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王弟殿下はウサギ令嬢の私をご所望です  作者: 桐城シロウ
第二章 ウサギ令嬢の私が、邪魔者をすべて蹴散らすまで!
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17.義妹の襲来とたちの悪い企み

 

 憂鬱すぎて何も言えないでいる自分を見て、妹のオーレリアがくすくすと笑った。煌く銀色の髪を流し、葉模様のカチューシャをつけ、動けば水のように波打つ、涼しげなブルーのドレスを身にまとい、向かいのソファーに腰かけている。しかも、膝の上にはウサギ姿のシャーロットを乗せて。羨ましい……。


 彼女も彼女で嬉しそうな顔をして、ふくふくと毛皮を膨らませていた。可愛い。それを見て全てが許せた。黙って見つめていると、オーレリアが顔を伏せ、その毛皮を指で梳かしてゆく。浅い陽射しが入りこんでくる応接室は静かで、どこか浮世離れしていた。紅茶の香りとエキゾチックなスパイスクッキーの香り。一旦両目を閉じてから、開いて、その香りを胸いっぱいに吸い込む。オーレリアの美しい容貌がまた、自分を現実から引き離しているような気がする。


(元気だろうか。あの人は……)


 彼女の母は小国から献上された、美しい奴隷だった。物静かで理知的。誰ともろくに喋らなかった。父である王とさえも。それもそうだ。彼女はろくにこの国の言葉を喋れなかった。でも、身振り手振りでこちらの言いたいことを理解し、黙って頷くような人だった。


 父がせがむと、静かに母国から持って来たという、小さなハープを奏で始めた。側室という言葉をろくに理解してない、幼い私がせがんでも、静かに微笑み、奏でてくれた。しばし、昔の懐かしい思い出に浸る。王妃様や他の側室は、何かと険のある視線を向けてきたが、彼女だけは違ったな……。現実逃避をしながらふと、置き時計を見てみると、十四時四十分を示していた。つらい。彼女の義妹が来るまで、あと二十分ほどあるがつらい。かたかたと、手や肩が震え出す。


「ろっ、ろろろろろロッティ? もう来ないんじゃないかな、君の妹は」

「へっ? どうしてですか? まだ約束の時間になってませんよ?」

「とっ、唐突の腹痛とかでキャンセルしてくれないかな……?」

「ふふふ。お兄様が腹痛で倒れてしまいそうだわ。ねえ、お義姉様?」

「私がこの毛皮で慰めに行った方がいいでしょうか!?」

「うん。よろしく頼む」


 手をがっちり組み合わせたまま頷くと、彼女が凛々しい顔つきでぴょんっと、オーレリアの膝の上からおりた。とたんに「あーあ」と残念そうな声を上げ、皮肉げな微笑みを浮かべる。一体、誰に似たんだ……。父にも母にも似ていない。あえて言うのなら、兄上に少しだけ似ているかもしれない。


 きりきりと痛み出した胃を押さえていると、ラベンダー色のフリルドレスをまとったシャーロットが「アルフレッド様~!」と言いながら、とことこと足元までやって来た。瞬時につらさが吹き飛び、急いで抱き上げる。


「可愛い! 可愛いよ、ロッティ!! ふわふわのもふもふだ!」

「ふふん、でしょう? あっ、だめです! アルフレッド様ったら! そんなっ、そんなっ、妹君の前でそんなっ!」


 抱きかかえ、ふわふわのほっぺたに何度もキスをしていると、恥ずかしそうに身じろぎをしてそう言ってきた。可愛い~。でも、大丈夫。人間からすれば、ウサギをもふもふしているようにしか見えないから。頬がでれっと、だらしなく緩む。


