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『言語勇者』 〜 異世界ではペンは剣より強し   作者: 柊 真
第2章:異世界ではパーティは個人より強し
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第十八話:異世界では自信は恐怖より強い

 「どう言う事ですか!?」


 ザカラヤスは慌てて駆け込んだ兵士にそう聞いた。

   

 まあ無理もない、正直俺も同じ事を聞きたい所だ。


 すると、兵士は物凄い早口、現状を説明し始めた。


 「正門からいきなり、人型のモンスターが現れまして、すぐに我々で対処しようとしたのですが、そのモンスターはとてつもなく強く、我々では歯が立ちませんでした。モンスターはそのまま城内へと侵攻を進め、こちらへと向かっています!重傷者は多数いますが、今は王子の身の安全が優先です!既に王と姫達は城外へ避難しました!なので王子も早く!モンスターは今冒険者達が食い止めているので、今のうちに!」


 「しかし-」


 ザカラヤスが返事をする前に、俺は二人の間に割って入り、兵士に問いかけた。


 「冒険者って、ユルビンとヴェリスの事か!?」


 「は、はい。今、中庭で交戦中です。」


 兵士がそう言い終えると、俺は中庭目掛けて走り出した。

 去り際に、俺はザカラヤスに言葉を投げかけた。


 「王子!ここは俺達に任せてください!王子は早く安全な場所へ!」


 そう言い残し、俺は足を早めた。

 ザカラヤスも何か言った気がしたが、今はどうでもよかった。

 今はとにかく、仲間達の元へ行かなくては。


 王都の兵士が倒せなかった敵を、あの二人だけで倒せるのか?

 もしかすると、もう既に…

 いや、そんなはずがない。あの二人に限って、そんなはずがない。


 俺はさらに足を早め、中庭へと向かった。仲間達の無事を祈りながら。


 城内を丸ごと駆け回った気分になった後、俺はようやく中庭についた。

 中庭に着くなり、こちらに駆け寄ってくる相棒の姿が見えた。


 「マナブ!遅いですよ」


 俺は安堵の息をついた。


 「ユルビン!無事だったか!」


 「はい!先に戦っていた兵士達も、僕が回復させたので無事です!意識は戻っていませんが、命に別状はないはずです!」


 「そうか…ヴェリスは?」


 「こっちだ。」


 声の元へと振り向くと、そこにはくるしそうに手を合わせているヴェリスがいた。


 「ヴェリス!大丈夫か!?」


 ヴェリスは軽く苦笑をしてから、こちらを向き口を開けた。


 「ああ、今モンスターをネイチャーズプリズンで拘束しているんだが、正直そろそろキツくなってきた…」


 ヴェリスの少し前を見ると、そこには蔓状の植物に完全に覆われた何かがいた。

 これが、王都へ攻め込んできたモンスター。

  

 俺は剣を抜き、戦闘態勢に入った。


 「どうしましょうか、マナブ?」


 相棒の問いかけに、俺はゆっくりと答えた。


 「今はとにかく、王子が避難するまでの時間稼ぎをする必要がある。何もこいつを倒す必要はない、とにかく足止めができればいいんだ。だから、ヴェリスにはこのままできるだけ長くネイチャーズプリズンを使い続けてもらう。限界がきたら、拘束を解いて俺が話しかけてみる。説得に失敗したら、そのまま戦闘に入るしかない。部の悪い戦いだが、こうなったらやるしかない。」

 

 俺がそう説明すると、ユルビンとヴェリスは頷き、言葉を返した。


 「わかりました。王族の人間を守るためでしたら、やるしかないですよね!」


 「了解した。私ももう少し踏ん張ってみる!」


 仲間達の言葉を聞いて、俺は軽く微笑んだ。

 やはり、仲間とは素晴らしいものだ。

   

 しかし、喜んでいる暇はなかった。

   

 ネイチャーズプリズンに囚われていたモンスターが、何やら震え始め、紫色に光り出した。


 その途端、ヴェリスの顔色が変わった。


 「な、なんだ!?急に力が強く…!こ、このままでは…!」


 次の瞬間、中庭は紫色の光と物凄い爆発音に包まれた。


 目を開けると、そこには吹っ飛ばされたヴェリスと、見覚えのあるモンスターの姿があった。


 漆黒の鎧に、淡く光る大剣。そして何より、自身の手に持った頭と首元から上がるどす黒い煙。

 俺の目の前には、あの時のデュラハンがいた。


 あの時と同じ疑問が、頭の中を駆け巡る。


 なぜ、デュラハンがここに?


 しかし、俺はその疑問をまるで気にかけていなかった。

 なぜなら、俺は全く別のことしか考えられなかったからだ。

 頭の中で、何かが繋がった。


 点が線になった瞬間である。


 俺はゆっくりと、デュラハンの方へと歩み始めた。


 「はあ〜…小癪な…まさかここでエルフに出くわすとはな、我もついていないものだ。」


 相変わらず背筋を凍らせるその声を聞き、俺は改めて覚悟を決めた。

 そして、ゆっくりと口を開けた。


 「久しぶりだな、デュラハン。」


 俺の声を聞いたデュラハンは、こちらへと振り向き、俺と目を合わせた。


 「ほう、あの時の人間か。ふん、これもまた、運命というものか…言っておくが、あの時のようにはいかぬぞ。」


 「ああ、わかっている。こっちも無理に説得するつもりは無い。」


 「ならば話は早い。そこを通せ、わが仇が待っている。」


 俺は鋭く息を吸い込み、言葉を返した。


 「悪いが、それはできない。」


 数秒の凍てつくような沈黙の後、デュラハンは大剣を構えた。


 「ならば、わかっているな?」


 俺も、同じように剣を構えた。


 「ああ、もちろん。言葉が無理なら、剣で語るしか無い。」


 「ほほう、お前のような度胸のある男は久しぶりだ。その度胸に敬意を表して、全力で行くとしよう。」


 俺は改めて一つ息を吸い、デュラハンに問いかけた。


 「最後に一つだけ、聞いてもいいか?」


 「ん?なんだ?」


 「お前の名前はなんだ?」


 すると、デュラハンは少し黙り込んでから、いきなり大声で笑い始めた。


 「ハハハ!名前などとうの昔に捨てたわ!主に裏切られ、この国から追放された瞬間にな!」


 俺は、確信した。

 そして、笑みを浮かべ、大きな声で宣言した。


「決めたぜデュラハン、いや、バルティーア!俺はお前にかけられた呪いを解き、お前を俺の三人目の仲間にする!」


 謎の自信に満ち溢れた俺の頭には、一つの考えしかなかった。


 この人を、絶対に救い出す。


 だだ、それだけだった。


   



   


   



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