表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王弟殿下はウサギ令嬢の私をご所望です  作者: 桐城シロウ
第三章 ただ幸せな結末へと向かって
58/83

4.軍服を着た孤高の王子様と至福のもふもふタイム

 



 陽射しに照らされ、絹のようなダークブラウンの髪が光り輝いていた。新雪を思わせる真っ白な軍服に金色の飾緒(しょくしょ)、金のボタンがよく映えている。窓際に立って、袖のボタンを留めているアルフレッド様は、童話の中から飛び出してきた王子様のようだった。花柄のタフタドレスを着たシャーロットが、息をするのも忘れて見惚れる。本当に、こんな風に物憂げな顔をしていたら、あんなよわよわな人だって想像がつかない……。ふと、青い瞳がこちらを向いた。陽射しの中では、透き通った海のような色合いになる。


「どうかな? ……シャーロット?」


 周りに人がいるからか、どこかよそよそしい。その表情も声も、いつもより堅苦しくて甘さはなかった。でも、眼差しだけはとろけるように甘い。見つめられると、鼓動が速くなるような気がした。


「よくお似合いですよ、アルフレッド様! 素敵すぎます……!!」

「そうか。なら良かった。さて、耳飾りは何にしようか」


 ここエオストール王国では、海外とは違って、新郎も盛大に飾り立てられる。定番の黒、紺、赤とさまざまな軍服を着てみた結果、白金が一番似合っていたのでそれにした。何着も軍服があって驚いたけど、代々、王族の男性がサイズを変えながら着てきたものらしく、見ていて楽しかった。ほくほくとした気持ちで、ズボンの丈が合っているか、神経質に確認し始めた仕立て屋の男性とアルフレッド様を見つめていたら、気まずそうな表情で見つめ返してくる。一応、にっこりと微笑みかけておいた。────アルフレッド様は、昨日の一件をまだ気にしてる。


(私はもう、寝て起きたらすっかり忘れちゃったんだけど……)


 ああも気にされちゃうと、私も意識しちゃう。別に怒ってないんだけど。でも、アルフレッド様は、私が怒っていると勘違いしているらしく、朝からぎこちなかった。気まずそうに視線を逸らしたアルフレッド様を見つめ、ふんと鼻を鳴らす。まあ、すっかり忘れちゃって、何も気にされないよりかはましなんだけど!


(もふもふ禁止令でも出しちゃおうかな? アルフレッド様、泣いちゃうかな~……)


 ウサギ姿ならどこを触られても平気なんだけど。だって、好きな人だし。見知らぬ人だったら、もふもふは耳と頭、顎の下まで。お腹は触られたくない。サービスでお腹を向けてあげる時もあるんだけど……。私が考え込んでいると、宝石店の人がしずしずと、トレイの上に耳飾りを並べて持って来た。結婚式に使われると宣伝になるらしく、今回、王室御用達という売り文句が欲しい宝石店が名乗りを上げてきた。老舗が中心だけど、新進気鋭の宝石店も混ざっているらしく、私への熱視線がすごい。


(私もネックレス、どこのにするか早く決めなくちゃ……)


 アルフレッド様に聞いてみたけど、笑顔で「どれもよく似合うよ」と言われてしまった。ドレスに合わせる宝石のことになると、どうアドバイスしたら良いのかよく分からないみたいで、歯切れが悪かった。憂鬱な気持ちでいると、真っ黒なスーツを着こなした男性が「失礼します」と呟き、アルフレッド様の美しい耳元へ耳飾りを添えた。


 まず最初は、一番贔屓にしている老舗の宝石店からで、アルフレッド様が首を傾けながらも、私の方を見つめる。すぐさま思考を切り替え、歩み寄った。眩しい陽射しの中で、金色の葉をかたどった耳飾りが煌いている。月桂樹の葉とよく似た黄金の葉は、水滴が浮いているかのように、小粒の青い宝石を載せていた。うん、アルフレッド様の白い肌にもよく合ってる。


