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帰れなかった勇者の新・異世界生活  作者: 乙三
少年期編
27/79

25.依頼達成


 採集を終えて食事も済ませ組合へと戻る道中に、イナルから魔法の話を聞く事にする。



「そういえば五大要素以外はどうなの?」

「光と闇に星と月ですよね? 使えたけど正直良く分かりませんでした……光は照明とかに使えるけど、闇って何でしょう?」

「うーん、闇の神様の名前は知ってる?」

「『闇と命の神ノーツ』様ですよね…………あ、もしかして」

「闇は光を遮断し、精神を狂わせ死に至らしめる魔法なんだけど、傷を癒したりも出来る系統なのよ。別名、『生と死の神ノーツ』なんて言われるくらいに」

「それはまた難しそうですね……でも、光魔法も治療系統がありますよね?」

「光魔法の治療は、その人の持っている治癒力を高める魔法で、闇魔法の治療は傷そのものを治す魔法ってとこかしらね」



 光魔法の方は何となく理解出来る……。要は代謝や免疫力を上げるって事だろうが、闇の方は? 謎だな。



「そうね……例えば腕を魔物に喰われたとするでしょ?」


 と、俺の表情から理解できていない事を察したのか、イナルは更に説明を続けてくれる。

 しかし……嫌な例えだなあ。



「光魔法を使えば腕は無くなったままだけど、傷口は塞がり血も増えるのですぐに動ける。調合なんかで作られる回復薬もこれね」

「そうなんですね」


 調合で出来るなら帰って調べてみるか……。



「で、闇魔法の場合は、腕が生えて来る」

「……えっ? はい?」

「本当にびっくりよね……千切れた箇所から、にょきにょきって。でも、血は増えないから気をつけないと、血が足りなくなって最悪死んじゃう」

「ええー、便利なのか微妙な感じです」

「だから大抵は光魔法と同時に使われるわ。神様自体も双子神だし、上手いこと出来ているわね」


 光と闇が合わさって最強……違うか。

 しかし、情報量が多すぎて混乱しそうだ。

 古い本一冊分の知識しか無いから当然だけど……魔法関連の本も商業組合に頼んだら手に入るかな。

 あ、……資金が心許ない。



「そういう本って冒険者組合にも置いてありますかね」

「大きな支部、ここら辺だと西都なんかでは置いてあるけど、トラル村では残念だけど置いてなかったわね」

「そっか……西都か。…………あと二年半は無理か」

「二年半?」

「僕も西都の貴族学校に通う予定なので、そうしたら空いた時間で読みに行けますよね?」

「そう言えば貴族学校があったわね」


 片道一ヶ月掛かる西都……面倒臭いだけと思っていたが、少しは楽しみも出来たな。

 そもそも馬車で行く必要があるか? 少し早めに出れば徒歩でも良いはずだ……両親が許してくれればだけど。



「おーい、そろそろ魔法関連の話は無しにしといた方が良いぞ、もうすぐ境界だ」

「はい、ありがとうございます」


 ジャントラも秘密なのを理解してくれたので協力的だ。



「ルクシアール様、ご無事の帰還で何よりです」

「うん、ありがとう。採集依頼だけだし教育係もついてくれているから」

「二級や三級の冒険者なら頼もしいですな」


 領兵と簡単な挨拶を交わして領内に入る……はあ、大した事はしてないが一気に気が緩むな。

 自覚症状が無いだけで結構緊張もしていたのかもしれない。



「さて、組合まであと少しだ、がんばろー!」


 そんなサジュアの言葉に、少し気が締まる。気が抜けていたのを見透かされたかな?



「そういえば、朝に言ってた家っての、嘘じゃなかったんだな」

「うん、あそこが本当に僕の家ですよ」

「話題のディアレ家なんだから、ジャントラも少しは覚えておきなさいよ?」

「なんだよ話題って」

「あなたの大好きな『りばーし』はこの領で作られたのよ? あと『すとーぶ』も」

「まじかよ、どうして黙ってたんだ?」

「先に言ったら仕事に支障が出ると思ったからね。そうよね発明家のルクシアール君?」

「え? どうして……」

「商業組合に行けば、誰でも登録書の写しを見る事が出来るのよ?」


 まじかー、それは知らなかった。

 って事は、そういう関連の人は俺の名前を知っているわけだ……これは気を付けないと。



「なんだ、それじゃ両方ともルクスが考えたのか?」

「ええ、まあ」

「そりゃ、たいしたもんだ。もしかすると俺らより金持ちなんじゃねえか?」

「いえ、ストーブに関しての利益は小銅貨二枚ですし、リバーシの方は殆どが領費になってるから」

「はあ? 小銅貨二枚? あれだけの物を作ってか?」


 ……あれだけの物を作ったのにです。

 


