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67.胃袋を掴めば勝ちのようです part3


 グチョグチョグチョグチョグチョ……。

 グチュグチュグチュグチュグチュ……。

 ドブドブドブドブドブドブドブ……。


(…………………………………………)


 ドブドブドブドブドブドブドブ……。

 ドバドバドバドバドバドバドバ……。


「あ……少し入れ過ぎました」

(………………………………)

「でも【これ】をこうすればきっと――」


 ドボドボドボドボ……。

 グチャグチャグチャグチャグチャ!。


(………………………………)



 うん……まず初めに一つだけ。

 僕にたった一言だけ言わせてほしい。

 いや、むしろ許可無しで正直に言いたい。



 とりあえず……【何か】がおかしかった。



 それでその原因はというと無論『これ』だ。


 ブチュブチュブチュブチュ!

 ジャポジャポジャポジャポジャポ!

 ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ!


 審査の公平を期す為という事で目隠しをしている僕の耳にずっと響いているこの【謎の異音】。

 その『何か』を潰しているのか、混ぜているのか、はたまた垂らしているのか、すり潰しているのか、もう音の正体が掴めないというこの中で僕は一つだけ確信した事があった……それは!



 ベトベトベトベトベト……ゴボゴボゴボゴボゴボ……ドガドガドガドガドガ……バキバキバキ……バチバチバチバチバチ……バリバリバリバリ!



(これ明らかに【調理音】じゃないよね!?)



 そう! 実はこの異音は全て調理する音!

 先までの下ごしらえすら全然知らない食べてばかりの料理下手のマティルダから交代、現在は常識人っぽいメアリーになった今度こそ“普通に美味しい料理”が食べられると思ったんだけど……



「あ……これも入れないとダメですわ。あと、これも。ああ、あれもこれも全部入れないと!」



 でも……僕の望んでいた感じとはまるで真逆!

 トントントントンという包丁が食材を切る音。

 ジュウジュウジュウと食材を香ばしく焼く音。

 コトコトコトコトと何かを煮る音など皆無!


 オギャゲゲゲゲゲゲエェェェェェェェ!!!

 ギャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!

 ギョエエエエエェェェェェェェェェェ!!


(!? 今のなに!? なんなの!? 今なんか生物の悲鳴みたいな凄い声が聞こえたんだけど!? 腹の底からひねり出した感じの絶叫が一斉に僕の耳を貫いたんですが!? メアリーは今どんな料理を作ろうとしているんですか!?)


 と、こんな具合で僕の耳に届くは異音と、苦しみに悶える生命の断末魔らしきヤバそうな声!

 さらに……それでいて最早何の食材を投下しているのかを聞くことすらも躊躇しそうなる程にもう僕はただひたすらに怯え、戦慄していた!


「きゃあああああ! まさかメアリ―様【それ】もぶち込むのですか!? 嘘ですわよね!?」

「へ……へへへへへへへヘヘヘヘヘ! これこそ料理の儀の醍醐味だぜっ! このグロシーンを見たくないやつはとっとと引き上げるんだなっ!」

「いやあああああああああああああああ!」

「俺、観客で良かった……本当に良かった」

「審査員って大変なんだな……」

「ウップ!!」

「おい! お前吐くなよ!?」



 さらにその異常は既に会場へ。

 満席に近い観客席も即座に巻き込んでいき、今の観客達から聞こえるのは阿鼻叫喚の声が殆ど。

 中には審査こっち側ではない事に安堵する声も聞こえたけど、それでも現状は変わらない。


 ザシュ! ザシュ! ザシュ! グシャリ!

 グギャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア!

 ギョギゲギャアアアアアアア!


(ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!? まただ!? またとんでもない悲鳴が聞こえたんだけど!? なに!? 僕達は何を食わされるの!?)


 今、僕に出来るのはひたすらに怯えるだけ!

 目隠しの影響でどんな“惨劇”が行われているか知る由も無いが、少なくとも“ヤバい料理”を作っているのは確かみたいだ…………くそう!


「レオナルドよ……保険として先に謝ろう……もしかしたらもうこれ以降謝罪のチャンスが無いかもしれんからな……本当に巻き込んですまぬ」


「イザベラ女王やめてください! そんな今生の別れみたいに謝るの! 本当に縁起でも無いんで! あと何で涙声なんですか!?」


 ああ……もう! 本当にっ!