「素敵ですね、よくお似合いです。でも、鏡を……ああ、ありがとうございます」


 近くにいる男性から手鏡を受け取って、アルフレッド様に向けてみる。確かめるように首を動かしてから、穏やかな微笑みを浮かべた。


「いいね、確かに。候補の一つに入れておくか」

「ありがとうございます、アルフレッド殿下」

「他のも試そう。シャーロット、何か気になるものは?」

「そうですねえ……美味しそうだからこれっ!」

「美味しそうだからこれ……」


 アルフレッド様がくすくすと品良く笑う。でも、少しだけその表情には翳りがあった。王子様らしく笑ってはいても、きっと、頭の中では自己嫌悪とパニックの嵐で落ち込んじゃってる。ちょっとだけいい気味だと思いながらも、たわわな葡萄(ぶどう)の耳飾りをおすすめしておいた。それもうやうやしく、耳元に添えられる。照りのある濃い紫の宝石と金の葉が美しい。さっきのように、鏡を見て満足げに笑った。あ、かなり気に入ったみたい?


「さっきよりも素敵ですね、それ。アルフレッド様」

「だね。でも、季節が合わないかな……? 春だから」

「春とは言っても、まだまだ寒さが残る時期ですし。春の葡萄も葡萄で、また素敵ですよ」

「それもそうだな。他のも試してみよう」

「かしこまりました」


 次々と試したあと、他の老舗店に変える。緊張しているようで、四十代ぐらいに見える、紳士然とした店員がうやうやしく差し出してきた。……たぶん、王族を前にして緊張しているんじゃなくて、アルフレッド様を見て緊張してるんだ。軍服姿のアルフレッド様は、王族ならではの品の良さと威圧感、それに滴り落ちるような色気を漂わせていた。普段、私のお腹をふがふがと嗅いで「きゃわーっ!! きゃわわっ!」と叫んでいるような人には見えない。


「ああ、いいものを揃えてきたな。鳥とドラゴンか……」

「アルフレッド様、鳥がお好きですもんね」


 私の言葉を聞き、黙って微笑む。アルフレッド様は王家所有の森を散策して、鳥を見るのがお好きだった。私もついて行きたかったけど、最近はお茶会やお勉強で忙しくてついて行けなかった。でも「また今度、一緒に行こうね」と約束して貰ったから、今度一緒に行く。楽しみ!


(でも、その前に仲直りしなくちゃ。アルフレッド様が勝手に怒ってるって、そう勘違いしてるだけだけど)


 まず手に取ったのは、立派な鷹の耳飾りだった。これも金で出来ている。さっきの耳飾りよりも嬉しかったらしく、どことなくそわそわしていた。アルフレッド様の耳に添えられた金の鷹は雄々しくて、気品に満ち溢れている。鏡を覗き込み、嬉しそうに笑う。


「いいな、これ……。だが、結婚式には相応しくないか?」

「いいと思いますよ、私も。それ。アルフレッド様の好きなものをつけるのが一番ですから」

「ありがとう」


 距離を感じてしまって悲しい。でも、控えめに微笑むアルフレッド様も王子様という感じがして、すごく格好良くて好き。うっとり見つめていると、今度はドラゴンの耳飾りを選んだ。これは対になっている耳飾りで、左耳は銀のドラゴン、右耳は金のドラゴンだった。これもまたよく似合ってるし、かなり気に入ったみたいで「うーん」と唸ってる。いくつか試したあと、店を変えた。


 次は新進気鋭の宝石店で、やけに緊張した顔の男性店員が差し出してくる。トレイの上に並べられた耳飾りを見渡してから、ふと、アルフレッド様が急に顔を綻ばせた。そして、白い手袋をはめた手を伸ばし、初めてそれを自分から手に取った。今までは、指示するだけだったのに。


「これにしよう、もう。気に入った」

「あっ、ありがとうございます! 光栄ですっ!」

「アルフレッド様? ですが、合わせてもいないのにですか?」


 私が驚いて聞くと、困ったように笑う。それだけは普段通りの微笑みだった。


「似合わなくてもいい、これにしたいんだ。……それとも、だめかな?」

「いえ、でも、その、それにしてくださると私も嬉しいです!」


 選び取ったのはウサギの耳飾りで、気が遠くなるほど繊細なデザインだった。垂れた耳が可愛らしく、私の瞳と同じ色の、グリーンの宝石が嵌めこまれている。しかも、金色のティアラをかぶって、銀色のウェディングドレスまで着ていた。ゆるやかに波打つドレープまで再現されているし、アルフレッド様がつけても違和感が出ないよう、華奢な金の枝葉が添えられていた。その折れそうな細さの枝に、一枚一枚、葉脈が浮き出てた小さな葉がつけられている。あまりの繊細さに、見ているだけでくらくらしてしまった。


