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帰れなかった勇者の新・異世界生活  作者: 乙三
西都への旅編
52/79

50.野営2


「さて、今日は誰が作る?」


 野営用の火と簡単なテントを設置し終えた所で、ヴェーラが次の段階に話を移すが、その一言でエスタとユアンナの動きが止まる。恐らく晩飯の事だろうけど、二人の様子から料理が得意ではないようだ。

 


「それじゃ、僕がやろうかな。ただ守られているだけの荷物扱いは嫌だからね」

「え? ルクス君、料理できるの?」

「簡単な物なら。食材を見ても良い?」


 野菜が数種類に干し肉、パンと水に……調味料は塩だけか。

 足りない分は俺の物を使うとして、結構固い黒パンなのでスープは必須だろうな……。というか、スープ以外の選択肢が無い材料だ。


 

「これで二日……四食分?」

「そうよ、足りる様に買ったのだけど……足りない?」

「ううん、十分な量だけど確認はしておかないとね」


 調子に乗って使いすぎたら後が悲惨だし、日持ちしない物から使わないと……今日はトマトとキャベツのスープで良いかな。

 

 まあ、お荷物扱いが嫌なのも確かだけど、鍛冶屋のドラッツ親子に作ってもらったフライパンと包丁に、木工職人のベルナールに作ってもらったまな板を使いたいっていのが大きかったりもするが。

 

 まずはトマトのヘタを取って直火でさっと炙り、細かい毛を処理してからキャベツの芯と一緒にみじん切りにして、手持ちの動物油で炒めていく。


 

「……そこも食べるの?」

キャベツ(フルベー)の芯は分かるけど、トマト(マルソ)のヘタも食べれるんだー」


 こういうのは使用人のバーノンやハストに教えてもらったし、地球での自炊経験も役に立っているな。

 

「トマトのヘタは食べ過ぎると良くないけど、少量なら肌に良いらしいですよ」

「……肌に……食べ過ぎってどの位? ……どの位食べたら駄目なの?」

「料理に使う量なら大丈夫みたい。それこそ一デムとか十デムを一度に食べなければ平気らしいよ」

「一デム……小ダル一本分」

 

 デムは重さの単位だけど、俺の体重が大体二デムで健康な大人の男性が三デム位らしいから、たぶん一デムは二十キロくらいだろう。

 水、一リットルで換算すればとかも考えたけど、そもそも一リットルを量る物が無いんだよな……。

 と、キャベツの芯に火が通ったので、他の具材も軽く炒めてから鍋に移して、干し肉や調味料と一緒に煮込んでいく。


 

「あら、良い匂いね。もう完成?」

「もうちょっとかな」

「ヴェーラ、……見張りの打ち合わせは終わったの?」

「ええ、まずは右側の人達と私達の内の二人、夜中からは左の人達と私達の残りの二人ね」

 

 これも野営では当然の事らしく、そこに居る全員で分担して夜番を立てる様だ。

 初対面の人に任せるのは不安だが、この中の二人も加わるなら多少は安心出来るか。



「あ、もうそろそろ良いかも……ちょっと味見してみて」

「うん、問題ないわよ」

「私はもっとガツンと来る方が良いかなー」

「もうちょっと……味を濃く……」


 俺は丁度良いと思ったが……まあ、味の好みなんてこんなもんだよな。

 全員が全員『美味い!』なんて物はそう簡単には作れないんだよ……。

 でも、料理担当としてこのままでは心持が良くないので、塩と動物油を少量追加し、隠し味に自作した川魚の魚粉も少し混ぜて、要望に近付くように手を入れてみる。 


「あら、美味しい」

「もっと肉が食べたい! でも、まあこんなもんかなー」

「うん……大丈夫かな……」


 何とか及第点は貰えた様だ。

 まあ、明日は俺の食材も出す予定だし、もう少し美味い物を用意できるだろう。


◆ 


「――さて、みんな食べ終わった所で、夜番の順番を決めるわよ」

「私はまだ眠くないから先かなー」

「私は……どっちでも良い」

「僕もどちらでも構わないですよ」

「それなら、エスタとユアンナが先で、私とルクスが後で良いわね」


 年長者として不安要素のある子供と組むのは妥当だろうな。

 まあ、実際はそんな心配無いんだが、何かを教えてもらうのにもヴェーラが一番良いだろうし、特に反対は無いな。


「えー、ヴェーラずるーい!」

「調合の事……聞きたかったのに」

「そう言われても、……ねえ」


 と、ヴェーラは俺に視線を向ける……なぜこっちに振るんだよ。

 それじゃ、俺とヴェーラが示し合わせて決めた様な感じになるじゃないか。



「……ほら、僕の実力が分からないから、二人と組ませて良いか判断出来ないんじゃないかな」

「そうね、ルクスがどの位出来るのかも判断しなきゃいけないし、必要なら教えなきゃいけないし。それに夜番は明日だってあるんだから……ね?」


 そう言われては仕方無いと、二人は渋々だが諦めてくれたようだ。

 俺と話したってそんなに面白い事は無いと思うぞ?

 ともあれ、食器などを軽く整理し、俺とヴェーラは天幕で眠る事にする。


 そういえば、魔法で何とかなると思って天幕は買ってなかった……というか、天幕という発想自体が無かった。

 同道している三人は各々に天幕を携行していて、今は睡眠用、荷物用、トイレの目隠し用と使い分けているし、旅人として持っていないのは不自然な気がしてきたな。

 次の宿場で売っていれば良いんだが――。


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