第十四話:異世界では射的は剣術より便利
「プハァー!やっぱりいいわこれ!」
俺達はギルドに戻り、勝利の祝杯をあげていた。
もはや恒例となってきたこれには、まだまだ当分は飽きないだろう。
俺達はありったけの酒を口の中に放り込んだ。
「って言うか、さっき『エルフとハーフエルフでは年を取るスピードが違う』って言ってたけど、ヴェリスって何歳なんだ?酒飲める年齢ではあるよな?」
俺がそう聞くと、ヴェリスは手に持っていたジョッキをカウンターに起き、真剣な表情をしてこちらを向き、ゆっくりと答えた。
「女性の年齢を聞くとは無礼だな。まあ、聞かれても気にはしないがな。ハーフエルフは大体エルフじゃない方の血の性質が強く出るため、寿命や年を取るスピードはそちらに依存する傾向にある。人間とのハーフの場合、大体百五十年、長生きして二百年生きるのが妥当だろうな。私はこの見た目でも、一応三十五歳なんだぞ?」
これには流石に驚いた。
ヴェリスは見た目俺と同い年、なんなら年下に見えるくらいだ。
恐るべき、エルフの血。
ヴェリスは置いたジョッキを手に取り、一口飲んでから再び口を開けた。
「しかし、これほど飲んでいてもいいのか?明日のクエストに支障が出るんじゃないか?」
「心配すんな!二日酔いしてもユルビンがデトックスで治してくれるからさ!な、相棒!」
「もちろんです!」
「そ、そうか。なら遠慮なく。」
俺とユルビンの保証が効いたのか、ヴェリスはそれからドンドン飲む勢が増した。なのに、まるで酔うそぶりを見せなかった。それどころか、俺達に同じ量の酒を勧め始めた。
やはり恐るべき、エルフの血。
「ほら、二人とももっと飲め!まだまだ酒はあるぞ!」
今夜は長くなりそうだ。
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「う〜ん…」
案の定、俺はひどい二日酔い状態で目が覚めた。
幸いユルビンが速攻でデトックスをかけてくれたからすぐに起きれたが、やはり昨夜のヴェリスの勢はすごかった。
今後は彼女と飲む場合、色々と気をつけよう。
そう思っていると、俺の足元にモフモフとした感触がした。
そこを見ると、なんだか不満そうなファンテンがいた。
俺は小さな「彼」と目線を合わせ、問いかけた。
「どうしたんだ、ファンテン?ヴェリス以外には懐かないんじゃないのか?」
正直ペットと話す感覚で「彼」に問いかけたんだが、どうやら俺は動物の言葉も理解できるようになったらしい。なにせ、はっきりとした答えが返ってきたのだから。
「あんたは昨日ヴェリスを泣かした。次やったら許さないからな。」
怒りすら感じられるファンテンの言葉に俺はため息をつき、呆れながらも言葉を返した。
「あのな、あれは別に悪い涙じゃなかったんだぞ?あと見ての通り、俺は君の言葉がわかるから裏でコソコソ悪口言ってんじゃないぞ。」
ファンテンは少し驚いたようだが、すぐに冷静を取り戻した。
「へっ!そんなの知るもんか!ベーだ!ベー!」
そう言うとファンテンはどこかへと走り出した。その方向の方を見ると、ヴェリスがこちらに向かって歩いているのが見えた。ファンテンは彼女の体を登り、最終的には彼女の肩の上で腰を下ろした。
「ん?ここにいたのか、ファンテン。どうしたんだ?もしかしてマナブと仲良くなりにきていたのか?」
ヴェリスの純粋なその言葉には、俺は苦笑いしかできなかった。
「そういえばマナブ、君はレンジャーのスキルを学びたくはないか?」
そして彼女のその言葉には、俺は一気にテンションが上がった。
「ああ、大いに学びたいと思う。」
「そうか。実は先ほどユルビンとスキルを教え合っていたんだが、マナブもどうかと思ってな。結構簡単なものだし、習得にも時間はかからないはずだからな。」
「そんな便利なやつがあるのか。どう言うスキルなんだ?」
「『スナイプ』と言うスキルだ。標的に狙いを定め、遠距離攻撃の命中を確定させるスキルだ。素早さが平均値以上であればすぐに習得できる、レンジャーの必須スキルだ。」
なるほど。確かに便利なスキルだ。俺も装備を揃える時ボウガンは念の為買っておいたし、このスキルさえあれば戦闘が苦手な俺が使っても戦力にはなれる。
「そうか。ならばすぐにでも特訓しよう。」
俺がそう言うと、ヴェリスはニヤリと笑った。
「いいのか?私の特訓は結構厳しいぞ?」
彼女のその言葉を聞き、俺もニヤリと笑い言葉を返した。
「ああ!どんなものでもドンと来い!」
「では、特訓開始だ!」
ユルビンを巻き込んだ一時間の射的訓練ののち、俺は無事スキルの習得に成功した。
俺は、射的スキル、スナイプを習得した。




