11.婚約祝いにしては禍々しい贈り物に、陛下との街歩き
「そんな訳で兄上、私と一緒にオーレリアへの婚約祝いを買いに行きませんか?」
「……は?」
ようやく書類仕事を終えて、可愛い弟とゆっくり昼食を食べようと考えていたはずの陛下が、呆気にとられた顔をする。今日は渋いグレーのスーツを着ていた。一方のアルフレッド様はきりっとした顔をしていて、そんな表情が紺色のスーツによく映えている。私はアルフレッド様に褒めて貰うべく、木苺柄のフリルドレスにした。人の姿になると、大人っぽい深紅のドレスへと変わる。
(うんうん、分かりますよ? その気持ち! 陛下、アルフレッド様とゆっくりしたかったんですよね? 兄心、弟にまったく伝わっていませんけど!)
私がアルフレッド様に抱っこされたまま、得心気味に頷いていると、陛下が嫌そうな顔をした。
「分かった。そこの毛の塊の入れ知恵だろう。それに、あれがうるさいからもう婚約祝いは贈った。ここ連日、ドレスを仕立てたり本を買ったりしているだろう? あれだ。あれが婚約祝いだ、オーレリアへの」
「ですが、兄上! いくら何でも、帝王学の本が婚約祝いというのはちょっと」
「あいつ、帝王学の本まで買っているのか……。さては、嫁ぎに行くということを理解していないな?」
「ドレスを仕立てているので、理解はしているかと。でも、兄上が贈ったわけじゃないんですか?」
「あの劇薬のような妹にそんなもの、贈るわけがないだろう。まったく。無駄なことだとは思いつつも、良妻賢母になるためにという、ありきたりで退屈な本を贈っておいた」
「兄上……」
オーレリア様、将来的に夫を廃位して、女帝にでもなる気なんじゃ……? 腕に前足を置きながらぞっとしていれば、陛下がいぶかしげな顔で見てくる。
「おい、お前。どうせお前が余計なことを言ったんだろう。アルフィーに」
「決めつけるのやめて貰えませんか? それに、本当にこのままでいいんですか!? 陛下もいつか絶対に、オーレリア様にもっともっと、何かしてあげれば良かったかも~って後悔しちゃいますよ?」
「棒読みじゃないか。くだら、」
「兄上! このあと、お時間ありますよね!?」
「あるにはあるが、昼食を食べてから妻の顔を見に、」
「よし! それなら義姉上も誘って、私達と一緒に街へ出かけてみませんか?」
アルフレッド様にはここへ来る前、真剣な顔で「いいですか? 陛下はアルフレッド様に弱いんですから、勢いで押していくこと!」って言っておいた。私のアドバイスに対して「うん、分かった!」と素直に頷いたアルフレッド様を思い出し、胸がほっこりする。でも、陛下はほっこり気分から程遠いようで、半ば絶望した表情を浮かべ、自信ありげなアルフレッド様のことを見上げていた。
「行きましょう、兄上! そしてお昼は街で食べてみませんか?」
「ああ、まあ、それなら……」
「良かったですね~、アルフレッド様! 陛下のお顔から察するに、可愛いアルフィーたんとお昼ご飯だ~、わぁ~い、やったぁ~って大喜びしてますよ? 良かったでしゅねえ、陛下! ぷぷぷぷ~」
「……」
「むぎゃ!? 酷い! ペンを投げつけるだなんて!」
「兄上! ロッティに、こんなに可愛いロッティに一体なんてことをするんですか!?」
「軽くペンを投げつけただけだろう。騒ぐんじゃない、これしきのことで」
怒って「ぶうぶう!」と可愛らしく威嚇すれば、嘆かわしいと言わんばかりに頭を振って、深い溜め息を吐く。
「分かった、行こう。コリン、手が空いてる魔術師を連れてこい。一等級を二人だ」
「はい、只今」
「それから、マーガレットは連れて行かない。何かあってからでは遅いからな。あと、アルフィー? 新しくこいつの兄を雇ったんだろう? 連れて行くぞ、こいつの抑止力になるかもしれん」
「私、街では大人しくしてますよ!? 流石にリードはつけていきませんし!」
