93.レオナルド君は休みたいようです part4
一言で言えば移動できる温泉だった。
「さあてと……」
元々、僕が予想してた温泉はこんな感じ。
まずはメインとなる大きな露天風呂があって、それからは端々に足湯などサブとなる小さな温泉が備わっている……と、チケットの一部に温泉の大まかな景色が載っていた事もあってそんな勝手な想像を抱いていたんだけど、
「まずはこの『堕楽の湯』に入ろうっと」
でも……流石は鬼の里最大の宿というべきか。
まさかのこの大陸で湧く温泉の数々を同時に管理しているのか、浴場の隅には触れた者を『特定の位置へ転送してくれる』魔力が込められた【移動転移石碑】が設置してあった。
「えっと……さっき石碑が記していた効能は確か……【疲労回復】【ストレス減少】【女性に振り回される危険性減少】だったかな? なんだか変なの交じってる気がしなくも無かったけど」
……だからこそ!
そのおかげで嬉しい事になんと複数の温泉!
一つの温泉だけに留まらずその石碑に触れるだけで離れた場所へと移動し、色々と効能が違う温泉を楽しめるという形態を取っていたんだった!
だから休みたい僕にとってはもう辛抱堪らず!
「ふわああああああああぁぁぁぁ…………」
思わず自分でも何処から出たか分からない声が出たけど、吸い込まれるように身を浸けた。
そして案の定……僕の体は即座に感じ取った。
「気持ちいい……本当に堕楽しそうだあ」
成分に含まれる硫黄の放つその温泉特有の匂いを覚えつつ、心地良い温かさを持つお湯の感触。
ひいては僕を縛ってた糸が自然と解けて、全身の至る部分がほぐされていく感じ……最高!
「うーん……気持ち良いぃぃぃ……」
ふひぃぃぃぃぃぃ……でも、これでこそ温泉!
家のお風呂でも疲れは取れるけど、やっぱりこういう開放感溢れる露天で入る温泉は格別だ!
「月夜が照らす中での温泉……感慨深いなあ」
それでいて景色的には天高く昇った月は勿論。
火口に近い高所にて発掘された場所なのか、この夜闇を生活明かりで赤く染める、何とも幻想的な鬼の里の風景を一望出来るというおまけ付き。
しかも……さらにこれで効能まであると来た!
もう、最高の一言に尽きるよ! ホントに!
「えーっと……それで確かオススメする人は【引退後なのにスローライフを楽しめずに酷い目に遭い続けている人にピッタリ!】だったかな……」
……うん! もう狙いすましたかの如く100%当たってすげぇ気味が悪いけど! とりあえず今の僕にドンピシャな温泉というわけだね!
「じゃあ、そうと分かればこのままゆっくり……」
のーんびりと……日頃の疲れを癒そう――
チャポン……。
うん? 誰か……入ってきた?
たぶん下着を忘れてきたクロムかな?
「やあクロム。君もこの温泉に決めたんだね。きっと正解だよ、だってこの温泉は凄く――」
さあてと……せっかく再会したんだ。
たまには男同士水入らずで話をしようよ。
パーティー解散後で何をしていたかとか――、
「あら……やっぱりあんたはここを選ぶと思ってたわぁ……でも良かったわぁ……危うくもう少しでのぼせてしまう所やったさかい……待った甲斐があったわぁ……なぁ? レオナルドはん?」
……………………………………はえっ?
―― ―― ―― ―― ―― ――
「……はだか」
もう……限界だった。
「んっ、どうしたエミリア? 何か言ったか?」
どうやっても……私の頭から離れなかった。
それこそ辛抱できない……空腹時にご馳走を目前にした時みたいに私は我慢できなかったの……。
(やっぱりレオナルドの裸見たい……)
そう……そんな大好きなレオナルドの裸が見たくて……見たくて見たくて見たくて見たくて見たくて見たくて見たくて見たくて見たくて見たくて見たくて! 私はもうしょうがなかったの……。
「おいエミリア? 一体どうしたんだ? いきなり湯船からあがったと思えばボーっと突っ立て?」
……だから。
「ムーン……ごめん……私行くね」
「へ? おい、どこ行くんだエミリア!? まだ私との背中の洗いっこが終わってないぞ! てか気のせいかお前の両目に今【裸】って文字が浮かんでた気が……まさか!? おい待て――」
「ふふ……レオナルドの裸……はだかはだかはだかはだかはだかはだかはだかはだかはだかはだかはだかはだか……そのはだかが……見たいの!」
「うっわ!? 目がヤベェ! 完全に獣の目と化してやがる! 完全にアイツの裸を捕捉してやがる!? だが待てエミリア! 流石にお前が男湯に行ったらどえらい事に――」
だから……私はお湯を出て一気に走ったの!
一応……タオルだけは巻いて……。
ムーンの言葉に耳を貸さず女湯を飛び出して、
「レオナルド……はだかっ!」
私はそのままレオナルドの裸だけを目当てで隣の男湯に突入したの!
「くんくん……少し薄まってるけど……」
それでその居場所もすぐに分かったの……。
「くんくん……間違いないの……この……【堕楽の湯】の石碑からレオナルドの匂いがするの!」
そう……私の中のレオナルドセンサーが察知。
それですぐに匂いの元を辿る為に……私は移動転移石碑に手をかけ……大好きなレオナルドの所へ転移したの…………そう……したら?
「ちょっ!? なんでシュテンがここに!? ていうかクロムは!? 僕と同じ部屋だった僕の友人は!? 普通なら彼が入って来るはず!?」
いたの……愛しのレオナルドが。
………………でも……そこには?
「ああぁ……あの子やったら今頃廊下でおねんねしてるで? 後頭部にドでかいタンコブこしらえてな、頭の上でヒヨコさん回してはったで?」
「それ気絶って言うんだけど!?」
「うふふ……うちとレオナルドはんの戯れに水を刺すような邪魔もんは……めっ! やで?」
「まさかの実行犯!? いや、そもそも客に手をあげるなんて若女将としてどうなのさ!?」
「ふふふ……そんなのは……これからするうちとレオナルドはんの【戯れ】に比べたら些細なもんやさかい……さあ……大人しく食べられ――」
何故か…………邪魔者もいた……。
「レオ……ナルド?」
「げっ!? まさか……その声は……」
「また……浮気……するの?」
「ま……待ってエミリア! 落ち着いて! とりあえず落ち着いて! お願いだから女湯に帰って!? その……色々とアウトだからさ!」
「あらまあ……人様の夜伽に首を突っ込むなんて……無粋な田舎娘やなぁ……でも今はお子様の入る隙はないさかい……さっさと出ていきや?」
「ちょっ、シュテンさん!? そんな誤解を招く発言しないでもらえますか!? しかもそんな挑発したら今にも取り返しがつかないことに――」
「……私のレオナルドの裸を見たからには……もう生かしてはおけない……の……だから――」
だから……私はそうレオナルドの体に這い寄るハレンチなエロ鬼をすぐに排除する為に……、
「レオナルド……少し痛いけど我慢して……」
「エ、エミリア!? その構えはまさか!?」
「えっ、ちょっ……ま、まさかあんた!?」
「激しく……痺れるといいの《雷撃》……」
バシンッッッ! ビリビリビリッ!
「「ギャアアアアアアアアアアアア!!」」
私は雷魔法を放つ事にしたの……。
誰かにレオナルドを取られるのなら……私の手で楽にしてあげようと思って落としたの。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
次話でこの幕間は終了となります。
時間はまた深夜帯にての更新予定です。
ではでは最後にもしよろしければブクマや評価であったり率直な感想などお待ちしております!!
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