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帰れなかった勇者の新・異世界生活  作者: 乙三
少年期編
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18.武器

 武器を調達するために行動しようと思ったが……その前に逆方向だが神殿だな。

 神像に向って感謝をしているとは言っても、神殿に寄れる機会があるならそちらの方が良いだろうし。



「久しぶりじゃのう、元気でやっているかね」

「ご無沙汰しております、お陰さまで日々を楽しく過ごしております」


 神殿で祈りの姿勢をとった瞬間に、ここ神界へと招かれたが……何となくこうなりそうな気がしていたので、取り乱さずに済んだな。



「そうかそうか、それは何より」


 さて、今回はどんな事で呼ばれたのか……何かやらかしたか?



「いやいや、今回呼んだのは神像の件でな」

「……何か不味かったですかね。勝手に作っちゃダメだったとか」

「いや、そうではなくての…………実は、ベンクやテアルが欲しがってのう」

「ああ、そういう事でしたか。何かやらかして怒られるのかと思いましたよ」

「いやはや、すまんのう……」


 自分用にはまた作ればいいし、神様方が欲しいと思ってくれるならと、『収納庫』から三体の神像を取り出す。



「創造神様にも神像を奉納したいのですが、宜しいでしょうか」

「おお、そうか。うむ、ありがたく頂戴しよう」


 と、神像を奉じたら元の世界に帰って来れた…………本当に神像が欲しかっただけか、まあ良いけど。

 神殿ついでに祖父母にも顔を出しておいたが、まだまだ元気そうだったな。

 この世界での寿命は八十歳位だから、六十代半ばの祖父母もあと十数年は頑張ってくれるだろう。 


 さて、次は金物屋に行って武器になりそうな物を見繕わないと。



「おはようございます、どなたか居ませんか?」

「はーい、……いらっしゃいませ、今日はお使いかな?」


 そう出てきたのは、中年の女性……え? 店を間違えたか? しかしどこと無くエルバに似ている様な……顔を出さなかった数年でエルバに何が。



「おや、……もしかしてルクシアール様じゃありませんか?」

「ええ、お久しぶりです。エルバさん」


 女性の後ろから出てきたのは、正真正銘エルバだった……多忙になり精神的に追い詰められて、女装癖に目覚めた可能性もありだと思ったが、恐らくは母親だろう。

 よく見なくても体格とかは全然違うしな。



「ルクシアールさん……じゃあ、この人が『すとーぶ』の?」

「そうだよ、母さん」


 やっぱり母親だったか。エルバと同様の線の細い体で、温和な雰囲気を纏っている。

 しかしこの人がドラッツとねぇ……トラル村七不思議のひとつだな。



「はじめまして、ルクシアールです。エルバさんとドラッツさんには、以前お世話になりまして」

「あらあら、ご丁寧に。ドラッツの妻でエルバの母のケージアです」


 話を聞くに、どうやら体調を崩して西都の治療院に入院していたらしい。ドラッツはその費用捻出の為に店を売り、それで当時はここに住んでいた様だ。

 そこにストーブの話が舞い込み、治療費の問題も無くなったと……。

 

 触れがたい話題だったのでそのままにしていたが、店を閉めたのにはそんな理由があったのか。

 ともあれ、ケージアの具合も良くなったみたいだし、店も買い戻せた様なので良かったな。


 少しして、エルバやその母ケージアとの雑談も少し落ち着いた頃、ようやく本題へと話が移る。



「それで、今回はどの様な?」

「僕、今度冒険者になったんですけど、何か武器に使えそうな物は無いかなって」

「武器ですか、……申し訳ありませんが剣などは置いて無いんですよ」


 まあ、刃物は扱っているが生活用品主体の金物屋だからな。

 

 

「以前来た時になたを見かけて、あれなら僕でも使えるんじゃ無いかと思って」   

「なるほど、ちょっと待ってて下さいね」


 と、エルバはどこかへ……良さ気な鉈を取りに行ったんだろうけど。

 


「……あの、ルクシアールさん、ありがとうございます」

「……はい?」


 不意の謝意に動揺してしまった……。

 何のことだろう。

 


「ルクシアールさんのお陰で私の治療費も払えましたし、主人も店を手放さなくて良くなりました。エルバもどことなく楽しそうですし、どれもこれもルクシアールさんが『すとーぶ』の話を持って来てくれたからだと聞いています。だから、ありがとうございます」


 そう言って、深々と一礼するケージア。

 まあ、その通りなんだろうけど……。



「えーっと、……確かに話を持ってきたのは僕ですが、ドラッツさんとエルバさんの協力が無かったらストーブも形にならなかったので、三人の功績と言う事で……誰のお陰でとかは無しにしましょう」