「人の姿で行こうか、ロッティ。それにお言葉ですが、シリルはその……強烈な性格をしているし、抑止力にはならないかと思います」
「なんだと? 強烈な性格?」
「はい。手段を選ばないタイプなので……それに婚約して日が浅いからか、延々と惚気話が続く場合があります。どうしますか? それでも連れて行きますか?」
「やめておこう」
「良かった! 申し訳ありません、兄上。かなり自由にさせているので、普段から。今さら注意が出来なくて……」
ふしゅふしゅと鼻を鳴らしながら、怒っている私の頭を撫でて、アルフレッド様がほっとしたように笑う。甘やかしすぎだとでも言いたいのか、陛下が剣呑に青い瞳を細めた。
「どうにもお前は甘すぎる。もう少しちゃんとするように。いいな?」
「はい、分かりました。兄上」
「もしもし、陛下? それ、ちっとも怒ってませんよ~? ふわふわな注意ですよ~? 甘いですねえ、本当に!」
「……置いて行くか、そいつは」
「いえ、ロッティも連れて行きますよ? 兄上に良いアドバイスをしてくれるかと!」
怖い、アルフレッド様。私と陛下が無邪気にじゃれあってると思ってらっしゃる……。実際、朗らかな微笑みを浮かべながら「ロッティと兄上は本当の兄妹みたいだね!」と言っていたし、私と陛下が憎まれ口を叩いていても、一向に気にしていない。でも、弟をべったべたに可愛がってるブラコン陛下は何も言えなかったみたいで、額を押さえつつ、青ざめた。
「そうだな……。さぞかし、良いアドバイスをしてくれるんだろうな? 準備して行くか」
当然のことながら、変装して行くことになった。でも、馬車から降り立った瞬間、通行人の視線が一斉に集まる。いつもの金茶色の髪は魔術で黒く染められ、地味なグレーのコートを着ているにも関わらず、女性からの熱視線が注がれている。そこへ隣に金髪碧眼であり、黒いコートを颯爽と着たアルフレッド様が立てば、余計に目立つ。私も地味なファー付きの黒いケープを選んだつもりだったんだけど、これ、地味じゃなかったかもしれない……? 派手かもしれない。とりあえず、でこぼこした石畳の上を三人で歩く。昼下がりの街は人でごった返していて、あちこちにパブや雑貨屋の看板が下がっていた。
「変装、失敗しましたね……? 陛下もアルフレッド様も目立っていますよ」
「よせ、大きな声でそれを言うな。ばれるだろ。でも、そうだな……。義妹になる訳だし、私のことはお義兄様とでも呼べ。いいな?」
「はい、分かりました。陛下」
「聞く気がまったく無いぞ、こいつ……!!」
「落ち着いてくださいよ、兄上」
「そうそう。落ち着かなきゃだめですよ~? お義兄様!」
「早くも帰りたくなってきた。さっさと選んで、昼飯を食いに行くぞ!」
「はい。でも、きちんとオーレリアへの贈り物を選んでくださいね?」
「あいつが喜ぶのは現金だろうに……」
陛下、正解! 一番オーレリア様と仲が悪い陛下が、オーレリア様のことをよく分かってらっしゃる。でも、アルフレッド様は困ったような顔をして、私の手を握り締めながら「兄上。そんなことはありませんよ」と言った。返答を聞いて眉をひそめ、怪しげな雰囲気の店へ近寄ってゆく。真っ黒に塗りたくられた柱と、煤けていて中がよく見えない窓。吊り下がった看板には“カラスの墓場”と書いてあった。よく分からなくて怖い。
なのに陛下は躊躇せず、重たい木製扉を開け、一歩足を踏み入れた。怖々と入れば、汚れた床板がぎしりと軋む。中は広々としていて、張り巡らされた木の梁には蜘蛛の巣がかかっていた。甘くて埃っぽい匂いがする。すぐ目の前には漆黒のカウンターと椅子があって、横には不思議なラベンダー色の雲に包まれた、青い球体がぽっかりと浮かんでいた。思わず目が吸い寄せられる。
「あれ? 陛下じゃないか。お忍び?」
「久しぶりだな、パーシー。妹の婚約祝いを買いに来たんだ」