 でも、これだけでは終わらず、右耳のウサギちゃんは淡いピンクとグリーンの宝石が散りばめられた、花冠つきのウェディングベールをかぶって、青い宝石で出来たブルーベリーを嬉しそうに齧ってる。足元には可愛い小鳥までいた。自分の耳にそわせ、手鏡の中を覗き込みながら、感心したようにアルフレッド様が息を吐く。


「素晴らしいな……。ここまで、私好みなのもそうそう見当たらない」

「こ、光栄です」

「随分と精巧な作りだが、これはもしかして」

「あっ、はい。小人によるもので……」

「小人によるものだと? 呆れた」


 部屋のどこからか、悪意に満ちたささやきが聞こえてくる。黒髪の若い男性店員がすっかり縮こまり、ぼそぼそと「申し訳ありません、殿下」と呟く。アルフレッド様が鷹揚(おうよう)に微笑み、手を振った。


「いや、気にしないでくれ。美しいじゃないか」

「そう言って頂けて何よりです。懇意にしている職人が小人でして、今回、王族としては初めて、その、獣人であるシャーロット様とアルフレッド殿下がご結婚なさると聞いて喜び、作ったものなんです。……小人も小人で、差別を受けていますから」


 彼らはその小さな手で、驚くほど精巧な指輪やネックレスを作り出す。でも、そんな小人を下等な生き物だとみなす人達もいて、どんなに素晴らしい商品でも「小人が作ったものなら買わない」と言う人もいる。……でも、今回は嫉妬だと思う。アルフレッド様が一目見て、気に入ったものを持って来た、ろくに歴史もない、今流行りの店が気に入らなかったのかも。アルフレッド様もそれを分かっているのか、穏やかに微笑んでから頷いた。


「そうか。……ウサギの形であることが気に入った。ありがとうと、そう伝えておいてくれ」

「あっ、はい。伝えておきますね! 喜ぶと思います」

「それから、シャーロット? ついでだ。この際、君のネックレスも選んでしまおうか。持って来ているね?」


 悔しそうにしていた男性達が、まだチャンスがあることに気が付き、ぱっと明るい顔になった。萎縮していた若い店員を下がらせ、頼んでもいないのに持って来たネックレスや指輪を見せるよう、指示する。アルフレッド様、すごい! 上手。


(でも、確かに今回の一件で人気が出て、あの店が嫌がらせでもされたら……)


 それはすごく嫌。だから、ここで買っておくべきなのかもしれない。気は進まなかったけど、すすめられたネックレスや指輪をにこにこ笑いながら見つめ、いくつか手に取ってみる。すぐさま、アルフレッド様が後ろに回って、美しいミントグリーンの宝石がついたネックレスをつけてくれた。手袋をはめた指が背中に触れ、そのひそかに近い距離にどきまぎしてしまう。


「……ああ。いいね、よく似合ってるよ。でも、ウェディングドレスに合わせるのなら、もう少し派手な方がいいかな?」

「あっ、はい。ですね」

「じゃあ、これはまた、私と踊る時にでもつけてきてくれ。買おう」

「ありがとうございます」


 満足げな顔をして、白いひげを生やした男性が頷く。まあ、でも、たぶん、さっき嫌味を言ったのはこの人だろうから、買って正解なのかもしれないけど……。大きな手鏡の中で光り輝く、いかにも高そうなネックレスを見て震えてしまう。こんなにぽんぽん、買って大丈夫なのかな……? 聞こうにも、孤高の王子様モードに入ってるアルフレッド様には聞きにくい。戸惑っていると、他の店員も呼び寄せ、見せてくれと頼み始めた。