「大丈夫だよ~? ロッティ! これはいちゃいちゃじゃないからね~?」

「そうですか? いちゃいちゃじゃないですか?」

「いちゃいちゃの内に入らないよ~、大丈夫だよ~! 可愛い!」

「もう、アルフレッド様ったら。情熱的なんだから!」


 赤ん坊を抱き上げるように、脇の下に両手を入れ、その鼻先にちゅっちゅっとキスしていると、茶色の毛皮をぶるっと震わせ、ヒゲをひくひくと動かした。


「あっ、あの! 恥ずかしいので! オーレリア様の前でもう、もうこれ以上はっ」

「あら、私なら大丈夫よ。お義姉様。オデットちゃんをもふもふしてるから、あんまり羨ましくならないの。ね~?」

「うにゅうん」


 見ると、真っ白な毛並みのオデットを膝に乗せて可愛がっていた。恥ずかしがるシャーロットを一旦、膝の上に乗せ、しっとりとした頭を優しく撫でる。すると、ふすんと息を吐いて落ち着き、腕にあごを置いた。可愛い、甘えてる。


「オデットがいるんだし、ロッティを別にもふもふしなくても……」

「心が狭い男は嫌われましてよ、お兄様」

「にゃあん」

「……」

「だっ、大丈夫ですよ!? 嫌いになんてなりませんよ!?」


 一旦、心を落ち着かせるためにポケットからブラシを取り出す。これは特別にオーダーしたもので、なめらかな飴色の木には、金色の文字で“シャーロット専用”と刻印されている。よく理解出来ないが、自分専用と刻印されたブラシを好きな人が持ち歩き、ブラッシングするという行為は甘く、とても刺激的で、大人にしか許されない行為らしい……。


 このブラシが届いたあの日、シャーロットがふんふんと鼻息荒く、「これで、私も大人の階段を登っちゃいましたね!」と言っていた。それから家族には絶対言わないようにと、強く念押しされた。戸惑いながらも、頷くしかなかった。


 二人の思い出に浸りながらも、ひたすら毛皮を梳かしてゆく。ちゃんと地肌に獣毛が届くよう、深く、ゆっくりと優しく梳かしていった。合間に頭を撫でて、「ロッティ、気持ちいい? 痛くないか?」とたずねると、恥ずかしがって「も~! オーレリア様の前でそんなこと~!」と言って、ごろんごろん寝転がった。


「可愛い……。ずっとずっとこうしていたい」

「さっ、お兄様。五分前ですから、私はお義姉様と中庭を散歩してきますね」

「嫌だーっ!! 今日はもう断る! 会わない! 会いたくないっ!!」

「大丈夫ですよ~、アルフレッド様。ほらほら」

「えっ? なに……?」


 ブラッシングされ、よりつやつやしっとりと輝き出した毛皮を持つシャーロットに顔を埋めていると、そう言ってきたので抱え直す。珍しく前を向かずに、私の胸元にそっと前足を添えた。つぶらなグリーンの瞳に見つめられ、きゅんと胸が高鳴る。そして、おもむろに鼻先でちゅっとキスしてきた。


「かっ、可愛い~! ロッティ、可愛いよ! もう一回! 今のもう一回!!」

「じゃあ、もう一回だけキスしてあげるので、頑張ってくださいね?」

「頑張る!」

「はいっ、どーぞ! それじゃあ、オーレリア様とお散歩してきますね~。じゃっ」

「えっ!? ロッティ!?」


 こちらを見向きもせず、私の膝からぴょんと飛びおりて、笑顔のオーレリアと共に去って行った。ショックを受けていると、ルイが応接室に入ってくる。


「ええっと、アルフレッド殿下? 今、廊下で待機して貰っているんですけど」

「体調が優れないから断ってくれ……。ロッティに騙された。とんだもふもふ小悪魔だった。あのつぶらな瞳に骨抜きにされてしまった」

「新しい紅茶を持って来させますね~。紅茶とお菓子が来るまでの間、休憩してください」

「あの、断って、」

「無理です。少々お待ちくださいませ、殿下。それでは」


 ぱたんと、無情にも扉が閉まる。絶望した。誰も彼もが「義妹はそんなことをしない」と言ってくる……。でも、本当にそうだろうか? 本当に何も言ってこないんだろうか。本当にくまなく私のあら探しをして、「私のお義姉様を返してくださいませ!」とは言ってこないんだろうか……。