「はっはっは! 見たよ、新聞で。でも、こんないかがわしい店で買ったもんなんか、はたしてお姫様は喜ぶのかねえ……」
きらりと光る銀縁メガネをかけた青年が、陽気にからからと笑う。カウンターの向こうに立ったその人はシンプルに、白いシャツの上から真っ黒のエプロンをつけていた。濁った灰色と青が混じった瞳に見つめられた瞬間、背筋がぞわっと粟立つ。よく分からない。よく分からないけど、怖い。怖いし、嫌だ……。自然とアルフレッド様を守るため、両手を広げて背中に隠す。埃をかぶったみたいな灰髪を持っているその人が「おや」と言って、眉毛を持ち上げた。
「だめだな~……。ばれちゃってるか。まぁ、いいや」
「どういう意味だ?」
「知らない方がいいよ、陛下。獣人はああいうところがあるんだ。……もしかして、お嬢ちゃんの後ろにいるのって弟のアルフレッド殿下? へえ~、あんまり似てないね」
「よく言われる。……おい、どうした? 来ないのか?」
流石の陛下もちょっと不安そうな顔をして、私を見つめてきた。一つ溜め息を吐いてから、しっかりアルフレッド様の手を握り締め、ずんずんと歩いてカウンターへ向かう。警戒している私を見て、その人が陽気に笑った。
「大丈夫だよ。大事な婚約者さんに何もしないからさ。それに、下手なことをするとほら、怖いおじさんに殺されちゃいそうだしね?」
幽霊のような白い手のひらを差し出してきて、私に見せつける。不思議に思って見下ろせば、手のひらにぼうっと、真っ赤な髑髏マークが浮かび上がってきた。思わず息を呑みこむ。隣でひゅっと、顔色が悪いアルフレッド様も息を呑み込んでいた。でも、すぐに店の出入り口を振り返る。そこには黒いコートを着た、中年男性が佇んでいた。
「ダン! これは?」
「一応、保険をかけておこうかと思いまして。どうぞご理解のほどを、アルフレッド殿下」
「しかし、これは致死性の魔術じゃないか……!!」
「ははは、信用無いから。俺。でも、心配してくださらなくとも結構ですよ? アルフレッド殿下。前からお会いしたかったのに、陛下がなかなか会わせてくださらなくてね」
ゆっくりと灰色が混じった青い瞳を細め、獲物を見るかのようにじろじろと、アルフレッド様のことを眺め回す。私が歯をむき出しにして「がうっ」と威嚇してみれば、軽く笑って引き下がっていった。
「猟犬みたいな婚約者を連れていますね? アルフレッド殿下」
「い、いや、ロッティは、私にはもったいないぐらいの、可愛らしくて優しい女性で……」
「無駄口を叩くのはよせ、パーシー。何のためにわざわざここへ来たと思っている?」
「はいはい、陛下。違法すれすれの魔術道具を買うためにやって来られたんでしょう? お好きなものをどうぞ、メニューです」
「メニューが……?」
私がメニュー表を覗き込む前に、陛下がぱっと奪い取っていった。見せる気は無いみたい。けち! ずっと立っていても仕方無いので、アルフレッド様と二人で椅子に腰かける。心配になって見てみれば、顔色悪く、胃の辺りを押さえていた。
「アルフレッド様? 大丈夫ですか?」
「うん……。ごめん。ここは、上手く言えないけど気持ち悪くなる……」
「ああ、繊細なんですね? 感受性の強い方はよくそうなるんですよ」
「それに兄上!? 私はもっとこう、ちゃんとした明るい店で嫁入り前のオーレリアが喜ぶようなものを選んで、」
「あれは無茶をする。……毒が盛られていると分かっている酒でも飲みかねん。相手を陥れるためだけにな」
「まあ、そんなところも確かにありますけど」
「面白い妹さんを持っていますねえ、陛下」
怪しい。怪しい匂いがぷんぷんする。私が睨みつけていると、パーシーがにっこり微笑み、ひらひらと手を振ってきた。アルフレッド様が眉をひそめ、私の手を握り締める。────店内は暗くて、外の喧騒が嘘のよう。埃と甘いお酒みたいな香りが全身にべたべたと、まとわりついてくるような気がした。
