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『言語勇者』 〜 異世界ではペンは剣より強し   作者: 柊 真
第3章:異世界ではドラゴンは想像より強し
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第二十九話:異世界では作戦はドラゴンよりぶっ飛んでいる

 「で?準備して欲しい物とはなんだ?」


 洞窟から出ると、ヴェリスは改めて俺にそう聞いた。


 「その前に一つ確認したいんだが、ヴェリス。お前のネイチャーズプリズンって周りの自然から力を引いてるスキルだよな?」


 俺がそう問いを返すと、ヴェリスはすぐに言葉を返してくれた。


 「ああ、そうだ。ネイチャーズプリズンは自然と繋がりが深いエルフのみが使えるスキルで、自身の周りにある植物達の協力を仰いで使うものだ。そのためその威力は当然周りの植物の数や大きさに比例する。私としてはあまり使いたく無いスキルだが…その質問から察するに、また使わせるつもりなんだろう?」


 さすがヴェリス、察しがいい。


 だが、俺は彼女の言葉を聞いて再度確信した。

 サウラーに勝てる可能性があると。


 俺は深く息を吸い込んでから、改めて口を開けた。


 「まあな。悪いけど、頼めるか?」


 するとヴェリスは軽く微笑み、言葉を返した。


 「まあ、この際は仕方ないだろう。だがこれが終わったらしばらくは使わないぞ。」


 俺は思わず笑みを浮かべてしまった。


 「おう!じゃあ頼むぜ。」


 「言っておくが、これほどの植物の協力を仰ぐには相当な魔力が必要になる。その分詠唱も長くなるし、使った後は動けなくなるだろう。それでもいいのか?」


 「ああ。むしろそれでいい。」


 すかさず俺がそう言うと、今度は後ろからパイセリウスが話に割り込んできた。


 「先程から盛り上がっているようだが、貴様らこの状況がわかっているのか?貴様を信じるとは言ったが、策はあるんだろうな?」


 彼がそう聞くと、俺は彼の方を振り向きゆっくりと口を開けた。


 「わかった。今から俺の言う事をよく聞いてくれ。」


 俺は二人に俺の作戦を説明した。

 正直俺でもぶっ飛んだ作戦だとは思ったが、成功の可能性があるのは間違いなかった。

 そしてそれは、二人にも伝わったようだった。


 「全く…マナブらしいと言えばマナブらしいが、本当に頭がキレる奴だ。」


 「ハハハ!まさか人間の考えた策に魅せられるとはな…多少癪に障るが、その作戦乗ったぞ、言語勇者!」


 二人の了承を経て、俺は作戦決行を決意した。


 いざ、ドラゴン討伐へ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 沈黙に包まれた森。

 はたから見ればなんの異変もない静寂な森。

 その沈黙を破るものは、誰一人といなかった。


 ゆっくりと迫ってくる、黒竜以外には。


 俺は大きな木の裏に身を隠し、息を整えた。

 

 いよいよドラゴン討伐の始まりだ。


 やがて黒竜は、森の中でそびえ立つ緑竜の前で歩みを止めた。


 「ほう。逃げずに俺様に立ち向かうとは、なんの風の吹き回しだパイセリウス?」


 あたりに響き渡る黒竜の声。それに対し、緑竜は冷静に言葉を返した。


 「黙れ、サウラー。貴様との決着をつける時が来たと思っただけだ。」


 するとサウラーは、邪気を放つかのように笑いながら再びその口を開けた。


 「ハハハ!笑わせるな!カルリオンの息子と言う肩書きだけで生きてきたお前に何ができると言うんだ!?さあ、早くそこを退いてお前の姉を出せ。俺様の偉大なる血筋を汚したあのクソ女を始末しなきゃいけないからな!」


 サウラーのその言葉を聞いて、俺は心底腹が立った。

 やっぱりこう言うクソ野郎はどの世界にでもいるんだな。

 一刻でも早く、こいつをぶっ倒したい。


 それはパイセリウスも同じだったようだ。


 緑色の炎の玉が、パイセリウスの口から放たれる。

 その玉はサウラーめがけて一直線に飛び、彼に避けられた後激しく弾け散った。


 炎が口から滴ったまま、パイセリウスはサウラーに言葉を投げかけた。


 「ほざくのはそれくらいにしろ。姉様に会いたければ、我を倒してから会いに行く事だな。」


 その言葉を聞いたサウラーは、殺気に満ちた笑顔で言葉を返した。


 「仕方ないな…まずはお前から始末するとしようじゃないか!」


 そう言うとサウラーは空高く飛び上がった。

 続け様にパイセリウスも彼を追うように飛び上がった。


 そして、二体のドラゴンは空中でぶつかり合った。


 交わる鋭い爪。

 繰り出される灼熱の炎。

 見たこともないような凄まじい魔法攻撃。


 俺が隠れていた木の裏にもその大乱闘の激しさは伝わっていた。


 「スッゲーな…」


 俺が思わずそう口にすると、それに応えるかのようにヴェリスが口を開けた。


 「本気でこの戦いの中に入る気なのか、マナブ?」


 俺は深く息を吸い込んでから、彼女の問いに答えた。


 「ああ。その為には君のサポートも必要なんだが…頼めるか?」


 「もちろんだ。このまま引き下がるわけにもいかないしな。」


 ヴェリスがそう言うと、空中の戦場から轟く笑い声が聞こえてきた。


 見上げると、そこには高笑いをするサウラーと、深い傷を負ったパイセリウスの姿があった。


 「ハハハ!その程度かパイセリウス!そんなんじゃ俺様は倒せないぞ!」


 サウラーのその余裕ぶった言葉を聞き、俺はヴェリスの方を向き、この彼女に言葉をかけた。


 「そろそろ出番みたいだ。ヴェリスは詠唱を始めていてくれ。」


 俺がそう言うとヴェリスは頷き、静かに言葉を返した。


 「わかった…武運を祈るぞ、マナブ。」


 彼女はそう言うと目を閉じ、手を合わせてエルフ語で呪文の詠唱を始めた。

 それと同時に俺木の裏から姿を現し、ボウガンを取り出した。


 サウラーに狙いを定めて、俺深呼吸をしながら引き金を引いた。


 「スナイプ。」


 ボウガンから放たれた矢は寸分の狂いもなく、サウラーのこめかみに命中した。


 「ああ!?なんだぁ!?矢!?」


 ダメージはなかったものの、彼の気を引くことには施工したようだ。


 やがて、サウラーの視線は俺に定まる。


 「お前か!俺様に攻撃をするとはいい度胸だ…お前何者だ!」


 彼の轟くような声に対し、俺はできるだけ大きな声で言葉を返した。


 「俺の名前は言語勇者ドウモトマナブ!サウラー!お前の相手はパイセリウスだけじゃないぞ!」


 俺は改めて腹を括った。


 ここからが正念場だ。








 


 



 

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