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帰れなかった勇者の新・異世界生活  作者: 乙三
西都への旅編
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48.出立の朝

 翌朝、軽く身支度を整えて朝食をとっていると、件の三人も二階から降りて来た。

 すでに昨夜の様なラフな格好ではなく、しっかりとした厚手の衣服に身を包んでおり、この上に革鎧をまとえば一端(いっぱし)の冒険者の完成となるだろう。



「皆さん、おはようございます」

「ええ、ルクスもおはよう」

「おはよー」

「……おはよう」


 朝の挨拶もそこそこに、朝食を食べながら今日の予定を組む事にする。

 次の宿場があるヘイダムまでは三日、およそ九十キロの距離あるから一日四十五キロの移動で二日か……。

 とりあえず一日は野営をする事になるから、その分の物資を買って、三日の道程を二日で移動したい。

 整備されて無い道なら楽しむ事も出来るが、ここら辺は綺麗に管理されている道なので面白くないんだよな。

 

 ルッキラから見えていた山の裾野も近くなってきたし、地図で見る限りではヘイダムの先は森も隣接している様で退屈しないと思うが……手っ取り早く走って行きたいけど、少しは自重しないとな。



「ねえルクス、ちょっと良い?」

「何です? ヴェーラさん」

「今日の予定って決まってる? 私達も同じ方向だし、もし良かったら一緒に行動しない?」


 今、計画を練り終えたばかりなんだが……。

 それに同行者がいると、移動速度を合わせなきゃいけないし……って、駄目だ駄目だ。

 こんな自分本位じゃ、勇者時代のぼっち生活と同じになるじゃないか。

勇者時代と違って迫害されていない世界なのに、自分からぼっちコースを選んでどうするんだよ――。

 


「……そうですね、何事も経験ですし同行させてもらえますか?」

「ええ、こちらこそよろしくね」

「おっ! 旅の仲間が増えたー」

「……うん、良かった。ルクス一人じゃ危ないし、調合も教えて貰える」


 なんか、調合を教える為だけの同行のような気が……。

 まあ、いいか。こういう我慢も経験だし、集団生活も学校に行ったら役に立つだろう。



「しかし、ヴェーラが男を同道させるとはねー」

「男って、……まだ子供じゃない」

「いやいや、ルクス君だって男だよ? 私の胸をちらちら見てるしー」


 くっ……なぜばれた。いや、問題はそこじゃない……考えるべきは今後の対応だ。

 『はあ? 見てねーし、そもそも興味無いし』って無関心を装うか? 

……そういえば、女性はそう言う視線に敏感だと聞いた記憶があるから、嘘を吐くのは下策だろうな。



「あ、あははは……」


 駄目だ……何も思い浮かばなくて、結局笑って誤魔化す事しか出来なかった。

 でもね、俺はいま十二歳……そう言う事に興味があって当然じゃ無いだろうか。



「まあ、男の子って言うのはそう言うもんだからねー。それに、まったく見られないって言うのも、女として悲しいしー」


 と、エスタは一定の理解を示した物の、胸の下で腕を組んで軽く持ち上げながら、ヴェーラとユアンナの二人に対して誇示する様に振舞う……なぜそこで煽るのか。

 激昂する二人と、どこ吹く風のエスタ……さすがにこれには混ざれないので、食器を片付けて静かに部屋に戻ろうとすると、後ろから肩を掴まれた。



「少ししたら……準備を整えて宿の前に集合……だから」

「……はい、わかりました」


 ユアンナの何気ない台詞だったが、『おまえ、後で体育館裏な』と、そんな情景が浮かんだのは気のせいだと思いたい。


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