(かっ、隠し持っているペーパーナイフとかで刺されたらどうしよう……。衛兵に廊下で待機して貰いたい)


 何十回も「上手くいきますように」と神に祈り、念のため、身だしなみを整える。こういう状況の場合、誠実さや清潔感を前面に出していった方がいいと思って、わずかに青みがかったグレーのスーツにしてみたが、オーレリアから「色が浮いてる。明るすぎるんじゃない?」と言われてしまった……。落ち込んでいると、あっという間に紅茶やお菓子が運ばれてきて、彼女の義妹が現れた。


 真っ先に目に入ってきたのは、気の強そうな紫色の瞳。母親と同じ、けぶるような金髪をおろしていた。まるで喪に服しているのかと一瞬錯覚させるような、黒みがかった紫色のドレスを着ている。か、歓迎されていない。絶対に絶対に歓迎されていない。きっと、私の心を殺す気でやって来たんだ……。


 こちらの動揺もつゆ知らず、彼女が見事なカーテシーを披露し、おしとやかな表情で淡々と名乗り出した。


「お目にかかれて光栄です、アルフレッド殿下。この度、殿下の婚約者となったお義姉様の義妹である、オリヴィア・オーウェンと申します」


 十六歳だと聞いていたが、その年齢に似つかわしくない、落ち着いていて深みのある声だった。はっと気を取り直し、何とか微笑みを浮かべる。


「いや、こちらこそ。シャーロットの義妹に会えて嬉しいよ。……そ、そう硬くならず、こちらに来るといい」

「では、お言葉に甘えまして。失礼します」


 そのまま退室してくれたらいいのに……。願いも虚しく、向かいのソファーを勧めたらすとんと腰をおろした。自分の部屋に帰りたい。今すぐ、中庭を機嫌良く散歩しているであろうシャーロットをさらって、もふもふしながら眠りにつきたい。が、そんな欲を押し殺し、紅茶のカップに口をつける。見てみると、オリヴィアも憂鬱そうな顔で座っていた。静かにじっと、紅茶のカップを見下ろしている。ふんわりと、紅茶から薄い湯気が立っていた。


「殿下は……。一つ、質問してもよろしいでしょうか?」

「どうぞ、何なりと。大事な姉が結婚するにあたって、不安なこともあるだろう」


 う、上手く笑えているか!? そもそもの話、どうして「殿下」と言ってその先を続けなかったんだ!? 質問って!? 怖い、怖すぎる!! 甘い微笑みを保っているというのに(おそらくは)、かたかたとティーカップが振動していた。いいや、私が揺れているんだ。ティーカップに命は宿っていない。


「義姉の一体、どういったところを好きになったんですか?」


 毛皮と答えたら死ぬやつだ、これは! 外見を好きだと言うのはやめておこう。体目当て、毛皮目当て、顔目当てのクソ王子だと断罪されかねない。一旦震えを抑え、にっこりと微笑む。


「妹としては、そこが一番気になるところか……。そうだな、彼女と一緒にいると落ち着くんだ。それから天真爛漫なところも好きだし、意外と芯が強いところも好きだ」

「さようですか……」


 どうやら、だめだったらしい……。合格点は貰えなかった。にこりと笑いもせず、顔を伏せ、紅茶を飲み始める。シャーロットは湯気が立った紅茶は飲めないが、オリヴィアは違うらしい。またしても、ぶるぶると体が震えてきた。気を落ち着かせるため、茶葉が練りこまれたクッキーを食べる。さくっと、軽やかな音を立てて崩れ落ちていった。味がしない、味が……。死んだ顔でもそもそと食べていると、「それでは、殿下」と呟き、顔を上げた。


 いかにも気の強そうな顔立ちだった。紫色の瞳はアーモンド形を描いていて、高貴さが漂っている。確かに、この手の美人が好きな男にはたまらないだろうなと思わせる容貌ではあるものの、私は雰囲気の柔らかい、可愛らしい女性が好きなのでちっとも心は揺り動かされなかった。


