図書委員会、送別会にて
僕の学校の図書室は、今時珍しくニューアーク方式で貸し出しを行ってるんだ。
運動部の部室とかには力を入れてるのに、ここにはクーラーすらついてない…
図書委員の僕からすれば、嘆かわしい現状だよね。
キミ達は図書館で本を借りたりするかい?
そうか、そしたら知っているかもしれないね。
ニューアーク方式っていうのは、本の裏表紙に小さな紙が貼ってあって
本を借りる人はそこに、自分の名前と借りた日・返す日とかを記入して僕ら図書委員に渡すんだ。
それを僕らは保管して、誰がどの本をいつまで借りているか管理するわけさ。
………めんどくさくないかって?
そりゃ面倒さ、言っただろ嘆かわしい現状だって。
でもね、最新のシステムで管理されていないおかげで、
面白い楽しみ方も見つけちゃったんだ。
教えてあげるよ、僕のささやかな非日常のお話をさ
ニューアーク方式…面倒だからカードって呼ぶけど、このカードを見てると
どんな人がどんな本を借りているかが、一目瞭然なのさ
そりゃあそうだよね、借りた人の名前がずらっと並ぶんだから
あー、この人は恋愛物の話が好きなんだ とか
いつも同じ本ばかり借りてるなぁ とか
僕、あんまり人が来なくて暇だから そういうのを見て、で その人が借りる時にその人の好きな本の話を
二言、三言話すのが楽しかったんだよね。
その内、図書室利用者で僕が話したことがない子なんて居ないってくらいにはなってきたんだけど
唯一、二人だけ 一度も姿を見たことが無い生徒が居たんだ。
名前は、斉藤武彦と椎名真琴
図書委員は僕だけじゃぁないから、きっと自分が担当じゃない時に借りて行っているんだろう
不思議な事じゃない。
でも、なんで気になったか。
その二人ね、同じ本を交互にしかもずっと借りては返して借りては返してってしていたんだ。
『源氏物語』がいくら分厚くて読むのに時間がかかるといっても、こんなに頻繁に返す必要はないのさ
2週間まで借りれるんだから
そこでピンときたわけ
この二人、きっとこの本の貸し借りでなにかやり取りをしてるな?ってね
源氏物語のハードカバーなんて、一応置いてあるだけで借りてる人なんて今までほとんど居なかった。
単行本版が揃ってるからさ、わざわざ重いハードカバーは借りないんだよ。
それなら、きっと読むためじゃぁない別の理由があるに決まってる。
気付いてからは早かった。気になるからね
たまたまその本が帰ってきて返本作業をしている時に、なにか挟まってないか確認したんだ。
……あったよ お手紙が
可愛い便せんに入ってね
…………中を見たかって?
馬鹿言うなよ、人の手紙 しかもたぶん恋人同士のだよ!?
みるわけないでしょ
まっ 僕の図書委員での思い出話はこんなとこかな
3年間楽しかったよ、きっとあの二人も僕と一緒に卒業だろうし
君たちも頑張って委員活動に励んでくれ!噂ではやっとバーコード式の導入が検討されているみたいだからね
今後が楽しみだよ