69.胃袋を見事掴んだようです
思い切ってレイアウトとタイトルを変えてみました(詳細は後書きにて)
――おかあさま! おかあさま!
――おっマティルダか、ったく……私の事は母上と呼べと言っただろ? まあそれよりも一体どうした。今は確か勉強時間の筈だった思うんだが……まさか抜け出して来たのか?
――うん! だってぜんぜんつまらないから!
――くそ……一体どこまで私にそっくりなんだお前は。はあ……いっつも思うがお前は将来的にも手のかかる長女になりそうだな……まったく。
――えへへ! そうほめないでくれよ!
――おかしいな。一片たりとも褒めた記憶がないんだが……で? 退屈な勉強を放っぽりだしてどうしたんだ? またステーキ食いたいから城下町へ連れてけって言うんじゃないだろうな?
――ちがうぞ! あっ、でもそれもいいかも……じゃなくて! きょうはおかあ……ははうえのことをしんぱいして、わざわざきてやったんだ! こんなに【おっきいお腹】だとつらいだろうって、おしろのみんながいってたからな!
――そうか、優しいなマティルダは。でもだからといってお腹を軽くポンポン叩くんじゃない! 確かに良い音は鳴るが楽器じゃないからな!?
――なあなあ、ははうえ。ほんとうにこんなおっきなおなかにわたしの【いもーと?】がふたりもいるのか? ぜんぜんしんじられないぞ!
――ああ、そうだ。お前が信じなくてもこの大きなお腹の中にはお前の妹になる子が二人いるんだ。既に名前も決めて先に生まれた方がヴィクトリア。後に生まれた方がメアリーってな。
――ヴィクトリア……メアリー……。
――ああ……だからこの双子達が生まれたらマティルダ、お前はこの子達の“お姉さん”になるんだ。可愛い可愛い二人の妹を持つお姉さんにな。
――おねぇさん……か。かっこいいけど、なんかたいへんそうだな……こんなわたしなんかができるのかな? とちゅうでにげそうなきがする。
――ハハハハ! 大丈夫だ安心しろ! お前なら出来るさ。まあ確かにお前は今みたいに勉強はサボるし、飯時に野菜はコッソリ跳ねのけようとするし、周りに大迷惑をかけるような悪戯もするどうしようもない悪ガキだが……お前が本当に優しい子なのは私が一番知っている。だからお前は今まで通りに素直にしていればいいのだ……。
――ひぐっ……ひぐっ……ははうえってばわたしのわるくちばっかりいいやがって! わたしおへやでなくからな! ばーか! ばーか!
――あっ、しまった……思わず本音を言い過ぎてしまった。っていうか……泣き方からすぐに逃げる仕草までかつての私と瓜二つとは……一番の母親似なのかもしれんなアイツは……。
―― ―― ―― ―― ―― ――
――スゥ……スゥ……スゥ……。
――スゥ……スゥ……スゥ……。
――…………驚いたな。
――スゥ……スゥ……スゥ……。
――スゥ……スゥ……スゥ……。
――まさか……お前があやした途端に二人すぐに泣き止んで眠ってしまうとは、流石は頼れるお姉さんってところか? なあマティルダ?
――へへへ、さすがは【さいきょー】のわたしだな。でもほんとうにかわいいな、このいもーとって。ほらみろよははうえ。ヴィクトリアもメアリーもわたしのゆびをぎゅっとつかんでうれしそうにねていてすごくかわいいんだぞ!
――ハハハハ、本当だな。きっとこの二人からすればお前は温かい天使にでも見えたんだろう。だから泣き止んで安心して眠ったに違いない。
――えへへへへへへ。そっか、こいつらからすればわたしはてんしなのか、やはりすごいな。さすがはさいきょーのわたしだな!
――ハハハハハハハ、その調子だマティルダ。その最強とやらでお前はお姉さんとして二人を守ってやるんだ。私も女王の仕事で手が開けば面倒を見るが、多分その二人は身近なお前をまず頼るだろうからな。姉として世話をしてやってくれ。
――わかったぞ、ははうえ。このわたしにどーんとまかせとけ! このさきもしも、ははうえが“よぼよぼのばばあ”になっても、さいきょーのわたしがずっとまもってやるからな。だからあんしんしてははうえはおしごとしてくれ!
――そうか、分かった……ありがとうマティルダ。ところで……今お前が口にしたその【ババア】とか言う不快極まりない単語と意味を教えた奴を教えてくれ。後で生き地獄を見せるから。
―― ―― ―― ―― ―― ――
《では発表いたします! 本日の料理の儀の勝者は! 偉大なる我らが王女三姉妹の次女であられながら、このアルテミアーナ国随一の知識力を持つ【ヴィクトリア】様に決定いたしました!》
閉幕。
「「「うおおおおおおおおおおおおお!」」」
「「キャー! ヴィクトリアさまあああああ」」
「「見事な手際でしたぞ、ヴィクトリア様!」」
レオナルドが生死の狭間から復活して数時間後。
気付けば日が傾き始める中で長いようで短かった料理の儀はどうにか幕を下ろし、その結果として、
「ウフフフ、皆様のご声援ありがとうございます。ですが、この料理の儀はあくまで一回戦。まだまだこの女王決定戦は始まったばかりですわ」
最後を飾ったヴィクトリアが勝利。
焼けて食えれば何でも料理だと定義する長女。
または健康の為だからと何でも放り込み、果てには鉄の塊も入れて料理では無い物質を生み出した問題児の三女を容易く押しのけ、
「ですので……このまま別日に開催する次の【美貌の儀】におかれましても此度と同じ様にご来場いただければと私は思っておりますので!」
まずは基本的な下ごしらえ、味付けを重視。
その後も食材同士が喧嘩しないようにと材料のバランスや正しい調理により、複数用意していた食材を次々と無駄のない手慣れた手つきで調理。
「それでは皆様ごきげんようですわ」
そうしてレオナルドには肉をメインとした簡単なコース料理一式。
そして母親には食べやすくあっさりとした新鮮な白身魚をメインとしたコース一式と、前の姉妹が出した【ただの肉の丸焼き】【ゲテモノ殺人スープ】とかいう赤っ恥をも見事に払拭。
最早満場一致で彼女の勝利が確定したのだった。
「あの……イザベラ女王」
「うん、どうした? レオナルド?」
「さっきからヴィクトリアの料理を食べてから涙が止まらないんですけど……おかしいですかね? なんかメアリーのあの料理を食べてから、まともな料理の安心感が半端じゃないんですけど……」
「悪いが…………返す言葉もございません」
それにより観客席から巻き起こる拍手喝采の嵐。
勝利を祝う言葉が飛び交う間で彼女はその手に見事な勝利を収めるのだった……。
ここまで読んでくださりありがとうございますm(_ _)m
ひとまず現在完成している分を全て投稿いたしました。
次話については現在執筆中の為、完成させたら投稿していきます(*´ω`*)
一応最速であれば明日の【月曜日】遅くても【平日】で、時間帯としては帰宅前の18時以降を目安にスマホ投稿出来ればと思っております!!
次にタイトル変更については以下のようになってます。
【残念ながら僕には《スローライフとかいう甘え》は許されないみたいです】→【理想は《ほのぼのスローライフ》だったけど……現実は【どたばたハードライフ】でした。】
こちらは不評ぽかったら元に戻す予定です。
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