「それに、いまさら私がごめんねの一言と共に、オルゴールやらアクセサリーやらを贈っても、あれは鼻で笑って気持ち悪いと言うだけだろう。……それなら、精神的に落ち着くものでも贈った方がいい。味方が作れないと、立場が危うくなる」
「兄上……」
な~んだ。このブラコン陛下、何も考えてないわけじゃないんだ~。気取った表情で顎に手を添え、熱心にメニュー表を眺めていた。でも、私が見ようとすると逃げる。
「どうして見せてくれないんですか!? 私に!」
「刺激が強いから見ない方がいいよ。ああ、そうだ。婚約してるんだよね? 結婚を控えた女性におすすめのメニューだよ。あげる」
「えっ? でも……」
差し出されたメニュー表の一番上に、“邪魔な女を一晩で消す薬”と書いてあったので、すかさず受け取った。私の俊敏な動きを見て、お腹を抱えて笑っている。陛下はメニュー表を見ながらも、どこか呆れた顔をしていた。
「わっ、わ~……!! 素敵なメニューがいっぱい載ってる!」
「えっ!? ロッティ、一体どういうものが……って、隠した!? ロッティ!?」
「申し訳ありません、アルフレッド様。たとえアルフレッド様とは言えども、これは乙女の花園のようなメニュー表なので、見せることは出来ません!」
「えっ、ええええ……!?」
「男性にはこっちね。はい、どうぞ」
「あ、ああ、どうも……うわっ」
役に立つようなものがいっぱい載ってる! 特に気になるのは“婚約者の心変わりを防止するブレスレット”とか“婚約者の過去を覗く水晶玉”だけど、他にも“二人の相性を良くするハーブティー”や“婚約者に溺愛される香水”とか、気になるものはまだまだある。私が熱心にふんふんと見ていれば、隣でひっそりと、アルフレッド様が顔を隠すようにしてメニュー表を眺めていた。
「そ、それは? アルフレッド様」
「あ、ああ、うん。こ、こっちも見ない方がいいと思うよ……」
「えーっ!? 何ですか!? 気になります!」
「だめだめ、見ない方がいいからさ? お嬢ちゃん。それとアルフレッド殿下? 番号を言ってくださればお出しするので、商品名は言わなくても別にいいですよ?」
「そうか、ありがとう。助かる」
「高くつくけど、効果は抜群なんで! いや~、結婚前だし、男の悩みは尽きないですよねえ~」
「ははは……」
「ちょっ、浮気が絶対にばれないブレスレットとか、そういう邪悪なものじゃありませんよね!? ねっ!?」
私が焦って覗き込めば、いつになく素早い動きでメニュー表を持ち上げた。ああ、なんだかショック。アルフレッド様に、ここまで拒絶されるのは初めてだから……。落ち込む私を見て、アルフレッド様がぎょっとした顔をする。
「ご、ごめん。ロッティ。ええっと、たとえ君にばれなくても、君がいいよと言っても浮気したりしないし……これはその、そういうものを頼むためのメニュー表じゃないから安心して欲しい」
「ほ、本当ですか?」
「もちろん、浮気がばれないような商品も揃ってるよ」
「ほら~!!」
「ろ、ロッティ、落ち着いてくれ! 騙されないでくれ!!」
「だから、ここにアルフィーを連れて来たくなかったんだ……」
陛下がメニュー表を見ながら、ふうと溜め息を吐く。パーシーはただ、黙ってにこにこと笑っていた。得体が知れないし、店もさっきとは違ってワインのような香りが漂っている。
「でも、他国へ嫁ぐ妹に持たせるのなら俺の道具だよ。そうだろう?」
「……八十八番と九十二番にする。それから、四十七番の商品だが」
「ああ、はいはい。四十七番ね? どうかしましたか?」
「使用者への負担が知りたい。これだけの効果を持つんだ、無傷じゃいられないだろう?」
な、何が載ってあるんだろう……。ぞっとしていれば、パーシーが屈託無く笑う。
