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帰れなかった勇者の新・異世界生活  作者: 乙三
少年期編
21/79

19.組合証


「あっ、ルクス君お帰りー。良い武器はあった?」


 そんなカルエナの問いに対し、左腰に提げた鉈の柄頭(つかがしら)に左手を置き、「はい」と答える。

 しかし、やはり語尾が……もう、俺が自分で脳内変換しちゃうか。



「それは良かったにゃ。そうそう、それでこれが君の階級章と組合証……説明は聞くかにゃ?」

「はい! お願いします」

 

 ……俄然やる気が湧いてくる、やっぱりこうじゃないと。

 それにしても説明を聞くかって、当たり前だしそれが仕事だろうに。


「まずは組合証だにゃ。これがあれば他の国の関所も通れるし、危険な立ち入り禁止区域も大丈夫。ただし、階級に合った場所ならって条件はあるから気を付けるにゃよ」

「なるほど……」


 このカードが身分証も兼ねてくれる訳だ。

 まあ、異世界あるある設定だよな。



「それで、これから契約してもらうから、指先を少し切って血をこれに付けるにゃ」


 そう言ってカードをひっくり返すと魔法陣が……、これは『雷と秩序の神メルス』様との契約か。

 カウンターには指先を切る為の刃物もあるが、借りた物で切るのは病気とかが怖いので、肩掛け鞄に手を入れ『収納庫』から父に貰った家紋入りの短剣を取り出し、それを使用する。

 指先から出た血を魔法陣に付けると、黒かったカードが一瞬で白く変わった。


「うん、これでこの組合証はルクス君の物になったから、失くさない様ににゃ。失くしたら再発行に銅貨五枚掛かるからにゃ」


 再発行でそんなに取るのかよ……高いなあ。

 

「あとは……まあ、詳しくはあそこの本に書いてあるから、暇な時にでも目を通しておいてにゃ」

「……はい」


 こいつ、面倒になったから説明するの省いたな。

 が、語尾のお陰で苛立ちも軽減されている……。


「次はこれにゃ、階級章。これは対外的に自分の等級を示す為の物だから、特別な効果は無いにゃー。どこか見やすい部分に付けておいてくれれば良いにゃ」

「分かりました……真っ黒なんですね」

「そうにゃ、よく見ると五等分されているのは分かる? 今のルクス君は六等級だから真っ黒だけど、五等級に上がればその中の一個が白くなるにゃ。四等級なら白いのが二個……そんな具合に階級が上がる毎に白い部分が増えて、一等級になると真っ白になるにゃ」

「じゃあ一番上が一等級なんですね」

「うーん、一級の上にも特級にゃんてのもあるけど、まあそれは関係ないにゃ」


 いや、ちゃんと説明しろよ……語尾は普通なのに、性格だけは猫っぽいのな。

 語尾のセルフ変換も疲れるし、そこそこ堪能できたのでこの辺りでオフに。



「とにかく、階級章に色が付いていたり、変な模様が入っていたりする人は特別だから、気をつけてね」

「ええ、分かりました」

「あとは…………あっ依頼書。こんな感じだけど大丈夫かな?」


 手渡された羊皮紙に目を通す。

 依頼内容は新人教育で、時間は朝から日没まで……教育内容は組合の依頼を使用する事……か。

 報酬は一日銅貨一枚って、安すぎて受ける人居ないんじゃないかな、これ。



「僕に関しての部分では問題ありませんが、こんな報酬で受けてくれる人って居るんですか?」

「うーん、暇潰しとかで受けてくれる人も居るよ。危険の少ない場所で新人と行動していれば、二、三日のご飯代が稼げるんだから」


 そんなもんなのか。


「それでも四等級以上向けの依頼だし、組合の評価もあるから受けられる人が少ないのも事実だけどね」


 そりゃ、信用ならない冒険者には任せられないよな。

 下手したら、粗雑に扱われて良いように使い潰されるだけだし。


「これから貼り出して、どの位で受けてもらえますかね」

「そうねー、早ければ依頼が始まるのは明日の朝かな。大抵三日以内には誰かが受けてくれると思うけど」


 今日貼り出してもらって、明日の朝に受け手が居なかったらソロプレイでもするか。

 何もしないで待つのも無駄だしな。

 とりあえず今日はここの本を読んで……ドラッツの所にも寄ろうかな。



 それから数時間、組合証や階級章をはじめ、この地域に根付いている動植物の基礎知識を詰め込んだ。

 特に、今の時期で俺の階級に関係ありそうな物などは念入りに……とうぜん調合に関係ありそうな物も含めてね。



「本、ありがとうございました。今日はそろそろ帰ろうと思います」

「はいはーい、それじゃ明日の朝に顔だしてね」


 いちおう、担当だと言うカルエナに声を掛けて、冒険者組合を後にする。

 まだ少し明るいしドラッツの鍛冶屋によってみる事にした。


「よう坊主、でかくなったなー。元気にしてたか?」

「はい、ドラッツさんもお元気そうで。ここに来る前にエルバさんの所にも寄ってきたんですよ」


 と、腰の鉈を見せる。


「ああ、それを買ったのか。形状は独特だが俺の自信作だ、大事にしてくれよ」

「もちろんですよ」


 それからはストーブの事や奥さんの話などを聞き、こちらも冒険者になった事も伝えた。



「それで、その鉈か……短剣の方が良いんじゃねえか?」

「まだ、そこまでの腕力が無いですから。それにドラッツさんやエルバさんも剣は作っていないようですし」

「うちでは作っていないが、鍛冶屋ならもう一軒あるじゃねえか」

「いやですよ、あんな質の悪い武器を使うのは」

「まあ、すとーぶの時もうちに頼んだくらいだ、坊主ならそうなんだろうな」


 俺を子供と侮るのは実際に子供だから仕方ない事だけど、こういう風に対等に扱ってくれる人とは良好な関係を維持したいと思う。

 それを抜きにしても腕は良いので、これからも頼らせてもらおう。

 

 短時間ではあったけど、昔話から始まり近況報告も済ませ、ドラッツの元を後にする。

 まだまだストーブ作りも忙しい様だし、邪魔しちゃ悪いからな。


 鍛冶屋を出る頃には日もだいぶ傾いていたので、そろそろ帰宅するか……。

 木工職人のベルや、雑貨屋のニリウの所へは後日と言う事で。


 


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