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帰れなかった勇者の新・異世界生活  作者: 乙三
少年期編
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39.マッサージ


 リトナとノグマスの訓練をしてから五日が経ち、今日はその成果を確認する日だ。

 正直な所、五日程度じゃ数パーセントの上昇が良い所だろうと思っていたが――。



「どうでしょうか、少しは魔力も大きくなった様な気がしているんですけど」

「うん、本当に大きくなっているよ」


 ノグマスは、魔力もさる事ながら魔力量も一割近く増えていた。

 他人(ひと)の上限や回復量がどの位なのかは分からないけど、成長率としては上々じゃないだろうか。



「私の方はどうですか? 自分では良く分からなくて」

「リトナさんは残念だけど…………元々の量から、倍ぐらいになってるよ」


 この伸び率は異常じゃないか? 本人は至って平常な様だが……。

 しかし、自分の能力が把握できていない方が問題だな。

 まあ、魔力の全体量が上がれば、自ずと分かる様になるだろう。



「残念ってなんでですかー? もしかして魔法で腰や肩をほぐさないと駄目だからですか?」

「え? まあ、あれはやってあげるつもりだったから良いんだけど」


 そんな約束したか? したようなしてないような……まあいいか。

 さて、魔力量に関してはこのまま各々で鍛錬して貰えば良いとして、次はどうするかな……これで終りと言うのも味気無いし。



「魔力量を増やすのは、このまま二人に任せるとして、今日は魔力を使ってみる?」

「もしかして魔法ですか? ついに私も魔法使いに?」

「いや、魔法陣だよ。リトナさんはやった事あるでしょ?」

「ああ、あの火の……」


 魔力の充填にも役に立つから今回はコツを教えたが、リトナはもちろんノグマスもまだまだ上手くいかない様だな……まあ、初めてなんだし仕方ないけど。



「ふう、これ以上やると、また気分が悪くなる気がします……」


 リトナの魔力の残りは五か……こういう感覚は鋭いんだな。


「うん、リトナさんはもう止めておいた方が良いかな。それでも前よりは長持ちしたのが実感できたでしょ?」

「はい、これで夢に一歩近づけたと思います」


 夢? そういえば魔法を使いたがっていたもんな……もっと魔力総量が増えたら、『基本魔法大全』を読ませて魔法を覚えさせるのもアリかもな。



「ノグマスさんはどうする?」

「わたしも疲れたので、この辺りで止めておこうと思います」


 ノグマスの魔力残量は八十位か。リトナと同じ回数だけやったはずだけど、無駄が多いから消費するのも早いな。

 どうもノグマスは細かい調整が苦手なようだが、それも追々で良いだろう……焦ったって仕方のない事だし。



「それじゃあ、今日はこの位で終わりにしようか」

「「…………」」

「……ああ、身体をほぐすやつね。大丈夫、ちゃんとやるから。……お母さん達も入って来たら?」


 部屋の外、階段の所で聞き耳を立てていた三人にも声を掛ける。



「あらあら、ルクスには気付かれていたようね」

「ルクス君が何もしなくて良かったわ。ほら、お母様、ルクス君はあんな事しないんだから」

「申し訳ございませんでした、ルクシアール様」


 母と姉とキーシャが素直に部屋へと入ってきた。

 どうせ不埒な事でもするのかと張っていたんだろうが……さすがに扉や窓を開けたままでそんな事はしないよ。



「それで、魔法の方は終わった様だけれど、これから何をするのかしら?」

「まさか、私とお母様やキーシャさんも…………」


 思春期な姉は放っておいて、母を椅子に座らせて両肩に手を置き、マッサージをしてあげる。

 母の胸はアレだから結構凝るだろうし。



「あら、魔道具も良かったけれど、これも良いわね……西都で受けた治療よりも良いかも知れないわ」

 

 短時間だが、マッサージが終わって軽く肩を回す母……その仕草はオバサンっぽいから止めて下さい。

 

「西都には魔法を使った治療があるの?」

「怪我とか病気とかでなら魔法の治療もあるけれけど、こういうのでは無いわね。指で押したり叩いたり揉んだり……確か、手技(しゅぎ)療術(りょうじゅつ)院だったかしら」


 手技療術院か……似た様な所だと、俺も十分千円の所に行ってたよ……と、母のマッサージが終わったので、次はキーシャかな。

 リトナとノグマスには悪いけど、少し待ってもらう事にして……姉はぷにぷにだったから必要ないだろう。



「――えーっと、キーシャさん……これ」

「……ええ、長年の事ですので」


 長年頑張ってくれているキーシャの肩に触ってみたが、ガチガチじゃないか……これはたぶん駄目なレベルだよ。

 一応はマッサージをしたが、急激にやるのは良くないと思ったので全体を軽めに。

 面倒臭いとか色々と思う所はあるけれど、これは早急に風呂を作らないと……。


 その後はリトナの肩と腰、ノグマスの背中と腰をマッサージして、ぷにぷにの姉も一応やってあげた……そして夜。



「お父さん、お風呂を作りたい」

「ん? 急にどうしたんだい?」

「駄目?」

「うーん、駄目ではないが資材とか職人とかの事を考えると、春にならないと難しいかもなあ」

「そこは土魔法で作っちゃおうかと思ってるんだけど」

「そうか、……場所はどこにするか考えているのかな?」

「厩舎の前に、衛兵さん達の詰め所があったでしょ? 移築して空いたままだから、あそこに作ろうかなって。建物が繋がってないから外を歩く事になっちゃうけど、一番近い洗濯場から屋根付きの道を作れば大丈夫だと思う」

「なるほど……」


 父は目を閉じて、恐らくは利用する際の順路などを想像しているのだろう。

 まあ、どうせ魔法で作るんだから、不具合があったらその都度直して行けば良いだけだし。



「まあ、ルクスの言い出した事だから、私が考えても仕方の無いことだろけど……分かったよ、好きにしなさい」

「うん、ありがとう。とりあえずは二年だけだから、終わったらちゃんと元に戻すからね」


 お湯を張ったりするのは魔法でやるけど、魔法以外の方法では現実的じゃないからな。

 なので、とりあえずは俺が学校に入るまでの約二年間になってしまうが、それまでには代案も浮かぶかもしれないし、応急策と考えれば上々だろうさ。

 

 ここまで話を持ってくるまでに頭の中で大まかな構造は考えてあるが、所詮は素人の考えた物なので、後は実際に使ってみてから修正を入れていけば良いだろう。


 ともかく、明日から製作開始だ。

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