「腕一本。ただし、使いものにならなくなるのは一ヶ月だけ。どうだ? 負担を最小限に抑えたんだ」
「後遺症は?」
「若干のしびれだけ。ああ、でも、使ったやつは十日ほどでしびれが消えたと言っていたな。どうやら個人差があるみたいだ。一生残りはしないよ」
「じゃあ、それを。……あと、四番の商品も」
「ええっ? そこまで心配するぅ? 陛下って良いお兄様だねぇ」
「念には念を入れておきたい。嫁ぐのはじゃじゃ馬姫だからな」
き、気になる! でも、教えて貰えそうにはない……。私が熱心に陛下を見ていると、そーっとアルフレッド様がメニュー表を覗き込んできた。慌てて隠す。
「アルフレッド様!? その、見ちゃいましたか……!?」
「少しだけね。婚約者の居場所が分かる地図って書いてあった」
「あっ、良かった! 一番刺激が少ないところを見たんですね?」
「えっ!? あと他には一体……!?」
「私にも! 私にも見せてくださいっ! さぁ、早く!」
「えっ、ええええ……?」
アルフレッド様の腕をぐいぐい引っ張ってみれば、困ったように微笑み、私に近付いてそれを見せてくれる。近い距離に心臓が騒がしくなってきた。見てみれば、伏せたまつげが長い。触れたいと、そう思ってしまう。でも、アルフレッド様は自分がどんなに美しいかを知らない。何も気が付かず、優しい声で教えてくれた。
「このページなら見てもいいよ。その……君に見せられない部分は、夜の営みに関することばかりだったから」
「そ、そうですか……。あの、もういいです。ありがとうございます」
「えっ? どうして。もしかして怒ってる?」
間近で見る青い瞳は透き通っていて、不思議そうに瞠られている。ああ、だめだ。この間から変な感じ。必要以上に近付かれるとドキドキしてしまう。私が後ろへ下がれば、また不思議そうな顔をした。
「あ、ああああの、パーシーさんでしたっけ!? 婚約者へのときめきを消す薬ってありませんか!?」
「えっ!? ロッティ!? ごめんね、気持ち悪かったかな!? 君に見捨てられると、死ぬしかないから許して欲しいんだけど……!?」
久しぶりによわよわ発言をしながら、私の肩にすがってくる。我慢しきれずにぽんとウサギ姿に戻れば、パーシーが目を丸くして「おおっ」と声をあげた。半泣きのアルフレッド様がすかさず、私を捕まえるようにして抱き締める。
「もっ、もう帰りましょう? 兄上……。この店から今すぐ出たいです! ロッティが、ロッティが、この店の変な魔力にやられてしまったかもしれない。ここにいると嫌われる、捨てられる……!!」
「アルフィー……。しかし、昼食を一緒に食べるという約束は?」
「あっ、はい。食べに行きましょうか。贈り物も買えたみたいですし」
「じゃあ、ちょっと待っててくれ。パーシー、お前がもたもたしているせいで弟が情緒不安定になってしまった。どうしてくれる」
「ちょっと待ってくださいよ、陛下。弟に極甘なんですね? 思いもしませんでしたよ」
「……」
腕の中でぴすぴす鳴いていると、アルフレッド様が「ごめんね、ロッティ……」と言いながら頬擦りしてきた。違うんです、ごめんなさい。でも、心臓がばっくんばっくんと、騒がしくなっていて上手く言えなかった。ソファーに押し倒された時の熱が、まだ耳に残っているような気がする。パーシーがそんな私を見て、今度は無邪気に笑った。
「まあ、上手くいっていて何よりです。獣人が王家に嫁入りなんて、心配する権利も無いくせに心配してたから」
「はい?」
「ああ、ごめん。こっちの独り言。陛下? おまけで相手の嘘が一瞬で分かるイヤリングをおつけしておきますね~」
「ありがとう、頼んだ。それから、説明書もちゃんと同封しておいてくれ。あいつのことだ、悪用しかねん」
「ああ、妹さんへの抑止力で? 説明書を入れるんですね? かしこまりました~!」




