には関りがないことです」

 「では、息子を殺されかけた私が、勝手に決めさせてもらいますね」

 帝国の王妃は残忍な顔をする。



 まだ平和だった時の、聖女と帝国の王子の会話。

 「え?聖女のお姉ちゃん、本当は消滅魔法使えないの?」

 「内緒ですよ。消滅とか言って誤魔化しているだけなんです。私、アマチュア演劇団に所属しているので、演技には自信あるんですよ」

 「でも、僕の前で、大きな岩を消して見せたじゃない」

 「あれはざっくり言うと転送魔法です」


   おわり


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