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イタチの短編小説

東京エナジードリンク

作者: 板近 代

 私の恋人が、寝る前だというのに冷蔵庫からエナジードリンクを出してきやがった。


「マジかよおまえ」

「マジの大マジよ。今の私には、ソファからベッドに移動して眠りにつこうとするためのエナジーが必要なんです」

「百歩譲って移動のためのエナジーはわからんでもないが、眠りにつくのにエナジーはいらんだろ」

「追加で、五万歩くらい譲ってくれない?」

「それでもわからん」


 明日は早起きしてデートにいく約束だろう。だから、久方ぶりのお泊りにも関わらず酒も飲まずにパジャマを着たんじゃないか。


「君と会えなかった三ヶ月の間に、睡眠絡みの病を患ってしまってね」

「なら、なおさらエナジードリンクはいかんだろう」

「そうもいかんのですよ。こいつを飲まずに寝ると、悪夢にうなされて早起きできない」


 恋人は口にオレンジ色の錠剤を四つ放り込む。睡眠薬…………だろうか? なんにせよ、エナジードリンクで薬を飲んじゃだめだろう。


「半分飲む?」

「飲むかバカ。それに、私が半分とってしまったら、半分は悪い夢を見るんだろう?」

「んー、どうかな。今晩は君がいますし」


 ゴクゴクと飲み干される、糖分とあれやこれやの成分が詰め込まれた液体。はぁ、こんなふうになるなら、無理してでも顔を出すべきだった。


「飲み終わったか?」

「はい」

「ベッドはいるぞ」

「はい」


 久しぶりのベッドは、相変わらずシングルだ。


「狭いなぁ」

「狭いね。明日ダブルベッド買っちゃう?」

「このくそせまいワンルームに置くつもりか?」

「いっそ引っ越しちゃう?」

「いつまで名古屋気分でいるんだ? ここは東京だぞ」


 いっそ二人で地元に戻……いや、この話は今するべきではない。


「明日不動産屋さんいこうよ」

「家探しデートは貯金できてからな。さて、電気消してもいいか?」

「いつでも」


 暗くなると、パジャマがひきつった。恋人が、強く握ったから。


「どうした」

「愛してます」

「私も愛してる。大丈夫だ」


 私はゴロンと転がり、恋人のいるほうを向いた。


「先に、眠らないでほしい」

「わかった。まあ、おまえが寝付く前に眠くなったらエナドリでも飲むよ」

「それはだめ、寝る前に飲むのは良くないよ」


 明日はおうちデートに変更しようか。

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