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83.彼女は幸せ者だったようです


 それは所有者の“幸せな記憶やその心”を貪り攻撃力を増幅させるという災厄の剣、魔剣ティルフィングを破壊した影響だったのか、


 ――ま……まてぃる……だ……?


 ――おおっ!? 母上、今の聞いたか!? ついにヴィクトリアが私の名前を呼んでくれたぞ!? まだ少し拙いけど私は感動したぞ!


 ――ああ、もちろん聞いていたぞ。まだまだ赤ん坊なのにお前の名前を覚えるなんて大したやつだ。それに引き換えお前の場合は何処で覚えたのか私への第一声が『ババア』だったがな……。


 ――むうう……母上、妹二人の前でそんな事言うなよな! 私がこいつらに見せつけないといけない“姉の威厳”ってのがあるんだからさっ!



(ははは……マティルダってば今と何も変わってないね。そのまんま成長しただけじゃないか)


 剣を砕いた瞬間、その飲み込んでいた記憶が流出し、今僕の脳裏にはマティルダがまだ幼い頃。

 それこそ妹のヴィクトリアやメアリーがまだ生まれて間もない頃に幸せと感じた記憶、感慨深い思い出などが幾つも流れてきていたんだった。


そして……さらに、



 ――マティルダお姉様! 待って!

 ――私達もご一緒させてください!


 ――なっ!? ヴィクトリアとメアリーか!? お前らいつの間に私の跡を!? いやそれよりもどうしてこの城の抜け道を知ってるんだっ!?


 ――えへへ……それは……ねぇメアリー?

 ――はい、いつもコソコソしているマティルダお姉様の跡を追っていたからです! ズルいのです、一人で城下町だったり国外に出たりして遊びに行くなんて……ワタクシ達もお供します。


 ――いや……それでも……お前達は私より頭良いんだから勉強をしといたほうが良い気が……。


 ――あらあら、お姉様らしくもない言葉ですこと。子供時代はわんぱくなくらいで丁度良いんです! それに私は今日の分の勉強はちゃんと済ましてきましたので大丈夫です!


 ――メアリーもか?


 ――はい、ワタクシも済ませてきました。ですから早く遊びに行きましょう。ワタクシ達ずっとマティルダお姉様とこうして外に遊びに行くのが夢だったんですから……さあ早く行きましょう。


 ――あ……ああ! 遊びに行こう!



 連続して幼少期の思い出も流れてきた。

 城からくすねてきたフードを被り城下町探索。

 時には傷薬や回復役を持てるだけ持って、国を出ていく馬車に忍び込んだ後、滅茶苦茶ながら最強の女を目指す修行と国外でモンスター狩りと、


 ――ヴィクトリア、大丈夫か!?


 ――は、はい……お姉様のおかげでどうにか。いえ……それよりもお姉様、腕から血が……メアリー! すぐに傷薬を! 急いで手当を!


 ――へへへ、大丈夫だ! こんなのただのかすり傷だぜ! それにこんな小さい傷なんかであたふたしてたら姉としてカッコつかないだろ?


 ――もう! お姉様ってばそんな馬鹿な事を言ってないで早く座ってください! 手当てしますから! 小さい傷だからと侮っているといつか酷い目に遭いますよ! カッコつける前に私達妹が貴方を心配する気持ちを察してくださいっ!


 ――あっ……うん……分かった、座る。


 中には視てるだけで時々こういったヒヤリとする思い出もあったけれど、いずれもマティルダが幸せと感じたり、自分の跡をついて来てくれたり、心配してくれる彼女達に思わず喜んだりと、


 ――この馬鹿娘どもがっ! また全員仲良く城を抜け出しおって! これで何度目だ!? いやもう正直私も忘れてしまったわ! くそ! 一つ抜け道を閉鎖したと思えば、すぐに新しい抜け道を見つけて! 本当に昔の自分を見てるようだ!


 ――そりゃ、母上の子供だからな。

 ――悪知恵も働くというものです。

 ――ぐす……お母様……怖いです……。


 ――あっ、母上ってばメアリーを泣かしやがった! 恫喝だ! 脅迫だ! 虐待だ! 暴力女だ! 私の大事な妹を泣かすなんて許さないぞ!


 ――なっ!? だからお前は何処でそんな言葉を覚えてくるんだ!? というよりその記憶力を少しでも勉強に生かさんか、この馬鹿者が!


 ――へっへっへ、じゃあそろそろお説教飽きてきたから部屋から出ていくぞ! おいヴィクトリア、メアリー! 部屋でトランプしようぜ!


 ――分かりましたわ、お姉様。

 ――はい……トランプします……。


 ――おい、待て! 話はまだ終わって……。


 ――お母様……お言葉ですがあまり怒られると血圧が上がってしまいますわよ。それにイライラはお体に毒ですのでお説教も少し控えめに……


 ――それをお前らが言うのか!? 私に向けて猛毒の原因をまき散らしてるお前らが言う!?


(あははは! マティルダ達ってば昔からこんな感じだったの!? もう……どこまでわんぱくな三姉妹だったんだって話だよ、ホントに!)


 傍からは見ていて笑みがこぼれてくる記憶を辿っていき、少しだけだけどイザベラ女王の苦労。

ワガママな子供に対する心労を垣間見たりと本当に多種多様ながら、それでも何処か微笑ましく見ている僕も思わず吹き出してしまっていた中。



 ―― ―― ―― ―― ―― ――



「お帰りなさいませ……マティルダお姉様」

「本当にまた会えて良かったです……」


「へへっ……ったく大袈裟な奴らだ……」


 その傍ら……。

 結局のところ、妹達も“同じ”だった。

 長女マティルダが妹達の安全を切に願い、己が女王としての大きな責任を一身に背負う事で国家間でのいざこざに巻き込ませんとしていた様に、


「……聞きましたわ。お姉様が女王を志す理由」

「ちっ、レオナルドめ……喋りやがったか」


「ええ……ですが、私達が共闘をしてまで女王を目指す理由も貴方と全く同じだったんですよ」


「同じ……だって?」


「はい、ワタクシ達もお姉様を護る為に女王を目指していたんです。これまでずっとワタクシ達の面倒を見てくれて、危険な時は自分を顧みずにすぐに助けに来てくれた貴方を護る為に。そこでワタクシ達だって強くなったんだという証明も兼ねてマティルダお姉様を倒すべく共闘したのです」


 そう……ヴィクトリア達も全く同じ。

 今まで何度も何度も自分達を護ってくれていた姉を、今度は逆に強くなった自分達二人で支えて護っていきたいっていう……何とも微笑ましい互いが互いを想い合う思想を抱いていたんだった。


 そうして……。


「そうか……流石は私の妹達だ……だがそれでも私はお前達を護ってやる……ぞ……スゥ……」


「あらあら、お姉様ったら眠ったみたいです」

「こんな所で眠っちゃうなんて……マティルダお姉様らしいですわね。ヴィクトリアお姉様」

「ええ、でも本当に美しい寝顔ですわ」


 そんな幸せ者のマティルダは疲労からか熟睡。

 その大好きな妹達に抱きしめられる中でまるで赤ちゃんの様にスヤスヤと寝息を立ててしまい、そのままこの魔剣騒動は幕を下ろすんだった。



ここまで読んでくださりありがとうございます。

次話は明日投稿予定です(/・ω・)/

あと二話程でこの章は完結予定です。

では次話でお会いしましょう(`・ω・´)ゞ

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