62.王女との強制デート?のようです part3
「うーん! この頭を刺激するバニラの甘さ。それでいて肉の後に食べるからこそ感じられるこの境地! そして最後にやっぱりアイスは無限段に限るぜ! 食べ応えが違うもんな! そう思うだろ、レオナルドッ!」
「……ストロベリーおいちい」
……普通に負けた。
僕はアイスの注文競争に普通に負けた。
先制を取り、なおかつ肺を潰す勢いで全速力ダッシュした筈なのに、虎のようなマティルダの速度に負けた僕は今、懸命な説得と彼女の温情により三段となったアイスを食べていた。
「にしても三段じゃ全然足りないだろ? 私の“七段目のバニラ”部分を分けてやろうか?」
「いいえ、充分に足りております。結構です」
さらにこっそりと強化スキル。
足の素早さをあげる【スピーダー】まで使ってた筈なんだけど……それでも平然と負けたせいか、敗北を理解するまで本当に時間はかかるし、
「にしてもマティルダって足速いんだね……」
「むっ? 何言ってんだよレオナルド。あんなのいつものスピードだぞ! お前が遅すぎるんだぜ? あんなので息を切らすなんて情けねぇ!」
そして……挙句の果てにはこのセリフ。
もう彼女の身体能力については確実に常人を上回っているとしか言いようがないよ……。
「ってか……脂物の後にアイスって……」
「食ったらダメなのか?」
「普通に考えてお腹壊すと思うんだけど」
「大丈夫だ! 私の胃袋は鋼鉄で出来てるからな! 毒キノコでも食おうと思えば食えるぜ!」
「あっ……そうですか」
その瞬間、僕はこう胸に決めた。
「それにさ毒キノコって実は旨いんだぜ! あの脳にビリビリ来る刺激って言うか、ガツンと体を蝕みに来る衝撃がたまらねぇっていうかさ――」
これから彼女を【人間】と認識しないと決めた。
肉は浴びる程食うわ、直後にアイスは挟むわ。
果てには毒キノコの毒成分は快感だと言う。
「非常識だらけで僕の脳みそ沸騰しそう……」
だからこそ。
僕はこの王女という高貴な肩書とは真反対の位置で暴れている、この“暴君わんぱくワイルド肉姫”から人間という判断基準を外すんだった。
その方が何処か納得できる気がするしね……。
―― ―― ―― ―― ―― ――
「ああっ、マティルダ様だ! おはようございます! 先程お噂を聞きましたよ! またデビィのステーキ屋に寄ってハイスコアを出したって! 今度は160枚とは……流石マティルダ様です!」
「おお! おはよう、雑貨屋のおばさん! そうなんだよ、まあもっと調子が良かったらもっともーっとイケるけどな! アハハハハハハハハ!」
とまあ……ひとまず。
足の速度、胃袋諸々の怪物ぶりはさておくとして、僕と彼女がこうしてベンチの上でアイスを食べながら、時折会話を挟んでいた頃、
「あっ、マティルダ様。おはようございます!」
「おっ、宝石屋のマルジじゃん! どうだ寝込んでいた子供の具合は? この前に私が取ってきた薬草はちゃんと効いたか、病気は治ったか?」
「はい、おかげさまで! 今はすっかり治って友達と遊んでますよ! 本当にありがとうございました! このお礼は何かしらの形できっと――」
「いやいや礼とかいいから! 気にすんなって!」
と、道行く人達の多くがこんな具合に、
「あっ……マティルダ様。先日はどうも……」
「おっ、シスター。あの後怪我無かったか?」
「はい……おかげさまで。本当にあの時マティルダ様が【クロータイガー】の群れから助け出してくださらなければ……今頃私はもう……」
「まあまあ、気にすんなって! 困った時はお互い様だからよ! でも次の遠征の時は用心棒を雇うんだぜ! あの辺は割と危ないからな!」
「はい……ありがとうございます」
それは例えるなら国を救った英雄かの如く。
「おはようございます、マティルダ様」
「おはよーっす! マティルダ王女様!」
「おはようですじゃ…マティルダ姫様」
「おや、朝から食べ過ぎは良くないですぞ!」
「ご機嫌麗しゅう、マティルダ王女様」
「おう、皆おはよう! 今日も一日頑張れ!」
「「「「はい!」」」」
最早、老若男女、年齢を問う事なく。
眼前を横切っていく人達が彼女を見るや否や、笑顔や挨拶を向けていく光景に対して、正直僕は彼女に初めて尊敬の念を抱いた。
「わあ、マティルダしゃまだ!」
「また、なんかたべてるよ!」
「こんど、ちがうあそびおしえてね!」
「おう、ちびっ子三人組! もう前みたいに喧嘩するんじゃないぞ! 今度やったらそのプニプニしたホッペちぎって食べちゃうからなぁ!」
「「「はーいっ!!」」」
(子供たちからも……凄い人望だな……)
まあ……確かに朝一から色々あったけれど。
こんな人々達から向けられる感謝の声や元気の良い挨拶を向けられる光景を見せられては、そこまで文句の一言も出ないよ……言いたいけどね。
「……………………」
そしてそんな彼女の素直な人望が招いたのか、
「うん? どうしたレオナルド、じっとこっち見て。私の顔にクリームでもついてんのか?」
「……いいや。イザベラ女王は君の事を暴君とかって言ってたけど、実際のマティルダって、とっても優しくて凄いんだなぁって思っただけだよ」
僕は思わずそう彼女に向けた。
「なっ!? ば……バカ! いきなり何言ってんだ!? もう、そんな恥ずかしい事言うなよな! ったく……別に私なんか大したことねぇよ。困ってる人を助けるくらい普通だろ、ふ・つ・う! それにヴィクトリアやメアリーだって人望あるし……ブツブツ」
人を助けるのが普通……か。
多分、君のお母さんのイザベラ女王はその面倒や危険を顧みずに人を助ける姿勢を見て、君を推薦したんだと思うんだけど……まあ今はいっか。
「……にしては顔真っ赤だけ――ぐえっ!?」
「う、うるさい! あんまり言うと殴るぞ!」
「ぐぐ……既にお見舞いされた後なんですが……」
まあ……だから、その真意はともかくとして。
今はアイスを食べつつ、国民達から信頼される王女として相応しいかどうかを決定戦前ではあったけど、それとなく感じ取るんだった……。
「ふ……ふんだ! さあとっとと食べて次回るぞ!」
「ゴホッ……い、今の拳で僕の胃が食べ物を受け付けなくなった気がするよ……ゴホゴホ」
ただ……下手すればモンスターすら上回る馬鹿力をフルに生かして、人の腹に剛腕をぶち込むのは本当に勘弁してください、気絶しちゃうから。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
次話は明日投稿予定で、多分スマホ投稿になると思います。
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