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帰れなかった勇者の新・異世界生活  作者: 乙三
幼年期編
15/79

閑話

どこかに差し込もうとしたまま、放置していた物です。

「――ねえ、ウェタス」

「ん、なんだビセルじゃないか、どうした?」


 同じ管理神(かんりしん)と言う事もあり、何かと接する機会も多いが今回は何の用だろう。



「勇者召喚の件で、お願いしたいんだけど」

「君もか……最近多いんだよね。地球だって色々あって人材不足なんだよ?」

「それは分かるけど、適性とか考えるとやっぱり日本人が良いのよ」


 また日本人か……身体能力に優れている訳でもないし、特殊な能力も持っていないのに、何故か異世界に送ると超常(ちょうじょう)な力を発揮する……らしい。

 そんな噂のせいで「自分の世界にも日本人を」と言う神が最近多い。



「他の国じゃ駄目? 沢山いるよ?」

「ええ、今回の魔王は強くなりすぎて、もう私の世界の勇者が四人も……」

「何でそんな者を創ったのさ……信仰を集めるにしても、もっと()(よう)はあるでしょ?」


 どうも管理神になりたての神は、安易な方法を取ろうとす傾向があるよな……。


「それに、ただでさえ少子化とかで数が減ってきているのに、各世界に取られたら日本人が居なくなっちゃうよ」

「ええ、悪いとは思っているのだけど……」

「それなら召喚じゃなくて、魂じゃ駄目?」

「…………その、育成期間が……」


 …………はあ。


「とりあえず十代……いや、二十代までは無し、選定も無作為。それでなら日本人でも良いよ」

「ええ、それで十分よ。ありがとうウェタス」


 帰ってきてくれれば幾らでも召喚して良いし、協力するのも吝かではないんだけど、どうも日本人は帰りたがらないのが多いんだよな。

 帰るのが嫌になる様な生活なんて送っているからだよ……僕の世界だけどさ。



 ん? もう選定したのか……えっと、吉田大吉君、四十歳か。

 うーんと、性格は温厚、慎重で思慮深い……が、見当違いな事も多く、一人相撲で終わる事が多い……ね。

 争い事が得意そうでは無いけれど大丈夫かな。

 まあ、ちゃんと召喚陣は設置してある様だし、これがあれば死んでしまっても魂だけは戻ってこれるから、生まれ変わる時は優遇してあげようかな。





「これは創造神様、今日は如何しました?」

「うむ、ビセルの世界に送った人の子の事での」

「ビセルの……ああ、確か……この子ですね、吉田大吉君……何かありました?」

「その子が先程、魔王を倒した様なのじゃが……」

「おお、それは凄い」


 確か、ビセルの世界の勇者を何人も倒す様な強さの魔王だったらしいのに。



「えっと、召喚されたのは彼の時間で……約十年前。頑張ったんだ……な……あれ? あの、召喚陣が消えている様なのですが……」

「うむ、その事でこの子に説明をしなければならないのじゃが、どの様な言葉で説明したら良いのか判らなくてのう」


 一緒に同行を求められたので、当然と応じる。一応、日本人の情報を……なるほど。

 これは深刻な雰囲気ではなく、軽く接した方が良さそうだね。





「はじめまして、吉田大吉さん――」


 はあ、なんて境遇に落としてしまったんだろう……なんて事をしてくれたんだ、ビセルは……。

 もう、彼女の世界に日本人……いや、僕の世界の住人を送る事は止めよう。


 それにしても創造神様の配慮は凄いな、人からいきなり下級神になれるなんて……選ばないの!?

 神になる事も、英雄の力を振るう事も拒否して、生まれ変わりを選ぶとは……やはり日本人は少し変わっているのかも。


 そういう事もあり、何となく日本人に対して興味が湧いたので、改めて調べてみたが……これは。



「あの、創造神様」

「ん? なんじゃ?」

「恐らくですが、彼に授ける恩恵は断られると思います」

「ほう……」

「遠慮とか我慢とか、そういうものが根付いている様で、『何が良い』と聞いても『現状で十分です』といった様な応答になるかと」 

「なんとも慎ましやかな子じゃのう」

「はい、ですので――」



 元は僕の世界の住人なんだから、創造神様の世界でも不自由なく生きていける様に、僕も精一杯頑張るから。

 もちろん、僕の世界に居る君の人生も悪い様にはしないから、安心してその世界で生きて欲しい――。

 


一日あけて、次回は26日の更新になります。

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