53.モルダイ2
冒険者組合に薬を卸し、懐も暖まったところで報告書を書き終えたヴェーラと合流した。
「おまたせ、そっちの方も終わったようね」
「ヴェーラ……見て見て」
「なに? ユアンナ…………え? どうしたのこれ」
「薬を卸したお金……こんな額はじめて」
手には銅貨と小銅貨が合わせて数十枚乗っている。
そこまで大金とは言えないかもしれないが、自分で稼いだのだから嬉しくない訳が無いだろう。それに、いつもの五倍らしいからな。
「どうするー? どっかで食べてく? それとも家で?」
「そうね、とりあえず荷物を置きに一旦帰りましょうか」
「ルクスは……どうするの?」
「ルクスも一旦、家に荷物を置いたら? 街を見るにも、宿を探すにもその荷物じゃ大変でしょう?」
「うーん、そうですね。お言葉に甘えさせて頂きます」
背負った荷物は大して苦ではないが、固辞するのもなんか変だしな。
それにユアンナに渡す物もあるし、家に寄らせてもらった方が都合がいい。
「先に言っておくけど、子供が多くて騒がしいかもしれないから、そこは我慢してね」
「子供ですか……ええ、大丈夫ですよ」
会話から察するに共同生活を送っているんだろうが、誰かの子供かな? 実は三人とも旦那さんや子供が居たり?
三人とも成人しているし、別におかしくは無いんだけど……意外だ。
そう言えば、ヴェーラが子供云々と言っていたのは、すでに子供がたくさん居るから困るって事だったのかも……なるほどな、合点がいったよ。
ともあれ、その家に寄るために三人の後を付いていくが、街の中心からは少し離れているのか、人通りも少なくなり辺りの雰囲気も変わってきた。
と、前の三人が急に止まったので、背中にぶつかってしまった。
「すみません、考え事をしてたんで……」
「ほらルクス君、着いたよー」
「ここが私達の家よ」
「はあ……やっと着いた」
綺麗とは言い難いが随分とでかい建物だな、窓の感じからすると二階建て……というか倉庫っぽいかな?
「随分と大きな建物ですが、良いですね……この雰囲気」
「古い建物だけど、少しずつ手を入れながら住んでいるのよ」
トラル村にあった商業組合の倉庫に近い造りだが……なんと言うか、秘密基地とか隠れ家とか普通とは違う感じっていうのはテンションが上がるな。
周囲には腰くらいまでの柵があるけど、建物に比べて敷地も少し広めだから圧迫感は少なめだ。
「ねえー、家の前で突っ立ってないで早く入らない?」
……確かに。
◆
「「「ただいまー」」」
「あっ、姉ちゃんたちだっ!」
三人の揃った声に釣られて、奥から子供達が出て……来る……。
多いとは聞いていたけど、十人越えてるんじゃないか?
「ヴェーラ、エスタ、ユアンナ、おかえりなさい、ご苦労さま」
「ただいま、スミィ姉さん」
そんな子供達に混ざって大人も一人出てきたが、なんとヴェーラのお姉さん!
……なんて、ここまで来れば大体の察しは付く。
恐らくは孤児達を集めている民営の施設とかだろうな。
病気や怪我で亡くなる人も多いらしく、孤児もまだまだ多いと祖父母も言っていたし。
「あー、しらない男がいる! 借金とりかっ」
「こら、お客さんだから……失礼なこと言わないの」
「お姉ちゃん達がお世話になったんだから、あまり酷い事を言っちゃ駄目よ?」
借金取りが来るのかよ……こういう施設ではテンプレだけどさ。
「子供ばかりでびっくりしたでしょー、ちょっとうるさいけど、そのうち落ち着くから」
「賑やかで良いんじゃないですか?」
子供が騒ぐのは、赤ん坊が泣くのと同じくらい当たり前の事だからな。
まあ、それを躾けるのは親の役目だが、ここはこの子らの家なんだから、我慢や畏まる必要は無いだろう。
「あら、お客さんがいるのね」
「途中で知り合ったんだけど、街を歩くのに荷物が邪魔だし私達も着替えたかったからね。どこかに荷物を置いてあげて欲しいんだけど良い?」
「それなら空き部屋に置いてもらったらどうかしら?」
「うん、分かったわ。ありがとう、姉さん」
簡単に許可が出たな。
とはいえ、このまま上がり込むのもなんだし、挨拶くらいはしておかないと。
「はじめまして、五等級冒険者のルクスです。少しの間ですが、場所をお借りします」
「ええ、大した場所では無いけれど、ゆっくりとしていって下さいね」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
こんなに子供が居るなら手土産でも持って来れば良かったかな?
今からでも『収納庫』にあるビスケットとか……いや、不自然すぎるか。
まあ、宿を探しに街へ出たら、その時に何か見繕えばいいか。




