36.魔道具2
二階で魔道具をテーブルに広げながらも、まずは所持している物と同じ種類を取り分けていく。
火魔法の魔道具は結構あるな。形も簡単だし用途も広いから量産したのだろうけど……。と、その中の一つが壊れていて、本体と蓄魔石が外れている。
おお、中にはなにやら刻印術式らしき物が! いつかは分解しようと思っていたが、これは俺の方でキープだな。
「あ、ルクス君、これって風のヤツでしょ? 魔力入れてー」
「はいはい」
姉が取ったのは、微妙な風しか出ない風魔法の魔道具だが、いちおう『鑑定』で破損がない事を確認してから魔力を注ぐ。
「お父さんやお母さんと話をしてたみたいだけど、もう良いの?」
「うん、もう大丈夫―」
何が大丈夫なんだか……。
あ、水魔法の魔道具……滴り落ちる程度の水が出るボールペンだけど、これも多い。
しかし風にしろ、この水にしろ、本当は何の為に使う物なんだろう。
どんな効果が発現するのかは『鑑定』で分かるが、何に使うのか分からないのが残念だよな。
「あー、ルクス」
「何? お父さん」
「さっきの……ノグマスの事なんだけどね、条件がついてしまうが構わないかな?」
「その条件について聞かないとなんとも言えないよ」
なんだよ、まだ何か勘繰っているのか?
「そうだな、まず二人きりになるのは禁止だ。それで、誰かしらを立会いさせる事と、時間は日が昇っている間である事。これがウルトや母さんが決めた条件だな」
「うん、それ位なら問題ないよ」
「…………二人きりじゃなくても良いのかい?」
「良いよ別に。魔力の動かし方を教えるだけだからね」
「……そうか? まあ、それで良いならいいが」
なんか、色々と勘違いしてそうで怖いな。
本当の十歳くらいならドキドキの個人レッスンなんだろうけど、中身は初老と言っていい年齢だからな……ここ数年、多少は精神が肉体に引っ張られている感じはあるものの、それでも十代とかは子供としか見えないんだよな、現状では。
さて、リトナが補充待ちの魔道具と共にお茶のセットを持ってきたので、そろそろ始めるかな。
「準備できたけどどうする? 適当に始めて良いかな?」
「ああ、ルクスに任せるよ」
「それじゃあ、まずはこれかな」
そう、手に取ったのは銀色の警棒の様な物で、『鑑定』で見た名前は雷棒。
スタンガン内蔵の警棒みたいな扱いが出来れば、非殺傷系の武器をして有効だよな。
そう思って、早速魔力を充填してからスイッチを押すが何の反応も無い……。恐る恐る先端部分に触っても、金属の冷たさが伝わる程度で特に変化も無い……壊れてる?
「あ、ルクス君の髪が……」
姉がこちらを指差して……髪? と、自分で触ってみると、いつの間にかぼさぼさに。
…………これって、あれじゃないか? 静電気。
「お父さん、ちょっと僕の手に触ってみてよ」
「ん? 構わないが…………痛っ!」
パチンという音と共に父へと放電した。やっぱり静電気か……いや、確かに雷も静電気だけどさ……。
「今のはなんだい?」
「この魔道具の効果だけど……」
ただの静電気発生装置? 何の役にも立たないじゃないか……いや、待てよ。
「お姉ちゃん、ちょっと手を握ってくれる?」
「嫌よ、パチンってなるんでしょ?」
「もう大丈夫だって。髪も元通りになってるでしょ?」
疑り深い姉の手を強引にとってスイッチを押すと、徐々に姉の髪が持ち上がっていく。
「ちょっと、これ何? ねえ、ルクス君?」
「ふ……ふふ、髪の毛が持ち上がる魔道具?」
ふわふわの髪の毛が、帯電して放射状に広がっていく。
姉は髪の動きを片手では抑えきれなくなり、俺と手を話して母の元へ…………ふふ、パチンとこちらまで聞こえた。
「そ、それで、ルクス。これは何なんだい?」
「多分、雷の魔道具じゃないかな。何処かの本で見た、雷の話と同じだったから」
と、笑いを堪えている父に説明する……何処かの本で見たというのは嘘だけど。
「それで、これはなんの役に立つんだろうか……ルクスはどういう使い方の物だと思う?」
「イタズラとか……おもしろ道具じゃないかな」
「え?」
「だって、痛いと言っても一瞬だし怪我もしないし、びっくりする位じゃない?」
「確かにそうだけど……そんな物を作るのかな」
まあ、揮発性の高いガソリンに着火するとかなら利用できるだろうけど、それなら火魔法の魔道具で十分だしな。
しかし、これを作った人は何を思ってこんな物を……こんな程度じゃ虫だって……。
「虫を気絶とか……夏の蛾とかなら…………無理かなやっぱり」
「……夏まで待つしかないようだね」
まあいい、次だよ次。と、意気込んでは見た物の……。
文庫本サイズのポケットカイロや、湯気が立ち上る程度の卓上加湿器に、排気を目的としたレンガ大の換気扇など……あったら一見便利そうだけど、スイッチを押していないと動作しない為、いまいち微妙な道具が続く。
プッシュ式じゃなくスライド式のスイッチだったらまだ使えるんだけどな。
志向性を持たせた光を放つ円柱状の懐中電灯や、先端から粘土が出る粘土ペンは有用性があるので当りかな?
ゆっくりと回転する円形の台座は、まったく意味が分からない。飾り台だと思うけど、スイッチを押したままじゃないと動かないし……そもそもフィギュアとかが当たり前の様に売っている世界じゃないし。
あとは小刻みに振動する卵大の物…………ピンク的な物ではなく、マッサージ器だと思いたい。何より、誰も使っていない事を願わずにはいられない。
「今回のは微妙な物が多いね」
「そうかい? 光の物や粘土の物は凄く便利だし、他の物だって使い方によっては素晴らしい物だと思うんだが」
「そうね、お母さんは湯気のが良いと思ったわ、乾燥を防げるんですもの。あとは振動する物も、肩とかに当てると気持ち良かったわ」
「それじゃあ、その二つはお母さんとウルト姉ちゃんに……お父さんは今も離さない暖かくなるヤツでしょ? 光のと粘土のは、使用人さん達に持たせた方が上手く使ってくれるかな」
雷棒と換気扇と回る台座は倉庫行きだな……。
俺は壊れたライターと、他にもあった動作不良品があれば十分だし。
「余った物は倉庫に入れておいて、必要な人が使えば良いかな」
「ルクスはそれで良いのかい? ルクスのお金で買ったのだから、ほとんどを家の物にするというのはどうもね」
「僕のお金って言ったって、元々は家のお金なんだから気にしなくても良いよ。まあ、何か必要になったらお願いすると思うけど」
「ああ、分かった。それで良いよ」
「お姉ちゃん、さっきの風魔法の魔道具はどうするの?」
「うーん、もう遊び終わったから良いかな」
じゃあこれも使用人行きだな。
しかし、前にリトナが言っていた『あったら便利だけど、無くてもそんなに困らない』って言葉が魔道具には本当にぴったりだな。
ともあれ、魔道具関係の検証も終わったし、残りは部屋に持ち帰って分解してみるか。




