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プロローグ

私の名前は星島(ほしじま) (かなで)


私は、生まれて一度も恋愛をした事がない。

学生時代は部活が強豪だったこともあってか練習で忙しく、恋沙汰なんて起こる気配すらなかった。

周りが彼氏が出来たという報告をする中、私はただ練習。

全国大会で優勝した時は嬉しかったけど、気づいた時には殆どの友達が彼氏を作っていて、引退した後はただただ虚無感が私を襲った。


(何してたんだろ、私…)


卒業し、就職してからは仕事に追われる日々で、休みの日になっても仕事の事ばかりを考えていて。

親からは結婚を急かされるけど、そもそも彼氏が出来ないんじゃ結婚もしようがなかったし、彼氏を作る事すらも諦めていた。


どうせ何も変わらない。彼氏もできなければ、ただ仕事に追われて、結婚もできずに死んでいくんだろう。


そう思いながら家に帰っている時だった。


(何あれ……)


道端に置かれているダンボール。

拾ってあげてくださいと書かれていて、何かは分からないけど、ガサゴソと動いている。


私はすぐに捨てられたペットか何かなんだろうと思った。

ダンボールのサイズは猫や犬が入るにしてはかなり大きく、人が入れるくらいにはある。

可哀想とは思うけれど、私が住むマンションではペット禁止で、飼うことは出来ない。


(飼ってみたいんだけどな……ごめんね……)


私はそのまま通り過ぎる。ダンボールから聞こえてくる音が、申し訳なくて、少し辛い気持ちにもなった。


家に帰り、普段着へと着替えても、あの事が気になって仕方ない。

飼う事は出来ないし、そもそも世話の仕方も碌に分からないから、私には関係のない話だと、そう自分に言い聞かせていた。


だけれど罪悪感が私の中に残り続けていたのも事実で、ダンボールが置かれていた所は住んでいる場所から約5分程で行ける。


(様子を見るだけなら……)


もしあの中にいる子が衰弱していたら、今にもお腹を空かせていたのに私が通り過ぎたせいで死んでしまったら。


そう考えると、無意識に足は動いていた。


(大丈夫なのかな……)


さっきの場所に戻ってくると、ダンボールはまだ置かれたままだった。

しかし、さっきまでは物音がしていたのに今は全く音がしない。


私の中に最悪の状況が浮かんでしまう。

恐る恐るダンボールを開けると、そこには私が想像していたものはいなかった。


「えっ!?」


私は驚いてしまうが、無理もない。

だって、中には人間の女の子が入っていたのだから。

見た目は中学生くらいで、ショートカットの髪はボサボサになってしまい、見える肌は汚れていた。


(何!?虐待?これどうすればいいの!?)


日常で絶対に起こり得ないであろう状況がいま、私を襲っている。

中で眠っている子供の様子は弱っている様子はなく、ただ眠っている。

その顔は綺麗で、正直な話私のタイプの顔だった。


私が何度も頭の中で想像し、いざ覚悟を決めてやってきたらどの想像にもない光景で、どう対処すればいいのか分からなくなってしまった私は、ダンボールごと子供を持ち帰ってしまった。


「流石にあのままには出来ないけど……けど……!」


「これ誘拐になるのかなぁ………!」


いくらダンボールの中に入っていたとはいえ、子供を連れ去ったのは事実で、誘拐してしまったのではないか、そんな事ばかり考えてしまう。


(とりあえずベッドで寝かせないと……)


流石にダンボールに入りっぱなしは良くないので、ベッドまで運び寝かせると、私は子供のある異変に気がついた。

何やら子供の頭部には髪の毛に混じって変な物体がある。


最初は髪の毛がただはねているだけかと思ったが、触ってみると少し柔らかい感触で、髪の毛ではないのが分かった。


(まさか……耳!?)


その物体は所謂猫耳と言われるやつと全く同じで、何故この子供に猫耳があるのか私は理解できなかった。


(もしかしたらおもちゃか何かかも……)


私はそう思い、その猫耳を外そうと引っ張ると、子供が起きて、急いで私から離れていく。

その子供はただ私をじっと睨んで、私が近付こうとすると唸ってくる。


「ご…ごめんね……!悪い人じゃないの……ほんとだよ…!?」


私はその子供の機嫌を直そうと努力をするも、完全に避けられている様子で、どうしようもなくなりかけていた。

しかし、私はある事を思い出す。ここに引っ越す際に、猫を飼おうとして、一通りおもちゃを買ったのだが、肝心の猫がペット禁止で買えずに、ただおもちゃだけ残っている事を。


(もうこれしかない……!)