「権利の貸与費が十五年で小銅貨一枚。他に、一個売れたら小銅貨一枚の売買利益が出るけど、それを次に販売する物の価格に寄付する契約にしたので、権利が失効する直前に売れた物の売買利益、小銅貨一枚が八年後に支払われる予定です」

「はあ……勿体無い。どれだけ稼げると思ってるんだよ」

「もともと安く普及させるのが目的だったので、僕が儲ける訳には行きませんよ」

「なんだよ、聖人様かよ」

「そういう考え方が出来るルクス君のお陰で、国内の凍死者数も激減している様だし、良いじゃない」


 父さんもそんな事を言っていたっけ。国策になったお陰で鉄や薪の価格も大きな変動は無い様だし……国庫にはダメージがあるかもしれないが、長い目で見れば死ななかった人からの納税分で回収できるだろう。



「あ、権利で思い出したけど、今日って何日ですっけ」

「星の……三十日かな? それがどうした?」

「もうすぐリバーシの権利が切れるんだけど、それで商業組合が売るのを渋っているのかもしれないなーって」

「ん? 何の話だ?」

「商隊の護衛でここに来て、組合と揉めてるって……それじゃないかな」

「いや、悪い。話が見えないんだが」

「つまりは、自分達の取り分を増やす為に権利切れを待っている。だからいま売るのを渋っているかもって事ね」


 説明が下手な俺と理解できないジャントラの為に、イナルが要約してくれた。



「うん、確か三十五日に切れるから、在庫が無いとか言って、それまで伸ばすかもね」

「あー、とりあえずその辺はイナルに任せていいか?」

「はいはい、ひとまずそれは置いておいて、冒険者組合に行きましょうか」


 リバーシ関連じゃなければ良いけどな。

 そういえばサジュアは? ……真後ろに居た。



「あの、何してるんですか?」

「うーん、ルクスの観察?」

「……何も面白い事なんてありませんよ?」


 商業組合のミラもだったけど、獣人にはこういう習性でもあるんだろうか。

 程なくして冒険者組合についたので観察は終わったようだけど……。



「ルクス君、おかえりなさい。初の依頼はどうだった?」

「はい、皆さんに助けてもらったので、大丈夫だと思いますよ」


 俺の担当であるカルエナが、カウンターから手を振って出迎えてくれた。十歳の子供だし、多少は心配を掛けていたのかもな。

 ともあれ、手に持っていた布袋の中身をカウンターに出し、成果を証明する。



「これが依頼品のバエロッテの根っこです」

「はい、……あれ、十一個?」

「ああ、そうだった。一個は自分用に欲しいんですけど、ダメですか?」

「取りすぎは困るけど、一個位なら問題ないよ……でもこんな物、どうするの?」

「調合でもやってみようかなって」

「ルクス君、調合できるの? どの位の物が作れるの?」


 えらい食いつき様だな。調合師不足か何かか?


「いえ、これからの話ですよ、手に入った素材もこのバエロッテの根っこだけですし」

「そっかー、調合師のお爺さんが引退して、回復薬とか傷薬とかが足りなくてさー。今は商業組合や他の支部から買ってるんだけど高くて……」

「後継者とかは?」

「居るには居るんだけど質の方がね。まだまだ上級薬は難しいみたい」

「僕が調合を出来たとしても、きっとそれ以下だし、育つのを待ってあげた方が」

「そうだよねー」

「…………えっと、それで依頼の方は」


 完全に話の内容が変わってしまったので、多少強引だが元に戻す。

 後ろで教育係である『赤い馬』の皆さんも待っているし……。


「ああ、ゴメンね。品質の方は問題ないし数も大丈夫……はい、これが報酬の銅貨三枚ねー」

「はあ? ……あ、ごめんなさい。びっくりしちゃって」

「それは少なくて? それとも多くて?」

「もちろん多くてですよ、教育係が銅貨一枚なのに」

「ああ、それは――」


 説明によると、五、六等級向けの依頼には色をつけている様だ。

 依頼者、組合、冒険者のカンパから成り立っているもので、早く装備を整えさせる為の物らしい。

 俺の場合は必要無さそうだけど、初回という事で上乗せされた様だな。

 神殿住まいの孤児達からも冒険者になる者もいるようで、本来はそういう事情の子の方へ優先的に配分されるようだ。

 どの世界でも持ちつ持たれつなんだな……。



「ありがとうございます」


 昼過ぎという時間なのでそこまで多くは無いが、組合内に居る冒険者達へと頭を下げて謝意を告げる。

 顔を上げると、不自然に顔を背けて聞こえていない素振りをしていたり、急にストレッチを始めたりと違和感のある光景が目に映る。

 いやはや、恥ずかしがり屋さんばかりだな。


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