「これはどうだろう? 君の好きな妖精の宝石らしいよ」

「妖精さんの宝石……!! やっぱり、透明度が高くて素敵ですねえ」


 妖精が神聖な地とみなす場所で採掘され、丁寧に研磨されたもの。胸元で澄んだ青い宝石が、繊細な煌きを放ち、たえず揺れ動いていた。その大きな青い宝石が連なった合間には、雪の結晶が散りばめられている。品の良いデザインなんだけど、はっと目を瞠るような豪華さもあった。何よりも、この雪の結晶がすごく綺麗! 空から雪が降ってきて、私の胸元に留まっているみたい。ドレスとも合いそう! でも、アルフレッド様は苦笑していた。


「雪の結晶か。春に挙式するんだが……」

「お気に召さなければ、変更も承ります。ですが、アルフレッド殿下と言えば、雪ですので……今は亡きマルティナ様も、このデザインが好きでよく集めてらっしゃいました」

「それもそうだったな。どうするか」


 アルフレッド様がじっと、鏡越しにネックレスを見つめる。でも、それまで手鏡を持っていた人を下がらせ、直接まじまじと私の胸元を眺め始めた。春だけど、まだ雪が残っている地方もあるだろうし、いいんじゃないかな……? どきどきと、緊張しながらアルフレッド様のことを見つめる。ふと気が付き、穏やかに微笑んだ。


「シャーロットが気に入ったのなら、これにしようか。雪の結晶とは言えども目立たないし、わざわざしっかり覗きこむ者もいないだろう」

「ありがとうございます……!!」

「いや、一生に一度の結婚式だからね。場に合うか合わないかよりも、シャーロットの好きなものにするといい」


 でも、王族の結婚式なんだし、かなり慎重に決めた方がいいんじゃ……? でも、気に入ったのでこれにすることにした。春なのに雪の結晶だなんてって、言いたい人には言わせておこう。でも、お店の人と相談し合った結果、誤認魔術をかけることにした。当日、雪の結晶は白いお花に見えるみたい。


「良かった。式が終わったら、戻して貰おうか」

「はい! このデザイン気に入りました~! 素敵です!」

「……そうか」


 アルフレッド様が愛おしそうに青い瞳を細め、私の肩に手を置く。うーん。いつものよわよわなアルフレッド様も好きだけど、こんな風に色っぽくて頼りになる王子様も好き! にこにこと笑いながら見上げる。無事にネックレスも決まったので、自分達が売りつけたかった宝石をいくつか売ることが出来て、満足そうな人達を見送る。扉が閉まった瞬間、アルフレッド様が「はああああ~……」と溜め息を吐いて、膝から崩れ落ちた。早いですねえ、完璧な王子様状態が終了するの。


「ごめん、ごめん、ロッティ……!! もっと早くに謝りたかったんだが、遅れてしまって」

「いえ。怒ってないので、別に大丈夫ですよ?」

「えっ!? いや、でも、かなり嫌がってたし、歯軋りもしてたし……」


 絨毯に両手を突いていたアルフレッド様が戸惑い、こちらを振り返る。笑顔で近寄れば、ちょっと怯えた顔をした。気にせず、アルフレッド様の正面に回ってしゃがみこみ、頬杖を突く。青い瞳が見開かれ、きょとんとしていた。


「アルフレッド様? 私、本当に怒っていませんよ?」

「う、うん。気に入ったネックレスを買ったから……?」

「ふふ、違いますよ! 最初から怒っていません。でも、その、次からは気をつけてくださいね……?」


 恥ずかしくなってうつむくと、そのまま絨毯へ寝そべり、両手で顔を覆いながら「可愛い~……!!」って言ってくれた。笑いつつも立ち上がらせ、嬉しそうな顔のアルフレッド様を見つめる。


「勘違いしないでくださいね? 大丈夫ですか? 私に捨てられるって、そう思いこんじゃってませんか?」

「常にその恐怖と共に生きているよ、ロッティ。でも、大丈夫。最近は信じられるようになってきたから……」


 私の両手を取って、ちゅっと額にキスしてくれた。物足りなくて見上げれば、苦笑しながらも今度は優しく、私のくちびるに触れるだけのキスをしてくれた。幸せだった、すごく。だから早く、アルフレッド様も信じてくれるといいなと思う。この大事な人が不安がらずに、日々を過ごせますように。