 結果からすれば国策になったとは言え、俺からしたら自分勝手に巻き込んだだけだし。

 それに面と向って感謝とかされると、何となくむず痒くなるよな……。



「お待たせしました……って、何かありました?」


 戻って来たエルバが微妙な空気を察したようだが、気にしないように言っておく。


「それで、何か良いのはありました?」

「ええ、ルクシアール様に使えそうな物を数本ですけど……」


目の前に並べられたのは、形や長さの違う物が三種類。



「これは普通の鉈ですね。農作業や薪割にも使える物で、刀身は長方形で柄は木製です」


 うん、鉈のイメージそのまんまの形だな。刃渡りは二十センチ前後で、同等の長さの柄が付いている。



「次に……こちらは手斧に近い物ですね。先の物よりも刃は短いですが、刃と柄が一体化した物なので耐久性はあります」


 全長は最初の物より長めだが、刃の部分は三分の二程度か。刃と柄が一体化していて、握りの部分には革紐が巻かれている。外見上は言っていた通り手斧だな。



「最後のこれは猟師の方の注文品を元に作った物で、包丁と短剣と鉈の中間と言った所でしょうか」


 これまでの中では一番短いが、刃の部分は最初の鉈と同じ位の長さがあり、そのぶん柄が少し短くなっている。

 外観は巨大な包丁と言うかナイフと言うか……便利そうではあるけど。



「ちょっと持って、振ったりしてみても良いですか?」

「ええ、もちろん」


 どれも刃は厚く柄は刃側に曲がっており、重量を利用する鉈特有の形をしている。

 このくらいの重量なら腰に提げても、そこまで負担にはならないかな。



「どうです? 重くありませんか?」

「同じ長さの短剣と比べれば重いですけど、重く無いと意味が無いですからね」


 十歳とは言え、筋力はまだまだ子供の域を出ていないので、振り下ろす時は重い武器の方が良いし、何より道具としても多用できるのが良い。

 どうしよう……全部欲しくなって来た。

 ちらっと値段を見たが、三本全部だとしても所持金で買えるけど……。



「うん、この最後のヤツにします」


 いつ何があるか分からないから資金には余裕を持たせておきたいし、今回は一つだけにしておく。

 もちろん『収納庫』には前世界から引き継がれた軍資金がたんまりとあるが、これは成人して一人立ちするまで手をつける気は無い。

 今のところ、出所がはっきりとしている金以外は、厄介事の種でしかないからな。


 とりあえず、これで無事に武器として使えそうな物が見付かった……どちらかと言えば道具だけど。



「これですね、わかりました。梱包とかは? ここで装備されていきますか?」

「……あ、腰に提げる剣帯ってありますかね」


 エルバの台詞に『ゲームかよっ』と、つっ込みたくなる衝動を押さえつつも、鉈の装備に必須なベルトが無い事に気付く。

 運良く十歳の俺にも装備できる女性用の物があり、鉈を腰の後ろで水平に装備したらカッコ良いかと試してみたけど、現在の装備品である父に貰った肩掛け鞄と互いに干渉して相性が悪い。



「その様に装備するなら肩掛け鞄は諦めた方が良いですね」

「うーん、他に鞄の種類ってどんなのがあるんですか?」

「冒険者の方で多いのは両肩で背負う形のですね、軽装の方は腰に小さめの物を複数個付けていたり、口を紐で縛るだけの簡易な袋を背負っていたりします」


 うーん、悩むな。

 そこまで大量の荷物を持ち歩くわけじゃないし、貰った時は大きいと思った肩掛け鞄も今では俺に馴染んでいるし……。



「仕方ないので、素直に左腰に提げる事にします」

「ええ、その方が使い勝手も良いと思いますよ」


 まあ、鉈だし格好を付けるよりも実用性を取ろう。

 いつか小太刀を手にいれたら、絶対に腰の後ろに装備してやる。

 そんな決意も新たに、鉈の代金の小銀貨三枚を支払う。



「はい、確かに。あと、これは餞別と言いますか……ちょっとした刃物なんですが、良かったら受け取ってもらえますか」

「もちろんです、大きさも普段使いにちょうど良いですし。ありがとうございます」


 エルバからの餞別は全長十数センチ程度の物で、日本では切り出しや小刀なんて呼ばれていた作業用の刃物に似ていた。

 握りには革が巻かれ、鞘も革製でベルト通しも付いているので、早速右腰に装備する。



「うちは研ぎもやっていますので、必要になったらおいで下さいね」


 最後のセールストークも忘れないケージアに、乾いた笑いがエルバから漏れるも、これで装備は整ったと店を出て冒険者組合へと戻る。

 ドラッツにも会いたかったが、これから村に来る事も増えるだろうし次の機会という事で良いよね。


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