(あとでロッティにちゃんと伝えておこう。安心するだろうから……)


 また義妹に取られるのではないかと、そう不安がっていた。早く会いに行って、不安がらなくてもいいよと伝えたい。が、あっさりオーレリアと散歩に行っていたし、彼女はそこまで私のことが好きじゃないのかもしれない……。考えを巡らせ、うつうつしていると、ようやく口を開いた。


「やはり、私のお義姉様を諦める気はみじんもないということですね?」

(ロッティー!! やっぱりそうだったよ! やっぱりそうだったよ!! この義妹は喧嘩を売りに来たんだ! 私が姉の婚約者だと不安なんだ! あら探しに来たんだ、認めて貰えない! 絶対に絶対に認めてなんか貰えない!!)


 どっと、冷や汗を掻く。どうしよう、今すぐこの場から逃げ出したい。でも。ぐっと、膝の上で拳を握り締める。彼女と結婚がしたい。出来ればこの妹にも認めて貰って、堂々と胸を張って彼女と結婚したい。


「申し訳ないが……その通りだ。諦める気はない。でも、反対している理由を聞かせて貰っても?」

「お義姉様からあなたの本性は聞いています。今はまだ別にいいです。お二人は婚約したばかりですもの」


 かたんと、紅茶のカップを置いた。さっきまでのおしとやかさは鳴りをひそめ、ぎっと強く睨みつけてくる。ああ、胃が痛い……。帰りたいよ、ロッティ。君の下に帰りたい。君は今頃、王宮の中庭で蝶を追いかけて遊んでいる頃だろうか……。


「でも、三年後、五年後と時間が経つごとに、お義姉様の精神的な負担は増してゆく。ただでさえあなたは脆弱な(ぜいじゃく)王子なのに、王族との結婚だなんて……。そうやすやすと離婚も出来ないし、私は反対です」

「ふっ、負担をかけないと約束する。だ、だから、どうか君の大事なお姉様をくれ! ください!!」

「無理です。お断りです」

「にっ、二回も言わなくても……!!」


 その言葉を聞いて、眉をひそめる。こっ、怖い! 今すぐ逃げ出してロッティの下へ行きたい。逃げ出したい……。


「それに、お義姉様じゃなくてもいいでしょう? どうしてお義姉様が良かったんですか? 女性には不自由していないでしょう?」

「だ、だめなんだ。ロッティじゃないと……。彼女は一緒にいて落ち着くし、富や権力にも興味がない。それに、王子という地位を抜きにして見てくれる人でもある」


 そんな女性に巡り会えるんだろうか、本当に。そう思って塞ぎこんでいた十四歳の時、父上が優しく慰めてくれた。年を追うごとに骨張っていく手が、部屋の隅で膝を抱え、座っていた私の頭を撫でてゆく。


『なに、大丈夫だ。アルフィー……。私もお前と似たようなことを考えて、塞ぎこんでいたよ。でも、諦めなかったから彼女に出会えた。お前のお母様に出会えたんだよ』


 それを聞いて、涙があふれ出てきた。母は当初、父からの求愛を拒んでいたらしい。王妃様や他の側室の皆様に申し訳ないから、お受け出来ませんと言って頑なに拒んでいた。でも、とうとう受け入れた。妊娠中、私へあてて書いた遺書の中にこう書いてあった。


 “私も誰か一人ぐらい、心おきなく愛してみたかったの。大事に愛されてみたかったの。それに、誰も陛下の苦しみになんて気が付いてなかった。どんなに大勢の人に囲まれ、傅か(かしず)れていても、あの人は一人ぼっち。誰もその孤独に寄り添いはしないし、理解もしない。……一番悲しいことに、陛下はそのことを誰よりもよく理解していらした”


