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帰れなかった勇者の新・異世界生活  作者: 乙三
西都への旅編
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57.モルダイ6

 ユアンナにあげた調合道具の代わりとなる物を、ヴェーラとエスタにも贈る事にしたけど……。


 まずはヴェーラ用の物だが、旅の最中でもしていた裁縫関係だろうな。で、糸や布などを切り辛そうにしていたのを覚えているから、(はさみ)が良いと思う。

 この国の鋏は、一枚の金属板をU字に曲げた和鋏と同じ形状なので、パーツの組み立てが無い分、簡単だしな。

 材料は勇者時代のギアニカから引き継がれた鋼の剣を使う事にした。

 鋼も自作しようと考えたけど、炭素が混ざって丈夫になるって程度の知識しか無いし、含有率とかが分からないので早々に諦めた……鋼の剣が材料なら、切れ味も良い筈だし問題無いだろう。


 ともあれ、『創造』と『魔力操作』で鋼の剣から和鋏を作り、刃の仕上げは鉈のメンテナンス用にエルバの所で買った油砥石で砥いでいく。

 日本で慣れ親しんだ水で砥ぐのとは違うが、ここでは油を使うのが常識なら、それに(なら)うしかない……地球にはオイルストーンって言うのがあったけど、あれの仲間か? まあ、違いなんて分からないけど。

 

 他にも地金の色が気に入らなかったので魔法で熱処理をしたり、刃を緩やかに湾曲させたりと、どこかで得た素人知識の寄せ集めで何度か失敗したが、それでも最終的には、自分用にもう一丁作る程度には満足のいく物が出来た。


 

 あとはエスタ用だけど、真っ先に思い付いたのは肉だが、さすがにそれは無いだろう。

 次に思い付いたのは宝石の原石だ。

 水浴びや洗濯の為に河原へ寄った時に、拾って集めている石を見せてもらったからな。

 ただ、生活資金の為の転売目的か、コレクションなのか分からないと言う不安要素はある……聞いておけば良かったな。

 それに贈り物が拾った石だけというのも味気ないので、他にも何か……。


 そう言う訳で色々と悩まされたが、最終的には以前作った小型のシャベルにした。

 河原で石を除けるのにも使えるし、採集はもちろんトイレ用の穴も掘れるし、用途は多岐に渡る便利道具だ。

 ……いちおう原石も、布袋に少しだけ入れて渡すか。


 和鋏の製作で結構時間を使ったのか、両者への贈り物が決まる頃には辺りはもう静まり返っており、俺も寝る事にする――。



 翌朝、朝食をとり終えて身支度を整えていると、ヴェーラ達が宿にやってきたので部屋で例の品を渡す事にした。

 


「大した物じゃありませんが、良かったら使って下さい」

「あ、シャベルだー、ルクス君が使っているのを見てから、鉄のが欲しいと思ってたんだよねー」

「私のは鋏ね。あまり切れない物を使っているのを見られていたのね。恥ずかしいわ」


 おおむね好評の様で安心した。色々と教えてもらった事への授業料としては安いかもしれないけどね。



「ルクス君、これは?」

「エスタさんは石を集めていたと思ったので、手持ちの物から少しだけですけど……要りませんか?」

「いやー、収集しているから嬉しいんだけど、売れるんだよ? これ」

「僕も川で拾った物だし、高そうな物は確保してあるので気にしなくて良いですよ」


 と、何も入っていないポケットを叩くと、その言動に多少は納得した様だ。

 さて、……前に調合道具あげているユアンナだが、予想通りというかこちら側に混ざれないでいる。さっきからずっと無言だし、一歩引いてこちらを窺っているだけだ。

 そこまで気にする事も無いんだろうけど、こういうのって好きじゃないんだよな。



「あと、最後にもう一個ありまして」

「なになにー?」

「首飾りなんですけど、良かったら受け取ってもらえますか?」


 以前、後々の事を考えて、アクセサリーを作って生活資金を稼ごうとした時に作った物だが、どうもこういうセンスは無かった様で……。

 結局、銀製の試作品を数個作っただけで『収納庫』に入れたままだったけど、良い機会だから放出してしまおう。同じく銀製の指輪もあるが、なんとなくそれは良くない気がした。


 ともあれ、エスタには水滴型、ヴェーラには菱形、そしてユアンナには長方形のプレート型の物を手渡していく。

 ユアンナは自分にもあるのかと驚いた表情だったが、次第に笑顔へと変わっていく。

 やっぱり三人とも笑っていた方が良いな。

 まあ、物で釣った感じはあるが、女性を笑わせる話術なんて持ち合わせていないので仕方のない事だ。


 その後は恒例になりつつある抱擁のお礼を順番に頂いたが、今日は革鎧も獣臭さも無く大変素晴らしい物でした。

 西都行きが無かったら良かったのに……。なんて事を言っても仕方ないので、背負子を背負って全員で宿を出る。



「あ、ルクス、ちょっと待って」

「はい?」

「これ、……お弁当なんだけど、三人で……作ったから」

「あれだけ貰った後じゃ見劣りするけどー、良かったらお昼にでも食べてよ」

「いえ、どこかで買おうと思っていたので助かります」

「そう言ってくれると嬉しいわ。それじゃ、気をつけてね」

「はい、皆さんもお元気で」

「近くを通る時は寄ってねー」

「創造と万物の神アトエラ様の……加護がありますように」


 こうして、偶然出会った三人と、色々とあったモルダイの街に別れを告げる。

 ……あの三人が居た施設で崇めているのが創造神様だったり、この街のいたる所に白い円柱の神像、……創造神様を模した像が置かれたりしているのも、全て偶然だろう。


 ……偶然って怖いなあ――。


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