これでも機嫌が直らないなら、もう直す手段がない。


「ほ…ほ〜ら……猫じゃらしですよ〜……」


私がおもちゃを見せて、揺らすも子供は全く反応しない。

どれだけ揺らしても、近づけてみても。


「まぁ人間だしね………」


そもそも猫耳が付いているとはいえそれ以外は紛れもない人間の子供なのだから、反応しないのも当然だとそう思っていた時だった。


「あれ…?どうしたの……?」


子供が私に近づいてくる。さっきまで避け、睨んできていたのに、今はその様子が全くなかった。

何やらおもちゃが気になっているのか、おもちゃをじっと見つめている。


私がおもちゃを渡すと、その子はおもちゃをかじり始めた。


「あっちょっと噛んじゃダメ!!」


私がおもちゃを噛むのを止める最中に、その子が汚れている事を思い出し、お風呂に入れる事にした。


「大人しくしててね……」


子供はさっきからずっと大人しくしてくれてたので、服を脱がせるのは簡単だった。

しかし、服を脱がせた時に私にとてつもない衝撃が走る。


「……ぇあ!?お、男の子……!?」


女の子だと思っていた子は、あそこになんと男の象徴が付いていた。

子供は慌てる私を困惑するように見つめてくるが、その顔は女の子にしか見えなくて、とてもぶら下げているなんて想像できない。


男の裸なんて生まれて一度も見た事がない私は少し動揺はするが、なんとか体を洗う事は出来た。


男の子の濡れている髪の毛をドライヤーで乾かしている時、その子の耳について私は考えていた。


猫耳がついているけど、横にも耳があるのだろうか?


本来人間が付いているはずの場所に耳はあるのだろうか、髪の毛で隠れていて見えないが、私はどうしても気になり機嫌を損なわないように、乾かしながら確認をした。


(………! ついてない……)


付いていなかった。本来あるはずの場所は、綺麗な肌がそこにあるだけで耳らしき物は何もない。


思わず固まってしまう。

私は男の子に頭を振って水を飛ばされてしまう。


「あぁ……ごめんごめん……」


猫耳を乱暴にしないように気を付ける事が、私に異常事態である事を意識づける。



ご飯に関しては、結論から言えば人と同じものあげても問題なさそうだった。


私が作り置きしておいたハンバーグを勝手に食べてしまったが、何やら体調を崩す素振りはない。

それどころか今まで見た事がないほどの笑顔で食べていた。

とはいえ多少の不安はあったので今日はフルーツを食べさせた。


食事を済ませ、皿も洗い終わり、男の子の方を見ると、男の子はベッドでぐっすりと眠っている。


その姿は普通の子供ときっと何も変わらない。ただただ愛おしかった。



翌日の朝、休日だったので私は男の子に言葉を覚えさせていた。


物覚えが非常によく賢い子で、林檎を見せながら


「これ何?」


と聞くと最初は何も言わなかったが『林檎』だと言う事を教え、もう一度質問すると


「りんご!」


と言う。

一度教えた事はどんどん吸収していくので、約一週間もすれば話せるくらいにはなっていった。



「じゃあ、お仕事行ってくるから、いい子にしててね、ユウ」


男の子の名前はユウにした。

名前の由来は私が誘拐紛いの事をしたからと言うのもあるが、頭がよく優秀で言葉はすぐに覚えるし、優しい子になってほしいと言う願いも込めてある。


「がんばって!かなで!あいしてる!」


これは私の完全なる欲望だが、ユウはいまいちどう言うことか理解してないから多分合法だと思う。


今までつまらなかった私の人生に、楽しみが生まれた。

ユウがいるおかげで仕事も頑張れるし、笑う事も増えた。


流石に誰にも言えないけど、別に言わなくてもよかった。


だってこの幸せは私だけの幸せに、独り占めにしたかったから。



「かなで!だいすき!おまえはおれのおんな!」


「ふへぇ………」


正直幸せすぎて死んじゃいそうだけど、ユウのためにも絶対生きてみせる……!

この子たちの物語を書くのが好きなので連載します。


応援のほどして頂けると励みになりますのでよろしくお願いします!

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