第十話:異世界では光は剣術より便利
俺とユルビンはギルドに戻っていた。
クエストの完了報告も済ませて、今は二人で飲んでいた。
なにせ、これで俺達も晴れて階級が上がっんだからな。勝利の美酒ってやつだ。
「プハー!!!やっぱり自分の金で買う酒は美味いな、ユルビン!」
「はい!ステラさんもすごく喜んでくださっていましたし、気分は最高です!」
「お、なんだあ?ステラさんに気でもあるのかよ、相棒?」
「そ、そう言うマナブこそ、いつもステラさんに色目使ってるって噂流れてますよ!」
「な、なに!?どこのどいつだよそんな事言い出したの…」
こうやって時には笑い、時には肩を叩きあい、時には頬を赤らめて俺たちは会話を続けた。
酒が回っていたって言うのもあるかもしれないが、俺たちは惜しみ無く心の内を語り合った。
ああ、やはり友と言うものは素晴らしい。
「よ〜し、じゃあ改めて!コッパーからスチールに階級が上がったのを記念して!」
『乾杯〜!』
俺たちの宴は、翌日の朝まで続いた。
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「うぅぅぅ…」
俺はゆっくりと飲み屋のカウンターから頭を上げた。
「お、やっとお目覚めか、ニイちゃん。」
飲み屋の店主は少し呆れてそう言った。
「ん、まあ、そうだな…少し飲みすぎたか…?」
俺は頭を抱えながら辺りを見回した。
なぜかそこにはユルビンの姿が無い。
「なあおじさん、ユルビンはどこ行ったんですか?」
「ん?ああ、あいつなら今外で特訓してるぜ。」
「そうですか、ありがとうございます。」
俺は店主に礼を言い、ユルビンを探すべく外に出た。
すると魔道書片手に何やら呪文を唱えてるユルビンの姿がすぐに見えた。
「よう!朝から真面目だな、相棒!」
俺の呼びかけに気づき、ユルビンはこちらへと走ってきた。
「はい!ソーサラーの朝は早いですからね!それよりマナブ、二日酔いは大丈夫ですか?」
「い、いや、正直ちょっとキツイ…」
俺は頭を抱えたままそう言った。
するとユルビンはこちらに手を差し出した。
「では、僕にお任せください!いきますよ!デトックス!」
彼がそう言うと、俺は薄緑色の優しい光に包まれた。
みるみるするうちに酔いが覚めていくのがわかった。
光が治る頃には、俺は完全に回復していた。
「ヘェ〜すげーな!ありがとよ、相棒!」
「どういたしまして!僕のデトックスでしたら、酔いを含めた基本的な状態異常はすぐに治せますので、いつでもお任せしてください!」
なるほど、だからユルビンはこんなにピンピンしているのか。
俺は思わず口を開けた。
「いやーそれにしてもやっぱりすげーよな、ユルビンは!こんなにも魔法が使えるなんて正直羨ましいよ!よ!最強のソーサラー!」
「や、やめてくださいよ〜!そんなこと無いですし…」
ユルビンは照れ臭そうにそう言った。
そして、思いがけないことを言い出した。
「あ、そうだ!なんだったら、マナブにも簡単な魔法を一つ教えてあげましょうか?』
その言葉に俺は思わず飛び上がった。
「そんなこと出来るのか!?」
「はい!もちろんです!魔法をはじめとしたスキルは、使うのに必要な能力値さえ満たしていれば、職業や種族関係なく、そのスキルを知っている人から教わることがができるんですよ。マナブは知力が高いから、多分簡単な魔法なら使えるはずですよ!」
俺は歓喜を抑えられなかった。
確かに俺もスキルをいくつか持っていたが、それは「剣術適正上昇」や「近距離武器のダメージ増量」などと言った、戦闘が得意では無い俺にとってまるで役に立たないような物ばかりだった。
だけど、魔法が学べると言うのなら話は違う。どんな魔法を学ぼうと、それはきっと役に立つはずだ。
俺は歓喜をあらわにしてユルビンに返事をした。
「ああ、よろしく頼むよ、相棒!」
するとユルビンも嬉しそうに喋り始めた。
「はい!お任せください!そうですね〜…いきなり攻撃系は難しいですし…そうだ!『フラッシュ』なんてどうでしょう?手のひらから眩い光を出し、辺りを照らしたり敵の目くらましにも使える便利な魔法ですよ。」
なるほど、確かに便利そうな魔法だ。もしかすると、交渉にも役立つかもしれない。
「よし、じゃあそれで決まりだ!早速教えてくれ!」
「はい!しかしマナブもファイターでよかったですね!他の職業よりさらに多くのスキルを習得できるんですから!平均的な能力値の持ち主だからこそ出来ることですよ!」
これまたなるほど。正直今まで俺はこの平均的な能力を恨んでいたが、まさかこんなふうに役に立つとはな。
俺は覚悟を決めた眼差しでユルビンと目を合わせて、語りかけた。
「まあ、そんなことはどうだっていい!早く教えてくれ!」
「はい!じゃあいきますよ!」
俺たちの特訓は夜遅くまで続いた。
やがて、一つの光が夜のギルドを照らすようになった。
俺は、光魔法フラッシュを習得した。