「そうだ! 今度、もふもふパーティーをすることになったんですよ。私以外の子をもふもふしないと誓えるのなら、お招きしますけど……?」

「うっ! ち、誓うよ。でも、本当に子犬も他の獣人もだめなのかな? ほら、ロッティの前でならいいとかは……」

「……私のお兄様とお父様なら、もふもふしてもいいですよ? あと、叔父様と叔母様なら」

「それは別にいいかなぁ……」

「さては、若いご令嬢を撫で回したいんですね!? てやっ!」

「あっ、ごめん! ごめん!! 悪かったからもう、ソファーの下に逃げ込むのだけはやめてくれ……!!」


 ぽぷんとウサギ姿に変身した私を、必死の形相で追いかけてきて捕まえる。腕の中でぎょりぎょり歯軋りしていると、ほっとしたように笑い、ふわふわな毛皮に頬擦りしてきた。


「可愛い~……!! 大丈夫だよ、ロッティが一番だから。君以上に素晴らしい毛皮の持ち主なんていないから」

「それはそうでしょうとも! 欠かさずお手入れしてますからねっ」

「でも、毛がぱさついていても好きだよ」

「はうっ!?」


 なっ、なんていう、情熱的な口説き文句を……!! それは獣人が一度は言って欲しいと憧れる台詞ナンバーワン! 嬉しすぎてぶるぶると震えてしまった。アルフレッド様が困惑し、私をあやすように揺らす。


「ろ、ロッティ? どうしたのかな? 寒い?」

「あ、アルフレッド様、好きですっ! もう一回言ってください、今の!」

「えっ? えーっと、毛がぱさついていても好きだよ? ロッティをもふもふしてるのが幸せだからね。君のことが好きだから、いつもいつも幸せな気持ちになれるんだ」


 満面の笑顔でそう言ってくれた。うっ、嬉しい……!! まさか、まさか、こんなにロマンチックなことを言ってくれるだなんて!


「アルフレッド様ぁ~! 好きです、大好きっ!」

「えっ!? すっ、すりすり可愛い! すりすり、すりすりが可愛いっ! もっ、ももももう一回して欲しい! すりすり可愛い、すりすりっ!」


 ご期待にお応えして、何度も胸元にすりすりしてたら、壊れたように「すりすり可愛い、すりすり可愛い、すりすりが可愛い……!!」としか言わなくなってしまった。アルフレッド様ったら、も~! カウチソファーの上でお腹を向けてあげると、さっきまでの素敵さをかなぐり捨て、とんでもない声で「きゃわいいっ! きゃわいいよ、ロッティ! 愛してるよ~!」と叫びながら、ふがふがお腹を嗅ぎ始めた。喜ぶので、前足をちゃんと揃えながらお腹を向けつつ、むふんと息を吐く。


(仲直り出来た、良かった! それにしても、アルフレッド様ったらも~。昼間から大胆なんだからっ)


 はしたないけど、いちゃいちゃしたい気持ちが抑えられない。それに、パーティーでアルフレッド様が他の毛皮にうつつを抜かさないためにも、今、ここできちんと夢中にさせておかなくては! ひとまず、私のお腹に顔を埋めているアルフレッド様の頭をちょいちょいと、前足で叩いてみる。


「アルフレッド様、アルフレッド様?」

「ん~? どうしたのかな? ロッティ。ブラッシングでもするかい?」

「好きですっ」

「っぐ!!」


 頑張って体を起こして、そのくちびるにちゅっとキスしてあげると、またよりおかしな「ぎゃわわわーっ!!」という悲鳴を上げ、もふもふしてくれた。


(アルフレッド様って、やっぱりちょろいわ……ふふふふ)


 これからもどんどん、技を磨いてアルフレッド様を夢中にさせなくては! どうかどうか、これからもアルフレッド様が私を見て、私だけをもふもふして喜んでくれますように。そう願って、まぶたに何度もちゅっちゅと、キスしてみるとおかしくなっていた。うん、これで完璧。もう他の毛皮に目移りはしないはず!







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