 マジでこの国にいる王女様はどいつもこいつもマトモな料理は作れないんですか!? どうして調理しているだけなのに見ている観客が叫び出すんですか!? もう頼むから、せめて普通の料理を食べさせてくださいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!


 ―― ―― ―― ―― ―― ――



 こうして……。



「お……お待たせいたしました!」


 悪夢の時来たる。


「こ……この料理こそ! ワタクシが全身全霊を込めて作りました料理です! ど、どうぞ……レオナルド様、イザベラお母様、お召し上がりくださいませ! 目隠しを外されました瞬間に私が追料理のフタを開けますので!」


 ついに……それは僕達の前にやって来た。


《さ……さあ……まあ色々ショッキング……いや中々にトラウマな光景……でもなく! 実食をしない我々にすら印象深く、しばらくの間非常に刺激的な料理を為されました》


 それは実況していた審判すら少しでも好印象な言葉をと、誤魔化す言葉を選ぶ始末であり、誰からも決して望まれる事の無い地獄の時間の訪れ。


《で……では……不幸な二人……い、いいえ! 異世界審査員のレオナルド様、およびイザベラ女王様のお二方! 早速実食をお願いします!》


 メアリーの調理が遂に終了し訪れた本番であり、最悪の審査の時が“やって来て”しまったんだ。



「な、なあ……メアリーよ?」


 けれども……まず実食前早々、


「はいお母様。どうされましたか?」

「うーん……その……なんと言うか……あれだ。目隠し外して品を確認しなくてはダメか?」


「え? それはどういう意味でしょうか? 目隠しを外さないと……実食へは移れないですよ?」


 この審査前ギリギリと言う時点で、隣に座っているイザベラ女王は完全に委縮しちゃっていた。

 やけに耳に残る異音もあって、目の当たりするに事すら恐ろしいと彼女は警戒し溢し始めた。


「うむ……その……少し心構えがいるというか。見る事がこわ……ゴホンゴホン……ではなくてだな……ホラ、あれだ! 初手のマティルダの肉料理が少しもたれてな! ほら、なんたって私はもう“こんな歳”だろ? いくら数口だけだったとはいえ脂物はこたえるものなのだ! ハハハ!」


 だから、そんな今思いついた的な逃げ口上。

 あまりに酷すぎる苦し紛れの言い訳を添えて、現状から目を背けようとする言葉が発せられる。


(……でも正直無理もない話なんだよね)


 だって意味不明な調理音の数々。

 食材?から聞こえた絶叫らしき奇声。

 客席から零れてきた阿鼻叫喚の声。

 どれを取ってもまともな料理に思えないもん!

 だからこそ出来れば僕だって、このまま目隠ししたままでこの料理をスル―したいんだよ!



 ……でも! 



「それでしたらお任せください! この料理は食べてくださった方を健康にする為の栄養満点の食材を“詰め込んで”ありますので! どんな方でも食べれば元気になる事請け合いですっ!!」

「ウン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛!!!!」


 残念ながらイザベラ女王の【お腹もたれる発言】はそんなメアリーの言葉に一瞬で論破され、喉から絞り出した様な悲痛の声が響いたかと思えば、


「もう……こうなれば仕方ありません!」


 彼女は中々審査を始めようとしない僕達に業を煮やしたのか、この次の瞬間……なんとっ!?


「では! 僭越ながらワタクシがお二方の目隠しを外して差し上げますわ! それっ!」

「「…………なっ!?」」


 そうメアリーは僕達に拒否する間も与える事無く強引に目隠しを奪い取ったんだ! そして!


「こ……これが料理!?」

「これが……我が三女の!?」


 ついに僕達は目の当たりにしてしまった。

 眼前に置かれた【それ】を…………。

ここまで読んでくださりありがとうございますm(_ _)m

ひとまず現在完成している分を投稿しました。

次話については現在執筆中の為、完成させたら投稿していく予定です(*'ω'*)

出来ればまた土曜日あたりに投稿したいと思ってます!!


では……最後によろしければブクマや評価、感想等をお願い致します!!

マヂで皆様の評価はこの【黒まめ作者】の執筆モチベに直結するほか、ユーザ様の声は私にとってものすごく励みやタメになりますので……あとおまけで飛び跳ねるくらい喜びます(´・ω・`)

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