37.風評被害の続き
さて、晩飯までは時間もあるし、壊れた魔道具を分解するか。
まずは、すでに本体と蓄魔石が外れているヤツから、大体の構造を把握する事にする。
簡単に確認してみたが、本体の銀色部分は全てが金属製ではなく、内側は木製部品に金属製のカバーを被せている構造だった。
そして、蓄魔石とは樹脂のような接着剤で付けているだけの様だ。
スイッチの部分には魔法陣が描かれており、スイッチを押す事で魔法陣が完成して動作するという仕組みで、スイッチの反発はバネとかが仕込まれているかと思ったけど、糸のテンションを利用して押し返していた……随分と簡素で原始的だな――。
色々と試してみたが、スイッチの部分が魔法を発現させる魔法陣で、その魔法陣と線で繋がっている先の印が発現箇所になる様だ。
蓄魔石の刻印は放出魔力に制限を掛ける物らしい……直接魔法陣に魔力を流したら火柱が立ち昇ったからな。
「ルクシアール様、よろしいでしょうか」
「どうぞー」
構造解析が終わって、これからどうしようか考えているとノックの音が。
この声はリトナだけど何かあったかな?
「どうしたの?」
「食料庫にある、冷風の魔道具への魔力充填を忘れておりまして」
「ああ、そう言えば……分かった、すぐ行くよ」
「よろしくお願いします……それって魔法陣ですか?」
「そうだよ。火魔法の魔法陣……使ってみる?」
火魔法の魔法陣を書き写した、木の板を差し出してみる。
感覚が鋭くなったのか、他人の魔力も詳細に感じ取れる様になったお陰で、魔力を持っていないと思っていた人にも、僅かながらの魔力がある事が分かる様になった。
「え? 私、魔力はありませんが……」
「大丈夫、リトナさんも魔力は持ってるよ。数字にすると二十くらい」
「そうなんですか? ちなみにルクシアール様は?」
「うーん、その基準に合わせると千とか万とかかな」
実際はもっと上だけど……まあ、この位なら常人とはいかなくても、魔法が得意という加護や恩恵持ちの範疇に収まるだろう。
「この魔法陣に触れて、指先に意識を集中して不思議な力を使う様に……ほら、点いた」
火魔法の魔道具よりも小さい火だが、確かにリトナの魔力でつけた物だ。
リトナも火を確認した所で、板を下げて魔法陣から指を強制的に離す。もっと続けさせてあげたいけれど、元々魔力が少ないし使い方も下手だから、もう半分以上も使ってしまっている。
「凄い! 私にも魔法が! ……あれ、気分が…………」
「残念だけど、魔力量低下による倦怠感だね。今はここが限界って事だよ」
それに魔法じゃないけど……なんて空気を壊すような事はいえないな。
「それじゃ、私も訓練したらもっと使える様になるんですか?」
「どうだろう……可能性は無いとは言えないけど」
「ちなみにノグマスは、どの位の魔力があるんですか?」
「ああ、数字? 今の段階で二百って所かな。ちなみに、火魔法の魔道具に目一杯入れられる魔力は百五十位だよ」
「くっ、十倍も……ちなみにですけど、他の方はどのくらいなんですか?」
「みんな三以下だね、多い人でも五とかかな」
「私、凄いじゃないですか! 四倍ですよ四倍!」
ノグマスは、その凄いリトナの十倍なのを忘れているんじゃ……。
「ルクシアール様、旦那様にお願いして頂けませんか?」
「……リトナさんにも魔力があるから、ノグマスと一緒に訓練させろって?」
「そうです、そうです。さすがに私から旦那様にお願いは出来ませんので……」
うーん……まあ、一人より二人だし、可能性は否定できないからな。
「うん、分かった。今日の夜にでもお願いしてみるよ……さて、そろそろ行こうか」
「よろしくお願いします。って、どこか行かれるのですか?」
「…………リトナさんは、僕の部屋に何の用事で来たの?」
◆
その夜、夕食の後に父に先ほどの事を話したが……。
「私の魔力はどうなんだい?」
「ねえ、ルクス君、わたしは?」
「あらあら」
と、みな自分の事が知りたいみたいだ。
「残念だけど、お父さんは一で、お母さんとお姉ちゃんは二だよ」
「そうか…………まあ、リトナの件は分かった。ノグマスとは別にするのかな?」
「一緒で良いよ、都合が合わなければ仕方ないけど」
「でも、リトナに監視……付き添いしてもらおうと思っていたけれど、どうしようかしら」
「ルクス君とノグマスさんが、二人にならなければ良いんじゃないの?」
「ウルト、それはね――」
母は姉に耳打ちして何かを……こう言うのも性教育の一環なのか?
俺をだしにして、姉の反応を見て遊んでいるだけという線も捨て切れないが。
「ルクス君、最低!」
……風評被害、甚だしいな。
公私共に忙しくなってきた。。。