 泣く私を見て、何を勘違いしたのか笑った。それからしゃがみ込み、肩に手を置いて慰めてくれた。


『だから、お前も諦めるな。アルフィー。探していればいつかきっと、そんな人にも出会えるよ。だから、出会えたら絶対に逃がすな。かつての私のようにな……』


 父上、母上。夜にあの廃墟のような大広間へと行き、酒を呑んで「マルティナ。私のマルティナ」と呟いて、泣いていた父の姿がはっきりと浮かび上がる。彼女じゃないとだめなんだ、きっと。だから、勇気を出して伝えなくては。


「だから申し訳ない、オリヴィア嬢。シャーロットのことを絶対に幸せにしてみる。だからどうか許して、」

「はい?」

「あっ、すみません……」


 つっ、つつつつい謝ってしまった!! どうしよう? さっきまでの勇気が萎んで枯れてゆく。ま、まぁ、婚約したし、いくら彼女が反対しようとも無意味だ。ちゃんと結婚出来る。それに、本当にこよなく大事にするつもりだし……。


「ま、まぁ、納得いかないのかもしれないが、もう決まったことだ。話が済んだのなら帰って、」

「ひどい……。ひどい。ひどいです、殿下。殿下はひどい」


 ぼたたっと、紫色の瞳から大粒の涙を流して泣き始めた。なっ、ななななな泣いた!? 泣かせたか!? 言い方が冷たかったか!?


(わっ、私より先に泣いた!! どうしよう!? どうする!?)


 パニックに陥って混乱していると、ぐすぐすと泣きながらも、目元を拭った。そして、血が凍るようなことを言い出した。


「わ、私、今からドレスを破いて、殿下に乱暴されたって、そうお義姉様に言いつけます……」

「やっ、ややややややめてくれ!! 頼むからそんな悪質なことをするのはやめてくれ! 彼女に婚約破棄でもされたら、城から身投げして死ぬ! 死ぬしかない!!」


 慌てて駆け寄り、ドレスに手をかけた彼女の手をぱしっと、掴んで止める。すると突然、にやりと笑い、手首に手を重ねてきた。しまった、はめられた。これが狙いだったか。


「ねぇ、殿下? それが嫌なら、私のことを側室にでもしてください」

「はっ、はぁっ!? いや、無理だ! そんなことをすればロッティが傷付く、」

「もちろん、お飾りの側室で大丈夫です。お義姉様にもそう説明しましょう。いかがですか? お義姉様のお世話係という形で」

「そっ、そそそそそれなら侍女として雇おう! 家にいるのが嫌なんだろう!? それならロッティとずっとずっと一緒にいれるし、君だってお給金が貰える!!」


 ぜいぜいと息を荒げていると、眉をひそめ、ぽつりと「気持ち悪い」と言ってきた。ああ、もうだめだ。これはあとで彼女の言う“刺激的な”お腹ふがふがもふもふと、キスと、ブラッシングをしなくては立ち直れない……。血の気が引いて、よろめいていると、雑に手を払ってきた。


「なら、それでいいです。お義姉様の侍女になります、私」

「ぜ、ぜひ、そうしてくれると有難い……」

「でも、気にいりません。あなたがお義姉様と結婚するだなんて。もっともっと他にいくらでもいるのに。どうしてお義姉様だったんですか? 一体、どうして私のお義姉様だったの……?」


 最後の呟きは消え入りそうなもので、胸が締め付けられた。どんなに大人びているように見えても、彼女は十六歳の少女だ。シャーロットも以前「食べ盛りでお腹が空いちゃうんです!」と言って、がつがつと、植物性食品だけで作られたキッシュを食べていた。しばしば忘れてしまうが、彼女達はまだ十代の少女で……。


 黙り込むヴァイオレットから離れ、ソファーに座り直す。聞かなくては、ちゃんと。彼女の話を。でないと、彼女を可愛がっているシャーロットに申し訳ない。


「悪いが、聞かせてくれないか? 反対する理由を」

「……胸糞悪い話から始まりますが、それでも良ければ」




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